従軍記者・戦場カメラマン映画 ベスト10
戦場の実態を伝える記者、カメラマンの映画の特集です
1 プライベート・ウォー
戦場の現実を伝えることにまさに命を賭けた女性戦場ジャーナリストの生き様を見せるという点では、強い印象を残す作品です。生き方としてはかなり特異で、取材をするためには恐怖も厭わずに、とくかく現場へ赴こうとする強靭な意欲。時には暴走したり、周りに迷惑を枯れたりと、客観的に見ると行き過ぎで、何もそこまでと思うことも多々あるのですが、一方で彼女のような存在がいなければ、戦争の現実がなかなか伝わらないというのも事実でしょう。そんな彼女の欠点も含めて人物像を描く出すことに徹した作品になっていました。
2 独立愚連隊
岡本喜八監督らしく暗いだけ厳しいだけの戦争映画ではなく、本線からはずれたところで独自の闘いを続けるはみ出し者を快活に描く中で、戦争の馬鹿らしさ虚しさを表現した意欲作といえるでしょう。佐藤允演じる主人公(なんちゃって従軍記者)の大胆かつ独断の行動が普通の戦争映画とはまったく違う味わいとなって、観ている者を引きつけていきます。
3 ウェルカム・トゥ・サラエボ
戦闘の当事者ではなく、第三国の報道マンを主役にして、違った視点から戦争を描いている作品。とはいっても、巻きこまれる子供たちを悲劇の主人公にしており、戦争の悲惨さ無意味さを訴えようとするメッセージはほかの戦争を描いた映画とけっして違うものではないでしょう。淡々と進んでいるような印象で、決して大袈裟な描写があるわけではないのですが、それだけに日常的でもあり戦争を身近に感じるのであります。
4 おやすみなさいを言いたくて
社会的使命か、自分の家族の安心か、女性カメラマンが選択に迫られる中選んでいった結果は、家族よりも戦場だった。その都度葛藤を抱えながらも、自分の選択が正しいと信じ行動し続けた結果、家族崩壊に招いてしまったことに対し、口では謝罪をしながらも、結局はまた現地に出向く主人公。この使命感は確かに恐れ入るのですが、いつ死ぬかもわからないという気持ちを家族に抱かせ続けることになってしまう皮肉。しかしながら最後に無力な自分、そして母親としての自分が顔を出して動けなくなってしまうシーン。何が正しくて何が間違っているかだけにとどまらない難しい問題をはらんだ作品でした。
5 バハールの涙
ISと戦う女性部隊にスポットを当てた作品で、同じ女性の戦争記者の目を通して、彼女たちの戦いを描いています。ISに捉えられ奴隷同然の扱いから逃げ出し、捕虜として捕らえられている子供たちを助け出すために、結成された女性部隊。男性部隊の戦いの姿勢に不満を持ち、時にはぶつかり、しかし時には助け合って、仲間を失っても戦い続ける彼女たち。あまりにも過酷な運命にさらされたクルド人たち。あのISとの闘いのごく一部でしいかないのでしょうが、平和ボケした我々にはとても耐えられないだろうと思いながら、彼女たちの今後の平穏を祈らざるを得ませんでした。
6 地雷を踏んだらサヨウナラ
フリーのカメラマン一ノ瀬泰造を描いた伝記映画です。写真への熱意と,現地の人との交流、戦争の悲惨さなど、伝わって来るものは多く、その中で主人公の生き様を興味深く観られました。詰め込みすぎたきらいがあり、深くまで訴えるところまでは表現できていないのが残念ではありました。
7 戦争と冒険
チャーチルの若き時代を中心に、人格形成に影響した子供時代のエピソードを加えて描いた伝記映画です。従軍記者という形で戦争に参加し、活躍したり、捕虜になったり、脱走したりした上で国民的英雄になり、その後政治の世界で台頭。母親との関係や恋愛ごとなども加えながらも、圧倒的な熱情とそこからにじみ出るオーラで国民の支持を集めていく様子に、写真や他の映画で見る晩年のチャーチルとはまったく違ったイメージの姿が映し出されていました。特に戦地での様子に時間を割いていて、そこでの実績がのちに大衆の支持を集めるには大きな要素になったのだろうということが伝わりました。
8 コウノトリの歌
従軍カメラマンの視点で、叙情的にベトナム戦争を回顧する映画。辛いこと、甘いこと、すべてが交じり合って、ノスタルジックなムードを醸し出しています。
9 キリング・フィールド
カンボジアを舞台に、ドキュメンタリータッチで、戦争の中での記者の友情を、冷めた感じのカメラ目線で追っている社会派ヒューマンドラマです。淡々としているのでもう少しドラマティックの方が好みでは映画としては面白いのかもしれませんが、作られた過剰な演出よりもずっとリアルを感じ取ることはできました。
10 慕情
女医と従軍記者、大人の男女の悲劇の恋を描いたメロドラマで、スター映画らしいベタベタのラブストーリーとなっています。いかにもという作り物っぽさで、個人的には感情移入しづらかったです。