80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.14
ロンリー・チャップリン 鈴木聖美 with Rats&Star
作詞 岡田ふみ子
作曲 鈴木雅之
編曲 村松邦男・鈴木雅之
発売 1987年7月
数十年経った現在でも、未だにカラオケで支持され続ける定番の姉弟デュエット曲
この曲が未だにカラオケの男女デュエット曲の定番として支持され続けるとは、発売した当時は全く想像もしませんでした。オリコンの週間最高順位は18位とパッとせず、瞬間風速としてはさほど目立つ作品ではなかったからです。この曲がここまで残ってきたということは、やはりカラオケなしではあり得なかったのではないでしょうか。カラオケ長く歌われ続けるうちに、多くの人の耳に届くことになり、さらなは何回も何回も聴くことで、いつのまにか定着していったのでしょう。
何しろカラオケの男女デュエット曲というものは、需要に対して供給が少ないため、競争相手がなかなか出てこないという現実があります。特にポップス、ロック系の定番デュエット曲は、演歌、歌謡曲に比べると数えるほどしかありません。一緒にみんなでカラオケに行って、男女でデュエットしたい、でも相手も自分も知っている歌でないと駄目だし、『3年目の浮気』?、『居酒屋』?、『銀座の恋の物語』?、『別れても好きな人』?、さすがに演歌はちょっと…というと、いったい何の曲を選べばいいのでしょうか? そんなときの少ない選択肢のうちのひとつが、この『ロンリー・チャップリン』となるわけですね。ちなみに残りの選択肢は『愛が生まれた日』『ふたりの愛ランド』『世界中の誰よりきっと』あたりが中心になってしまうのでしょうか。
さてこの曲、鈴木聖美 with Rats&Starということになっていますが、基本的には鈴木聖美&鈴木雅之という姉弟デュエットです。Rats&Starとしてのシングル曲が伸び悩みだしたときに、当時ほぼ無名だったお姉さんを担ぎ出して、男女のツインボーカルを企画してみたという印象には見えました。ところが最初にリリースしたシングル『シンデレラ・リバティ』はオリコン週間最高65位と惨敗。この曲を挟んだ3枚目『TAXI』も最高75位。そう考えるとこの曲は、やはり奇跡的な一曲といっていいかもしれません。結局姉弟による企画はシングル3枚、アルバム1枚で終了することになりました。
基本的にこの曲は“雰囲気”ですよね。男女がなんとなく気持ちよく歌える、それが一番のポイントだったのでしょう。それと「ロンリー・チャップリン」というキーワードでしょう。詩の内容自体さほど大したことは歌っていません。二人の関係性もわりと曖昧で、どうともとれるような感じです。なんとなくところどころに気持ちいい言葉を散りばめながら、男女デュエットの雰囲気を楽しめればいいと。そこに印象的な言葉として、比喩的な表現で「ロンリー・チャップリン」をひとつ入れ込んでみた、それだけ。でも、結果的にそれが良かったのでしょうね。あまり詩の内容を考えず、ほろ酔い気分の中でムードを味わいながら、「ロンリー・チャップリン」という言葉にどことなく寂しさを感じて、歌に入り込めるということが。作詞は岡田ふみ子(冨美子)さん、結構いろいろな人に死を提供していますが、有名なところでは『スシ食いねェ!』が目立つ程度でしょうか。
一方作曲は鈴木雅之ですが、実はこの曲、盗作ではないかと言われていたりもしたのですよね。その対象となるのもデュエット曲で、ジャーメイン・ジャクソンとホイットニー・ジャクソンの『やさしくマイ・ハート』(Take Good Care Of My Heart)という曲。確かに似てはいますが、実際のところはどうだったのでしょうかね。あまり触れないで、この辺にしておきます。