80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.10
アドベンチャー・ドリーム アイドル夢工場
作詞 秋元康
作曲 高橋研
編曲 佐藤準、東郷昌和
発売 1987年8月
イベント開催のために集められたアイドルの卵達、卵はかえることなく謎の自然消滅のため、唯一のシングル曲に
1987年の夏、フジサンケイグループ主催で開催されたイベント『コミュニケーションカーニバル 夢工場'87』。当時東京の学生だった私は、友人に誘われて東京の会場に行った思い出があります。そこのイベントで、デビュー前の男闘呼組やおニャン子のメンバーだった内海和子のステージを観たのが思い出として残っていますが、それはまた別の話。そのイベントのプロモーションの一つとして、女の子7人を集めて結成されたのが、このアイドル夢工場です。いずれもミスマガジンのグランプリや入賞者だったらしくて、当然このイベントが終われば、メンバーのたちはアイドルとしてそれぞれ活躍していくのだろうなと、ぼんやりと思っていたものです。なにせ、グループの名前が『アイドル夢工場』ですから、きっとアイドルを産み出すのだろうと…
余談ですが、『夢工場』という男性5人組バンドも、イベントに合わせてデビューしています。ちなみに、このシリーズでとりあげる予定はありません。
このアイドル夢工場がイベントに合わせて発売したシングルレコードが『アドベンチャー・ドリーム』なのです。作詞が秋元康なのですね。当時おニャン子で大成功を収めていたので、女の子のアイドルグループをまた任せようとしたのかどうかはわかりませんが、まあ適任だったと考えたのでしょう。グループの大々的なプロモーション効果もあって、オリコンでは初登場8位。デビュー曲としては上々でしょう。この曲、夢と希望にあふれた壮大な作品になっています。まずはイントロにスケール感があります。これから何か楽しいことが始まっていく、夢が叶っていく、その幕開けを表すようなダイナミックなイントロで、ワクワク感が増幅されていきます。曲調もアイドルのデビュー曲に相応しいような明るく楽しいメロディーで、サビもしっかり盛り上がるように作られています。
詩については、当時の秋元康らしさがあふれている印象です。夢工場というコンセプトから連想されるワードを散りばめて、キラキラ夢であふれる歌詞になっています。《少年時代の抜け穴》《屋根の裏で地図を広げて》《宝探ししてた頃へ》《ハックルベリーフィン》《ドキドキした冒険》《丸太だけのイカダ》《森の奥の隠れ家》などなど、このあたりはさすがですね。
とにもかくにも、アイドル夢工場の女の子たちは、夢を抱いてこのプロジェクトに参加し、まさに羽ばたこうと胸は希望にあふれていたことでしょう。
ところが、イベントが終了すると、このアイドル夢工場は、解散の宣言があるわけでもなく、新曲が出るわけでもなく、人々に忘れ去られるのを待つかのように、自然消滅していったのです。その後も「私、元アイドル夢工場だったのです」と大々的に宣言して芸能活動を始めるメンバーもなく、そのあたりの事情は未だに謎なのです。ただ調べてみると、どうやらメンバーの村岡英美さん、時田成美さんは、歌手や女優として、一時期芸能界で仕事をしていたようです。
それでも『アドベンチャー・ドリーム』で歌われたようには、芸能界の中では《白い羽 広げて》羽ばたくことはできなかったのかもしれません。