第87回 代表曲と売れた曲は一致するのか
シブがき隊
「2年B組仙八先生」に出演して名前を売り、満を持してデビューした3人組。シブがき隊という名前からしても、楽曲や衣装からしても、〈カッコいい〉よりも、〈可愛くて楽しい〉にコンセプトを寄せたような印象で、前にデビューした田原俊彦や近藤真彦、あとにデビューした少年隊などに比べると、売上推移もやや違った流れになっています。今回はシブがき隊の特集です。
【数字入りタイトル3部作】 1982年
「NAI・NAI 16」「100%…SOかもね」「ZIGZAGセブンティーン/Gジャンブルース」
デビュー年の1982年に3枚のシングルを出していますが、いずれも数字がタイトルにはいったものになっています。少年隊やマッチ、トシちゃんとは違って、デビュー曲でいきなり爆発的売上を残したというわけではなく、そこそこスタートで、そこからはヨコヨコ。衣装は赤青黄を3人が来て、振り付けもさほどキレのあるものではなく、いい意味で親しみが持てる3人といったところでした。そんな中3rdシングルはB面扱いだった「Gジャンブルース」が好評で、途中から両A面になった経緯もあって、売上を伸ばしました。
【オラオラ系の情熱青春ラブソング】 1983年
「処女的衝撃!」「ZOKKON命」「Hey!Bep-pin」「挑発∞」
とにかくシブがき隊のシングル曲はタイトルに凝っていて、この時期からは挑戦的な作品でアピールするようになります。また歌詞についてもそれまでの等身大の男の子といったところから、かなり情熱的なものが多くなってくるのです。まずはタイトルが中高生には刺激的な「処女的衝撃(ヴァージンショック)」、夜の渚で砂まみれでムリにキスを奪ったり、肩が折れるほど抱きたがったりする「ZOKKON命」、大混乱のディスコからさらったお前がいつか胸のボタンを自分で外すのを想像する「Hey!Bep-pin」、”もう迷わないぜ抱いてやる!”とセリフをモッくんが叫ぶ「挑発∞」と、当時のシブがき隊のファン層にはかなり刺激的だったのではないでしょうか。
【日本男児アピール時代】 1984~1985年
「サムライ・ニッポン」「喝!」「キャッツ&ドッグ」「アッパレ!フジヤマ」
「べらんめぇ!伊達男」「男・意ッ気」
相変わらずタイトルに凝り続けるシブがき隊陣営ですが、1984年から1985年の初め頃については、〈日本〉を意識した作品が並びます。タイトルにそのものずばりが入っている「サムライ・ニッポン」、日本の象徴である富士山をタイトルにした「アッパレ!フジヤマ」、いかにも日本人的精神をタイトルにした「喝!」「べらんめぇ!伊達男」、♪一姫二太郎恋すりゃと日本語ならではの数字の語呂遊びを歌詞にした「男・意ッ気」といった具合で、その中で「喝!」が9枚目にして初のオリコン1位を獲得しました。とにかくシブがき隊のタイトルには「!」がやたら入っていて、この時期も6曲中3曲、20枚目のシングルまでで10曲12個の「!」が使われています。ただ20枚目以降は全然使わなくなってしまっているのが興味深いところです。
【新しい取り組み】 1985年
「DJ in My Life」「月光淑女!」「KILL」
それまで取り組んできた作家陣(作詞では森雪之丞、三浦徳子、売野雅勇、作曲では井上大輔、後藤次利、水谷龍緒ら)からいったん離れて、新しく取り組んだのがこの時期で、まずは海外のカバー曲「DJ in My Life」、この曲が作曲家デビューとなったFrankie T.作曲の「月光淑女!」、作曲家としてヒット量産中の林哲司作曲の「KILL」と、新しいシブがき隊を見せていこうという意気込みが感じられました。
【色物系にシフト】 1986年~
「トラ!トラ!トラ!」「スシ食いねェ!」「飛んで火に入る夏の令嬢」
「千夜一夜キッス倶楽部」「恋人達のBlvd.」他
ところが今度は色物系にシフトしていき、アレッと思ったのがこの時期で、少年隊がデビューしたこともあって、数字的には影が薄くなりつつありました。その色物路線での極めつけが「スシ食いねェ!」で、ことわざのパロディみたいな「飛んで火に入る夏の令嬢」、衣装も振り付けもさ迷っている感満載の「千夜一夜キッス倶楽部」と、シブがき隊は何処へ向かっているのだろうと、もはや末期感さえ漂っていました。
【骨っぽい作品に揺り戻し】 1987~1988年
「ドリーム・ラッシュ」「反逆のアジテイション」「演歌なんて歌えない」
「PSST PSST」
色物路線での売上低下に焦ったのか、「ドリーム・ラッシュ」「反逆のアジテイション」と、シブがき隊の情熱的な部分が前面に出た骨っぽい作品への揺り戻しが起こります。ただそれをやや茶化した感じの「演歌なんて歌えない」はちょっとやりすぎで、企画物を除くと初めてトップ10内に入ることができない作品となりました。
【解散をにらんでの展開】 1988年
「恋するような友情を」「君を忘れない」
低迷感が顕著になったところでリリースした「恋するような友情を」はこれまでにまったくなかったような奇を衒わないストレートに聴かせる作品で、これはどうしたかと思わせたところでの解散発表。なるほど、そういうことだったのかと。そしてラストが「君を忘れない」と、最後にふさわしい爽やかなお別れソング。3作品ぶりにトップ10にも返り咲き、有終の美を飾ったのでありました。
■売上枚数 ベスト5
1 ZIG ZAG セブンティーン/Gジャンブルース 33.5万枚
2 100%…SOかもね 27.9万枚
3 挑発∞ 27.3万枚
4 NAI・NAI 16 25.9万枚
5 喝! 25.2万枚
上位は接戦なのですが、その中で途中に両A面仕様に変わったこともあって、ファンが倍買ったのかもしれません。「ZIG ZAG セブンティーン/Gジャンブルース」が売上一番。1982~1984年の中から5曲が入っています。
■最高順位
1位 … 喝!
2位 … 挑発∞、べらんめぇ伊達男
3位 … NAI・NAI16、処女的衝撃、ZOKKON命、サムライ・ニッポン
アッパレ!フジヤマ
唯一の1位獲得曲が「喝!」と、この辺りから1位曲を連発したトシちゃん、マッチ、少年隊、男闘呼組、光GENJIといったところとはややジャニーズでも立ち位置が違っていたことが分かります。2位は2曲、3位は5曲あります。
■代表曲
1 スシ食いねェ!
2 NAI・NAI16、100%…SOかもね、ZOKKON命
シブがき隊の紹介で必ず流れるのが、遊びで作ったような「スシ食いねェ!」というのは、本人たち的には不本意じゃないかと感じることはありますが、これが一番知られているのですよね。次点はとびぬけたものがなくて、だいたいこの3曲のどれかという感じではないでしょうか。
■好きな曲 ベスト5
1 ZOKKON命
2 DJ in My Life
3 挑発∞
4 恋するような友情を
5 Hey! Bep-pin
ZOKKON命は実は大好きな歌で、もうイントロのヘリコプターのような音からいきなり掴まれてしまいます。2位曲はカバー曲ではありますが、日本語詞もよくて、戻れない夏の日の恋のせつなさが、結構グッときます。上記以外にも、「処女的衝撃」とか「アッパレ!フジヤマ」とかも好きですね。
当時はついでに出したような「スシ食いねェ!」が結局最後まで残って、今となっては代表曲なのですから、当然リリース時の売上とはリンクしません。一番売れた「ZIG ZAGセブンティーン」或いは「Gジャンブルース」は代表曲群の候補にもなりませんし、唯一1位を取った「喝!」も代表曲か問われると、考えてしまいます
結論:売れた曲と代表曲はまったく別のもの























