●一人旅の映画 ベスト10 | 映画いろいろベスト10 + 似顔絵

映画いろいろベスト10 + 似顔絵

まったくの独断で選んだ映画10作品。
ペイントでの似顔絵もやっています。

一人旅映画 ベスト10

 

 

1 旅の重さ

母一人娘一人の生活に息苦しさを感じたのでしょう、一人家を出て四国へと旅立った女子高校生の一人旅ロードムービーは、四国の田舎の夏ののどかな風景と、そこで日々を暮らす人々との出会い、そして旅情を誘う吉田拓郎の音楽が調和して、瑞々しい作品となっています。さらに主演の高橋洋子の化粧気のない素朴な魅力と喜怒哀楽をはっきりみせる表情が、二度と戻ることのない青春時代の一瞬を切り取っているようなせつなさを感じ、不思議とキュンキュンと胸に響いてくるのです。旅芸人、行商など、今の時代にはほぼ無くなってしまった文化も、1970年代前半という、これらがギリギリに残りながらも、すでに古くなり田舎に追いやられたものとして捉えられることが、ほどよい時代感ともなっています。16歳の少女が体験することとしては、結構激しいこともあったりするのですが、それでも一人旅の寂しさ、帰るつもりのない覚悟がところどころに表れ、ついつい感情移入してしまいました。旅を続けるにしたがって汚れていく白いパンツが、旅の時間の経過を表しているようでした。

 

2 ストレイト・ストーリー

73歳のおじいちゃんが、芝刈り機に乗って長旅に出るのんびりしたロードムービーです。出てくる人物がほとんどいい人ばかりで、旅の途中のエピソードがどれもしみじみと心温まる話。天気や景色や音楽が互いに交じり合ってほのぼのとした気持ちになれる映画でした。

 

3 わたしに会うまでの1600キロ

リース・ウィザスプーンの体当たりの演技、ノーメイクはもちろん重い物を担いだうえでの砂漠や雪山などの過酷な撮影状況。回想シーンではヌードシーンや薬物に溺れるシーンもあり、山の中ではうんこまで(もちろん本人がしている姿が出てくるわけではないですが)。映画自体は過酷な道程の合間に過去の母親との思い出や破たんした結婚生活の回想シーンを挟み込む形で、淡々と進んでいきます。1つ1つのシーンでは確かに大変だなというところはあるのですが、トータルでつないでみると、続けるか止めるかの決断を迫られるほどの場面はなく、スムーズに道のりをこなしたという印象で、その点がやや物足りない印象を残しました。しかし大自然の中で一人いろいろと考えながら、新しい生活に向かってどうしていくか考える主人公の姿に、どうにか立ち直って幸せになってほしいという思いでいっぱいでした。

 

4 星の旅人たち

観ている方まで、一緒になって旅をしているような気持ちになるような素敵な旅の映画でした。年齢も性別も住む場所も動機も違う人たちが、同じ目的地に向かうという共通点だけで合流し、交流を深めていくというのは、まさに一人旅の醍醐味ですね。いやー、旅に出たくなりましたよ。主人公にとって、決してこれは楽しい旅であるはずがなく、本来なら悲愴感に溢れた旅であるはずなのに、時間が経過するにつれ、観ていてむしろ清々しささえ覚えてしまうこの巡礼の旅は、旅を共にしたキャラクターの濃い面々に因るところも大きかったかもしれません。不機嫌だし、自分のことは語らないし、そんな60過ぎの男を、見捨てることなく旅を続け、盗難に遭ったり、警察に捕まった時には助けてくれる、いつの間にか仲間になっていく過程がまたいいですね。日常生活とは離れた利害関係のないところだから成立する関係かもしれませんが、改めて旅することの魅力を感じさせられました。

 

5 イントゥ・ザ・ワイルド

広大な大地を持つ米国ならではの壮大なスケール感たっぷりのロード・ムービーをショーン・ペンが創り上げました。恵まれた家庭、才能と不自由のない環境で暮らす若者がなぜ突如、家族にいる場所もいわないままに長旅を続けたのか、その部分では完全に理解できるものではないのですが、20代前半という若さ、縛られるものから逃げ出して何かを見つけたいという意気込みは分からないではないです。旅の中での様々な人々との交流、そして人間の力の及ばない大自然の力を目の当たりにするたびに、新しい力が漲っていくような感覚にさえ襲われますから不思議です。巨大な力を持つ自然と人間の日々の営みを対比させることで、人間らしい生き方、家族やコミニュティのあり方、そんなものについて少し考える機会を与えてくれるような、そんな力を持つ映画であったと思います。音楽も良かったです。

 

6 旅の贈りもの 明日へ

甘酸っぱい初恋のムード満載の回想シーンがくすぐったいこと。それにしても、あまりもの偶然を重ねたベタベタなストーリー。観客には3人の関係性を早い段階で匂わせるため、いつどんな形で感動の再会を果たすのか、それを心待ちにしての鑑賞ということになりました。それなのに、半分は再会できて、半分は直接再会しないままという、なんとも中途半端な結末。どうせここまで偶然に偶然を重ねたおとぎ話のようなドラマを演出するなら、徹底して最後までおとぎ話を貫いてほしかったです。あまりにベタすぎるから、最後に来て調節したような、そんな感じになってしまったのが惜しいです。それと一つまったく絡んでこないバイオリン演奏者のエピソードは、中途半端だしどこか浮いている感じで、正直なところなくても良かったのではないでしょうか。それでも、どこかドキドキして観られたのは、酒井和歌子さんだからというのはありますね。普通の一般の60才のおばさんでは、なかなかこうはいかなかったでしょう。

 

7 ベニスに恋して

一人旅の旅先でのロマンスを描いたラブ・コメディです。家族と離れて一時の休暇を楽しむはずが、結局そこに住みついてしまうことになります。最後のプロポーズのあと妻や母親に捨てられた家族のその後が気になるところ。

 

8 ぼくとママの黄色い自転車

母親の病気と間もなく訪れる別れを受け入れるまでの少年の成長を描いた作品です。母親はパリで留学中だと家族ぐるみでついていた嘘をもとに、パリでなく小豆島にいると知った彼は、家族に内緒で一人で会いに行くのです。道中では知らない人の助けを得ながらも、目的地にたどり着いた先で真実を知る…。物語としては設定を聞くと先が想像できる話ではありますが、主に観てほしいのはやはり子供たちでしょう。人生にはつらいこと、家族との別れがあるかもしれませんが、それにめげることなく、強く生きてほしい…という、いってしまえばありがちなメッセージを伝えたいということでしょう。そんな小品ではありますが、キャストがなかなか豪華。

 

9 500ページの夢の束 

自閉症の女性が周りの心配をよそに一人でハリウッドまでの数百キロを金もないのに、なんとかなるという思いで目的を達するまでのロードムービーです。どこまでリアルな演技なのかよく分かりませんが、主人公が自立への一歩を踏み出すまでを描くという意味では、優しい視点で描かれているとは思います。一方でこんなにうまくいくものかという部分もあり、やはり映画的なものは感じざるを得ません。さらに全体として淡々としていて、映画としてのメリハリも弱いので、やや退屈してしまうのも否めません。主人公の才能はわかっても、人間的な魅力というのも伝わりにくく、今一歩という出来栄えでした。

 

10 食べて、祈って、恋をして 

男にはこの内容はちょっと辛いです。時間ばかり気にしてそわそわという感じでした。確かに世界のあちらこちらの旅情の雰囲気というものは楽しめますし、その土地その土地の食べ物やファッションなども、癒しの効果はあるでしょう。しかしいかんせん退屈。うじうじもやもやと吹っ切れないヒロインの思いが延々と続いて、終盤にハビエル・バルデムが登場してようやく話が動き出すのですが、とにかくそれまでが長い! 女性なら自分の姿を投影して観ることもできるのでしょうが、男ではそれも出来ず、客観的に眺めても心情をよく理解できないままでは、興味もどんどんスクリーンから離れているだけ。バルデムの相変わらずの巧さに多少救われはしましたが、総じて単調。この企画、ジュリア・ロバーツの名前がなければ、ほぼ成立しないでしょ。