血の繋がらない兄妹・姉弟映画 ベスト10
1 東京公園
青山真治監督の作品でこんなに穏やかな気持ちになれるとは思いませんでした。私はこの映画を好きです。みんなそれぞれに切ないやるせない思いを抱えながら、それを隠して気丈に振舞おうとしているのですが、全体に流れる空気感がゆったりしていて、或いは三浦春馬演じる主人公のがつがつしないキャラクターもあって、不思議に穏やかになれるのです。都会の中のオアシスとしての公園など、東京でありながら東京を感じさせない舞台の選択も一つの要因であったでしょう。キャストでは榮倉奈々が印象的。ちょっと風変わりな女の子の独特な語りを可愛らしく、そして自然にこなしていました。
2 思い、思われ、ふり、ふられ
この手の恋愛群像劇は三木孝浩監督の得意とするところだけに、しっかりとまとめあげていました。高校1年生4人による四角関係の移ろいを、季節を追って描いていて、どうなっていくのかワクワクしながら最後まで観ることができたのです。演じているのがもういい年の演者なので、高校生の物語ときくと、多少大人びた印象の違和感はありましたが、変に幼稚な感じになるよりは、大人が観ても楽しめるという点では良かったと思います。特に浜辺美波と福本莉子の対照的なキャラクターへのキャスティングがぴったりとはまっていて、見事でした。
3 魔法少女を忘れない
有名な俳優は前田亜季ぐらいですが、青春映画のなつかしさに加え、そんな楽しく過ごしたことも忘れ去られてしまう寂しさが加わり、切なさ漂う作品になっていました。一回観出すとそのまま目が離せずに入り込んでしまいました。派手でもないし、交友関係も狭く限定される話ではありますし、中心となる俳優陣にいまひとつ華がないのですが、それでも映画としては満足できるものになっていました。
4 クルーエル・インテンションズ
血の繋がらない姉(サラ・ミシェル・ゲラー)と弟(ライアン･フィリップ)が、同じ学校のまじめな女生徒を陥れようと画策。自分好みのえげつないどろどろの世界。死なれてからの復讐の悲劇に落とし入れられるオチも好きですし、惹きこまれる展開もなかなか。ただ出てくる人物みんな馬鹿に思えてしまうというのはありますが。
5 アナとオットー
運命的な男女の愛を、ほとんど女性の一生を通じて追っていくドラマティックな恋愛映画。最後はなんとも劇的ではあるが「悲」劇的で皮肉な結末だが、これが不思議にあまり悲しく感じられません。強い意志をお互いに感じられ、自らの意志によって再会を目指そうという努力が、結局は再会に導くのであったのですが、それゆえに悲劇であったということはね二人は会うべきでなかったということなのだろうか、いろいろ考えてしまう作品でした。
6 氷点
どろどろと渦巻く一家の愛憎劇を見応えある映画にしていますが、いかにもこの時代らしい性質の映画になっていました。互いに疑心暗鬼になり、恨みながらも復讐をしようし、別れることのない夫婦。それと対照的な純粋な兄妹。妹に対する女性としての愛情など、大人と子供が対照的ですが、それだけに最後にやってくる悲劇と、それをきっかけに心を取り戻して行く夫婦の様子が強く印象に残るのです。
7 青の炎
二宮和也は好演、鈴木杏はさすがにうまい。松浦亜弥はちょっとつたない演技ながらも全体的に冷たい作品の中に溶け込んでいて違和感はありません。いわゆるアイドル映画ですが、それだけにしたくないという意思は感じました。ただ悲劇を扱っているにも関わらず、いまひとつ青春の痛みというものが突き刺さってきません。全体的にまとまっていて悪くはないのですが、どこか現実感という点でいま一つ響いてこないのは、あまりに冷えたムードに終始しているという点に加え、秀一の車庫をかえた部屋・パソコンやテレビなどの贅沢な道具･万単位の買物を次々にしてしまう金銭感覚・教室内の冷めた会話など、やや首を傾げてしまうような小道具・舞台にあるように思いました。
8 切られ与三郎
なんとも切ない幕切れが涙を誘います。最初から養子の兄を慕うお金の気持ちは溢れるほど明らかなのに、それに気づかぬふりをして放蕩生活に出る血のつながらない兄。あくまでも妹として彼女を心配する態度に、失望して自ら命を絶ってしまう思いというものは、あまりにも純粋ではかないものでした。
9 涙そうそう
基本的にストーリーをとっても、セリフの一つ一つをとっても、ベタでくさいものです。ある意味それはこの手の作品では必要不可欠なもの。血のつながらない兄と妹という設定だけ聞けば、ある程度の展開は予想されますし、家を出て行った父親、年齢・学歴・家庭環境となにもかもつりあわない恋人(この”釣り合わなさ“は妻夫木と麻生のバランスの悪さで実によく現していたと思います)、ぎりぎりの生活、夢の挫折等々、悲劇に向かっていく材料はそろい過ぎるほどそろっています。これらによってストーリー的には退屈しないで観ることはできるので、あとはその材料をどう上手に料理するかということなのですが、そこがちょっと微妙な感じなのです。観ている者の精神状態や好みでどちらにも振れてしまうような危うい線なのですが、個人的には気持ちが入り込んでジーンとくるようなところらまではたどり着けませんでした。所々「くささ」が気になって、妙に冷めてしまったりして、気持ち的にもスクリーンの中に入ったり出たり。正直なところ、主演の二人、特に長澤の演技が、まだこういったくささをさりげなく見せるところにまでは追いついていない印象を受けました。
10 映画 兄に愛されすぎて困ってます
同居するかっこいい兄が実は血の繋がらない相手だった…まあ妄想の中で考えるようなことを、実際にお話にしてみましたというところです。ですから、あまりリアルにならないように、とにかく漫画チック映画チックに徹した演出が成されています。本当の高校生の女優さんが演じるとまた、暇そうなドクターとのドライブデートも眉をひそめたくなるところですが、実際には20歳を超えている俳優が演じることで、これは作り物だ、夢の世界だということが強調されているようでもあり、逆に安心感にもなっています。すべて作り物、妄想の世界ということであれば、これはこれでいいのではないでしょうか。
