●中村義洋 監督映画 ベスト10 | 映画いろいろベスト10 + 似顔絵

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まったくの独断で選んだ映画10作品。
ペイントでの似顔絵もやっています。

中村義洋 監督映画 ベスト10

 

この監督なら安心して観られるという中村義洋監督の特集です。

 

1 白ゆき姫殺人事件

湊かなえ×中村義洋とくれば、期待しないわけにはいかないでしょう。そしてその結果は、期待を裏切らない、掛け値なしに面白い映画に仕上がっていました。計算された構成、適材適所の配役、巧みな映像表現、込められた現代社会への風刺、そして魅力的なストーリー展開と、冒頭から結末までぐいぐいと惹きこんでいく力もまた見事。娯楽映画として観客を楽しませながらも、一方で現代の社会的病理をテーマとして送り込んでいく強かさ。ワイドショーでの取り上げ方など、多少の誇張は気にはなりましたが、全体としては些細なことに思えるほど、よく出来た作品でした。

白ゆき姫殺人事件

 

2 ゴールデンスランバー

さすがに売れっ子作家の原作に、ベストセラー小説の映画化作品に長けている中村監督の組み合わせということで、面白く観ることができました。わけもなく犯人に仕立て上げられて追いかけられる不条理こそが、この作品の生命線。ですから「なぜ?」は不必要なのですね。「なぜ?」を問いだしたら、この作品はまったく成立しなくなるわけで、とにかく背景にあるものはすべて無視。「なぜ彼が?」「犯行の狙いは?」などと探るのは野暮というものということでしょ。主人公がどう冤罪を晴らすかでなく、どう逃げ切るか、それだけに絞った展開によって、スピード感と緊張感にあふれた作品に仕上がったのだと思います。堺雅人のキャスティングもうまかったですね。これだけ大々的にマスコミから犯人扱いされても、まだ彼を信じて手を差し伸べようとする人々が多くいるということ、それにはこんなことなどするわけがないという、にじみ出てくるような善人ぶりが大前提となるわけです。観ている者が少しでも「こいつ怪しい」と思ったらアウトですし、その意味で、主人公にまったく落ち度がなく、ただただ陰謀に巻き込まれただけだと無条件に受けいれられるキャラクターということで、まさにはまり役でした。

ゴールデンスランバー

 

3 ジェネラル・ルージュの凱旋

前作よりも面白かったです。俳優陣、竹内結子、高嶋正信もよいが、なんといっても堺雅人が素晴らしい。熱い医師を熱演。ドラマも謎解きというよりは、現代の病院が抱えていると思われる問題を浮き彫りにし、見ごたえある社会派ドラマになっている。

ジェネラルルージュの凱旋

 

4 ブース

オカルト・スリラーとしましたが、展開の中心は心理的に追い詰められていく主人公(ラジオ番組のパーソナリティ)の心のうち。恋人を死なせてしまったという疚しい部分が次々に広がりを見せ、どこからともなく聞こえてくる不思議な声やリスナーからの電話相談、さらにはブースの外にいるスタッフの視線の中で平常心を失っていく様子が、緊張感の中で伝わってきてテンポが良いです。珍しく嫌な奴を演じる佐藤隆太が予想以上の好演を見せ、大半が密室でのシーンで構成されているこの作品を飽きさせずに、心理的な変化をきちんと見せてくれています。謎の声の正体も、良い意味で観ている側を裏切ってくれます。ラストのオチがもうひとつあっというほどの力がなかったのがやや残念ですが、70分ほどの時間にちょうどよく収まって、意外な拾い物といった感じで面白かったです。

ブース

 

5 ちょんまげぷりん

まとまりのある「質の良いコメディ」になっていたと思います。そのあたりは中村義洋監督、そつがないというところでしょうか。「もし現代に侍が突然現れたら」という、誰もが一度は空想しそうなことを、タイムスリップという映画ならではのテクニックを使い、映像として実現化した上に、現代の都市文化の問題点なども盛り込みながら、娯楽作に仕上げてしまったところは見事です。本当に江戸の侍であるなら、もっとこんなことに驚くはずだとか。こんなこと簡単にできるわけないとか、もっとこんなことに困るはずだとか、細かいところに突っ込んでいくこともできはしますが、まあそれは野暮でしょ。家族のあり方の物語なのですから、ほかのことに手を伸ばしてしまうと、収拾がつかなくなりますからね。風呂敷をあまり広げなかったことが、逆にまとまりのよさに繋がったのではないでしょうか。キャストとしても映画常連メンバーがあまりいなくて、新鮮な印象も受けました。

ちょんまげぷりん

 

6 チーム・バチスタの栄光

チーム・バチスタの面々のそれぞれのキャラクターや人間関係、そこまでに至る背景などを、内部調査という形で明らかになっていくことだけでも、このあとどんな形で犯人を見つけ出すのか、ワクワクしてきます。その説明部分だけで上映時間の半分以上を費やしているのですが、それでもちっともじれませんし、むしろ期待感が膨らむばかりでした。それからもうひとつ、手術のシーンの緊張感もまた圧巻です。ここでは心臓を一旦止めて、再度動かすということをしているのですが、心臓が再び動き出すまでの時間の居たたまれないほどの緊迫感、そして動き出したときの究極の安堵感、或いは動き出さなかったときのこれ以上ないという焦燥感、自分がその場で手術に関わっているかのような感覚で、それらが伝わってくるのです。このあたりの演出はなかなか見事であったと思います。いいところ、不満なところいろいろ出てくる映画ではありますが、それでもやはり医学ミステリー映画は面白いです。飽きることなく最後まで観られたことは評価したいと思います。

チームバチスタの栄光

 

7 みなさん、さようなら

同級生たちが成長しみんなが順々に団地を去っていく経過と、賑やかだった団地が次第にさびれていく月日の流れがリンクし、その中で一人取り残されていく主人公を思うと、とても切なくなってきます。その主人公を悲しみと可笑しみの両面濱田岳が巧みに表現し、まさに彼なくては成立しない作品であったかと思います。団地から出られないという「セミ引きこもり」的な状況であっても、悲愴感はないし、人並みに恋もすれば性欲もある。特異な設定の中での普通っぽい面を、一人で子供時代から大人までを演じるという無茶な要求の中でも出し切ったところは、彼ならではというところでしょう。作品的にはみんなが去っていくまでの同級生たちとの交流は面白く観ることができましたが、最後の一念発起するところは、ややとってつけたような感じで、ちょっとだれてしまいました。それでも、現実として多くのこうした団地が住人の高齢化や老朽化が問題化していることを思い浮かべると、この主人公どうこうよりも、コミュニティとしての栄枯盛衰を観ているようで、どこかさびしい気持ちにさせられ、感傷的になったりもしてしまいました。

 

8 アヒルと鴨のコインロッカー

途中まではすっかり騙されてしまいました。この作品は種明かしが大きな要素を占めているため、それを織り込まずに感想文を書くのは、実は至難の業なのですが、大雑把にいってしまえば、前半と後半で同じで出来事を、前提条件を変えて2度振り返っているという形になります。あとから思い返すとところどころに伏線が張られていて、あとで「ああ、そうだったのか」と気づくのもまたこの手の映画の楽しみ方の一つなのですが、その部分でもなかなか小憎い技をちょこちょこと使ってくれています。もう1回見直してみると、さらに気づく箇所が出てきそうです。ただし、文章だとさほど気にならないであろう部分で、実際に俳優が演技として見せることで少々違和感を感じる部分がないではありません。特に留学生の使う日本語の上達の程度は、やや不自然。いや、外見的にもどうでしょうか、正直なところ無理やり感はありました。その部分で、全体として面白くユニークな構成ではあるのですが、しっくりこない部分もあり、評価としては6.5ぐらいにさせていただきました。

アヒルと鴨のコインロッカー

 

9 ジャージの二人

なーーんにも起こらないほのぼの脱力系映画なのですけれど、ちょっぴり切なさも感じます。東京の暑さを避けて避暑地にやってきた父親と息子。時々訪問者がやってくる以外は、特にすることなく日々だらだらとすごすのんびり感を、癒しととるか退屈ととるか。すでに差し掛かった冬にみると、いまひとつ共感しにくかったりするのですが、おそらく真夏にこれを観たら、きっと涼しい軽井沢での生活を羨ましく思ったことでしょう。とにかくこの映画、気合入れて「さあ、観るぞ!」と力を入れて観ては駄目、「せっかく時間を割いて来たのに、こんな何にもない映画を作りやがって!」となってしまいます。時間に余裕があるときに、ゆったりくつろいで鑑賞するのが一番。

ジャージの二人

 

10 ポテチ

へそ曲がりな観方になってしまいますが、どうも都合よく組み立て過ぎの気がして、正直なところあまりピンと来なかったです。偶然のタイミングでかかってきた都合のいい電話、それも2回。空き巣稼業をしておきながら、のこのこと出かけていくところがまず信じられないし、それで出かけていくほどの優しさがあれば、空き巣なんかしないでしょ、というのが根本にあります。今村くんの設定もどこかわざとらしく、ニュートンや三角形の角度の下りは不自然。そしてこの作品の肝となる事実発覚までの経緯も、今の時代を考えると疑問符だらけ。素直に「いい話ですね」と受け止められればいいのですが、考え出すと、どうもリアリティを感じられなくなってしまうのです。そもそもの設定にちょっと無理があったように、私は思いました。

 

11 フィッシュストーリー

12 殿、利息でござる

13 予告犯

14 奇跡のリンゴ

15 ルート225

16 忍びの国

17  ナゾトキネマ『マダム・マーマレードの異常な謎』出題編

18 ナゾトキネマ『マダム・マーマレードの異常な謎』解答編

19 決算!忠臣蔵

20 残穢【ざんえ】-住んではいけない部屋-