●家庭崩壊映画 ベスト10 | 映画いろいろベスト10 + 似顔絵

映画いろいろベスト10 + 似顔絵

まったくの独断で選んだ映画10作品。
ペイントでの似顔絵もやっています。

家庭崩壊映画 ベスト10

 

ときおり映画の中で選ばれるテーマです。

 

1 アメリカン・ビューティー

アカデミー作品賞を獲得した作品は、1999年当時の米国の家族が抱える問題を描き出しています。二つの家族がそれぞれバラバラになっていく中で、闇の部分が次第に露わになり、崩壊していく様をシニカルな口調で語りかけてきます。良く練られた脚本と絶妙のキャスティングで、日常の中に起こった悲劇までを映し出しながら、娯楽作としても成立させているところがすごいところ。

アメリカンビューティー

 

2 普通の人々

かなり辛らつな語り口。一家平安が訪れてめでたしめでたしというのが一般的なホームドラマの結末なのですが、一人家族の中に悪者を作ることで、その形を崩しているのが衝撃的。家族は必ずしも全員揃っているのが幸せというのではないのかもしれないという問題提起なのか、本来一番のまとめやくであるはずの母親が実は家族を混乱に陥れていた構図が強く心に残りました。ずいぶん前の作品でありながら、現在にも通じる部分も多分に含んでおり、当時としては余計に強い印象を与えたと想像できます。

普通の人々

 

3 空中庭園

家族について鋭くしかし皮肉っぽい視線で描いたホームドラマです。途中まではブラック・コメディかとも思ったのですが、最後は希望の持てる明るい結末です。夫婦と2人の子供の家族の決まりは「秘密を持たない」こと。パートをしながらも良い家庭を必死に作ろうとしている小泉演じる主人公は常に笑顔を心がけています。しかしながら、人に見せない素の時間にはその笑顔はありません。そして何よりも家族4人それぞれに秘密を抱えているのです。秘密を抱えながらも、秘密はないと装い、表面的な幸せ家族を演じる一家には、やはり破綻が訪れてきました。家族にとって、何が必要なのか、それを実に考えさせられます。秘密もなくすべて明け透けに話すことが良い家族の条件か、その答は否でした。表面をとつりつくろうことよりも、本音でぶつかること。この家族がある晩、表面の平和が崩壊したときから、少しずつ変化をしてきます。そして最後に、何もかも話すばかりが良いことではない、秘密は秘密として死ぬまでそのままにしておくことも大事なこと、ということもまた語ってくれます。

空中庭園

 

4 幸福な食卓

瑞々しい青春映画であり、家族崩壊と再生を描いたホームドラマでもあります。タイトルからイメージしたものとは違い、意外にも中心は、北乃演じる主人公と勝地演じるボーイフレンドとのやりとり。ですからちょっと恋愛映画的な要素が強く出ているように感じました。中学から高校までの数年間、出会いからラストの悲劇(予告編観ていれば分かりますが)までを追うわけですが、打算も計算も世間体も一切なく、自然に仲良くなって純粋に惹かれあい、お互い「切磋琢磨」しあう関係は、この年代ならではのものかもしれません。なんとなく忘れていたものを思い出したような感覚を覚えました。ただし、学校での交友関係が、9割がた2人だけの関係で完結してしまっているところが、ややリアリティが薄くなってしまったのは残念でした。一方タイトルの「食卓」に代表されるこの一家は、家族4人、それぞれが自分のことで精一杯でバラバラになっている状態。「父さんが自殺したときは…」などと食卓で語られることに違和感を持たざるを得ません。しかしながらもしかすると、こういう家族の状況は珍しくないことなのでしょう。ネタバレになりますが、最後のお母さんが4つのお皿を並べるシーンが、この一家の将来が良い方向へ向かっていることを示してくれ、まだ修正がきく状態であったことは救いでした。何よりも最後に前を向いて歩いていく主人公の強い眼差しは希望が持てます。とにかく、この主人公は「いい子」です。こんなお嬢さんが育った家庭なら、完全に崩壊することもないでしょう。キャストの中では映画では初めて見たさくらがなかなか存在感のある演技をしていたのが目を引きました。

幸福な食卓

 

5 イカとクジラ

離婚をきっかけに、親子の気持ちが皆バラバラになってしまう様子を描く、シニカルな悲喜劇です。両親と男2人兄弟の4人それぞれが問題を抱え、また心を病んでいるのですが、誰に肩入れしてこの作品を観ればいいのだろうと考えながらの鑑賞でしたが、順番をつけるとすると長男・父親・次男・母親の順。長男の感情は割りとよく理解できます。一人ひとり、誰のどの部分に共感し、どの部分に反感や嫌悪感を持つか、ここで起こったどこにでもあるような離婚とその後の親子のあり方をどう捉えるか、観る者の経験や現在によって変わってくるのかもしれません。この映画は、観る者の観方でそれぞれが受け止めればいいのでしょう。答えは何も提示してくれませんし、ラストも小休止的な感じで終わっています。あとは、皆さん考えてくださいということでしょう、私はそう解釈しました。

イカとクジラ

 

6 葛城事件

全体的に不快感が支配している作品ですが、それも狙いであることは間違いなく、すべての登場人物にとにかく不快感を持つというのもまた珍しいこと。葛城一家は家族4人がみんな病んでいて、一回挿し込まれる子供たちが幼い時代のシーンを見ると、どうしてこんなに病んでしまったのだろうと、やるせなくなってしまいます。さらには傲慢にも自分が死刑囚の心を変えられると婚姻関係まで結んでしまう田中麗奈演じる女や、自殺した保の嫁と、敢えてここまでというような不快な演出に終始します。結局のところ誰にも感情移入をできず、こうなるのも仕方ないなぁと思うわけですが、むしろこの登場人物の誰もに共感して欲しくないところで観るべき作品なのでしょう。世間からひどい目に合ってもその家に住み続ける主人公。自殺さえもまともに出来ない。その嫌な感じを三浦友和が本当に嫌な感じで演じていたのもまた出色でした。嫌悪感のみ、そんな映画でした。


 

 

7 蛇イチゴ

派手な動きはないものの、脚本で観ている者をぐいぐいと惹きつけていく力に、西川監督の才能を見出すことができます。嘘が発覚したことで窮地に陥った家族を、嘘で埋めていこうとする様子が、西川独特のブラックユーモアで、シニカルに描かれています。配役も映画としては面白く、しかもピタリとはまっていて、映画全体に高揚感は皆無に等しいものの、不思議な魅力を放っています。

蛇イチゴ

 

8 紀子の食卓

時々見られる「家庭崩壊」を描いた作品の中でも、特に個性的な映画になっています。家出して「出張レンタル家族」の一員として、それぞれの依頼者によって役を演じ、時間制限つきで「家族ごっこ」をはじめた主人公紀子と妹。これ自体かなり非現実的な設定ではあるのですが、そこには現代に潜む家族問題が強烈に風刺されています。正直なところ、あまりにも個性の強い演出のため、作り手の言いたいことすべてを理解できたかというと「否」ではあると思いますが、それでも必死に娘の消息を探すうちに姉妹の父親の必死さに、強く惹きつける力を感じました。妻にも死なれ、娘にも本物の父親と認めてもらえない寂しさに、男親の悲哀のようなものがあふれてきます。色んな捉え方のできる映画でもあると思いますが、見終わってなんともいえない不思議な気分に襲われる、独特の家族ドラマでした。この作品を観るに当たっての目当ての最大ポイントであったつぐみさんですが、綺麗になりましたね。

紀子の食卓

 

9 トウキョウソナタ

この作品にリアリティを求めてはいけないと気づいたのは、もう作品を観終わったあとのこと。ブラック・コメディとして捉えれば、これはかなり毒の効いた面白い作品だと、今になれば冷静に考えることはできるのですが、観ている間は家庭崩壊をリアルに抉り出した純然たるホームドラマだと思っていたのです。ういう家族を見ていると、家族ってなんて煩わしく邪魔くさいものだと思ってしまいますね。「家族っていいものだ」というところがほとんど感じられなくて、最後も結局行くところがなくて仕方なく的なところを感じ取ってしまうのです。こんな映画ばかりだと、ますます少子化が進みそうで怖かったりもするのですが、まあ、こんな映画ばかりではなく、家族って素晴らしい!という映画もそれ以上に沢山作られていることですから、杞憂ですね。いやいや、この一家は家族の体をなしていなかったというのが正しいのかもしれないです。

トウキョウソナタ

 

10 アイス・ストーム

冷たい映像が家族のバラバラになっていく様子をやるせなく語っているのですが、その一つ一つにいまひとつインパクトを感じないので、中途半端な印象に終わってしまっています。二つの家族が複雑に関係しながら、表面上だけの家族になり、互いの気持ちには無関心。怒るも叱るも表面的という家族が、ラストの事件で再生へのきっかけを掴もうとしています。しかしある意味ありそうでなさそうなという感じのエピソードが重なっているため、現実感も衝撃も感じないのです。そっと静かにという演出が、この作品ではあまり成功していないように思います。豪華キャストなのでもうひとつ「何か」が欲しかったです。

アイスストーム