●大谷健太郎 監督映画 ベスト10 | 映画いろいろベスト10 + 似顔絵

映画いろいろベスト10 + 似顔絵

まったくの独断で選んだ映画10作品。
ペイントでの似顔絵もやっています。

大谷健太郎 監督映画 ベスト10

 

1 ジーン・ワルツ

想像以上に重いテーマで、しかも今作はミステリー的な遊びの要素も全くなく、否応がなく真剣にスクリーンを観ざるを得ませんでした。そして当然ながら、いろいろなことを考えさせる題材でもあり、問題を提起しておいて答えは観ている人がそれぞれ考えてくださいというスタンスに、改めて答えを出すのに難しい問題であることを認識しました。ただ同時に、そう難しく考えるなとも言われているようでもあり、倫理観や道徳観から答えを導き出そうとしている現代の日本の医学界に、一石を投じるような作品になったのではないでしょうか。

ジーンワルツ

 

2 NANA

使い古されたようなテーマをつなぎ合わせて作られているような感もありますが、全体としては青春期における夢・恋愛・友情・自立といったテーマが散りばめられ、正統派の青春恋愛映画になっています。青春映画としての永遠のテーマかもしれない夢をとるか、愛をとるか、様々な映画で様々な選択がなされてきたわけですが、この映画の中では、夢を選択しながらも愛を捨てきれない、かっこつけてはみたもののきっぱり区切りをつけきれない、そんな等身大の20歳が描かれていて好感が持てます。演技では宮崎あおいに追うところが大きく、抜群の巧さを見せてくれています。中島美嘉は、個人的には好きではないのですが、今回は役にははまっていました。

NANA

 

3 とらばいゆ

女流棋士を扱った映画はまず珍しいですが、作品の主体は会話です。瀬戸朝香が実に傲慢で我侭で何よりもキツイ女をリアルに演じています。あまりの勘違いぶりに、演技とわかっても気分が悪くなるくらい。それに引き換え人が良くて我慢強い夫。家事は女という封建的な考えはありますが、基本的に夫の味方をしたくなるようなキャラクターづけをしていたと思います。密室が中心の舞台の中で俳優たちは自分の役割をきちんとこなしているように思いました。

 

とらばいゆ

4 LOVE まさお君が行く!

映画に出てくる犬を見ていると、いつもその演技に感心させられるのですが、この映画では「バカ犬」の演技までしてしまうというところに感服してしまいました。障害レースに出たところなどを見ると、ちゃんとした演技ができることも明らか。それなのに何にもできない「ふり」をするというのは、人間並みですね。映画については、そのまさお君と香取慎吾のキャラクターが生かされた作品になっていると思います。実は犬嫌いの私ではありますが、観ていて微笑ましくなるシーンも多くて、劇中の番組の視聴者と同様、穏やかな気持ちにさせられました。

 

5 約三十の嘘

密室ミステリーの本格的な劇を想像していたら最後は拍子抜け。トリック自体はたいしたことでなく、むしろ6人の関係修復のための過程をメインに見せたかったのだということに最後に気づきます。とくに中谷美紀の椎名桔平に対する想いというのが最後になって表面化するのですが、その思いこそがこの物語の結末のつけ方の鍵だったんだなと、最後に知らされることになります。意外難しい題材だったのかもしれません。まとめきれなかった感はありますが、チャレンジは評価したいです。

約三十の嘘

 

6 黒執事

さとうけいいちとの共同監督作。つまらなくはないけれど、結果的に収拾のつかなくなってしまったシーンがあったりと、まとまりの悪い作品になってしまいました。剛力の男装も中途半端だし、水嶋の存在もどうもしっくりこない。スケール感のある設定のわりに、変なところで理屈的だったり、小細工を仕掛けたりと、どうもちぐはぐ。必ずしもこの独特の世界を構築しきれなかったようで、変に現実的・人間的なシーンも気になりました。唯一の収穫は優香の悪役。今までほとんどなかったでしょうけれど、これが意外にはまり役。悪役の演技が上手くてびっくり。これは新境地を開拓できたのでは?

 

7 4月の君、スピカ。

ヒロインを挟んでの三角関係、友情と恋愛が絡んで、学園恋愛映画によくある形で進行しますが、ヒロインは知らない間に心変わり。やはり好きだと言葉や態度に出し続けてくれることで、揺らいでしまうのでしょうか。過去の苦い思い出から、自分の気持ちを押し殺して拒否したことが、結果的には失敗だったともいえるでしょう。ただ友情を壊さずに恋愛を成就させる結末はやはりこれだったのでしょう。キャストとしてはちょっと地味ですかね。

 

8 ランウェイ☆ビート

大人が観ると、最初から最後まで、とにかく恥ずかしくなるような、くすぐったくなるようにそんなストレートな青春映画です。プロットは現代風ですが、骨組みそのものは青春映画の古典といえるのではないでしょうか。しかしこの映画、まったく現実感のない筋立て。経済的観念はまったく無視されていますし(経費もないのにあんな大がかりなセットをあっという間に造ることができるか!)、社会的な手続きも無茶苦茶(廃校の件はその最たる例)。とても映画としての質は褒められたものではありません。最初からターゲットを10代の中高生だけに絞って、それ以上の大人はどうでもいいという作りなのでしょうね。ただしこの映画、不思議と好感度は高いです。古典的青春映画である分、あまり下世話な要素が入り込んでいないのがいいのでしょう。夢、恋、友情…これらが「恥ずかしくなる」要素ではあるのですが、好感度を産んでいるというのも一方ではありますね。でも、やはり高い点数は無理ですけど。

 

9 ラフ

当時売り出し中の長澤まさみ+速水もこみちにあだち充ですからね。映画自体はとるにたらない普通のラブ・コメディ。「タッチ」に続いての主演となった長澤まさみですが、正直この作品に出る意味がいまひとつよく分かりませんでした。映画で実績のない速水くんは、導入としての意味は理解出来ますが、先々大物女優として成長させたい長澤に2本続けてぬるい似たような青春映画はどうなのでしょう、という感はありましたね。さらに脇役のキャスティングがよくありません。どうみても日本一のスイマーだとか、特待生として選ばれたスポーツ選手には見えないキャストばかり。その点でもぬるさを感じてしまいました。

 

10 NANA2

3人の主要キャストの交代を聞いてある程度予想はできたといえ、残念な続編になってしまいました。一番の難点は市川由衣演じるハチに魅力がまったく感じられないことにあります。劇中玉山鉄二演じるタクミが放つ強烈な言葉のとおり「20歳になって定職にもつかず、寂しくなればすぐ男としてしまう」女、それ以上の何ものでもないキャラクターには、到底感情移入などできません。まったく自分を持たずに、周りに言われるままに、好きだといわれれば好きになり体を許し、一緒になろうといわれればすぐ一緒になるハチ。もちろんそういった人間を主人公にした映画を作ってはいけないとはいいませんし、それなりに魅力的に見せる方法もあるでしょう。ただあまりにも脚本が安っぽく、原作は知りませんが、単なるバカな尻軽女にしか見えてこないのです。正直なところ、市川由衣では、宮﨑あおいの後釜として荷が重かったでしょう。デビュー話もなかなか盛り上がらず、終盤ライブのシーンなどで盛り返しは見せたものの、出来としてはあまりよろしくないものになってしまいました。

NANA2