松嶋菜々子 出演映画 ベスト10
キャリアのわりに映画との関わりは少なく、
作品を選んで出演しているような印象です。
1 祈りの幕が下りる時
本格的なミステリー映画として見ごたえのある作品でした。構図は結構複雑で、ともすると説明を急ぎすぎて観ている者がついていけないケースも多々あるのですが、二組の親子の絆のドラマを絡めながら、しっかりした組み立てで、観ている側にも伝わりやすいように組み立てられています。ともに母親が家を出ていく過去を持つ似た経歴の男女ですが、立場や残った父親との関係性は実に対照的。事件の全容が少しずつ明らかになるとともに、二組の親子の事情も次第に分かっていくような構成で、ぐいぐいとストーリーに引き込まれていきました。なかなかこうした本格的ミステリー映画で最近成功することが少ないのですが、加賀恭一郎シリーズ1作目に引き続いて今作も、面白くしかも心を揺さぶるような映画に仕上げてきたのはさすがです。松嶋菜々子はヒロインを務めます。
2 町田くんの世界
最後の風船をもって飛ぶ展開は、現実的な世界から急にファンタジーの世界に飛んでしまい、戸惑ってしまいましたが、それまでの展開は「恋って何?」「好きってどういうこと?」から始まり、先に恋心に気づいた女の子を男の子が追いかけるという展開で、純な青春ラブコメ映画をあじわうことができました。無名の新人二人を主役に抜擢しながら、脇役がとにかく主演級の俳優がずらり。しかも高校生の役にアラサーの男女がずらりと並び、このあたりは監督の遊び心にも感じられます。前田敦子、岩田剛典、高畑充希あたりは実にいい味を見せていました。自分よりも人のことばかりを優先させてしまう町田くんが、自分のことだけを考え始めた時が恋の始まり、ということで、初々しい二人をとにかく応援したくなるような、そんな映画でした。松嶋菜々子は妊娠中のお母さん役。
3 藁の盾 わらのたて
スピード感、スリルともあふれ、あっという間に最後まで見せてしまうエンタテイメント映画としては、見応えのある映画でした。自分の社会的な任務と、一個人としての感情の間に揺れながら、護送を続ける5人の思いが交錯し、一時も目が離せなかったです。一方でところどころで見られる荒っぽさが気になったのも事実。スケール感が大きい分、リアリティというところではどうしても緩くなってしまうのは仕方ないところではありますが、こんな言い方はしないだろう、こんな行動は普通しないよ、と思えてしまう部分が多々ありました。もちろん原作に起因する箇所もあったでしょうし、映画で表現するにあたって現れたところもあるでしょう。セリフのひとつひとつまでもう少し繊細に練っていたら、文句のない娯楽サスペンスになる可能性があったので、その点では惜しく思いました。良くも悪くも職業監督の三池さんらしいところでしたね。松嶋菜々子は警護専門のSP役。
4 恋と花火と観覧車
ちょっと息を抜いてほっとしたいときに観るに適した映画。松嶋菜々子と長塚恭介という、一見不釣合いで現実的でないような組み合わせですが、中年男から見ればこんな美しく若い女性に好かれることは、間違いなく自信に繋がってくるでしょう。ある意味お父さんたちがちょっとした夢を見られるようにというための映画だともいえると思います。
5 犬とあなたの物語 いぬのえいが
犬が共通しているだけで、長さもジャンルもばらばらという基本的なコンセプトは1作目と同様ですが、よりまとまりは良くなっていたと思います。全部で6話あるわけですが、それぞれに好きな作品が1つ2つあればというところではないでしょうか。私の好みとしては、中尾彬が本人役として登場したショートコント風の話と、高畑淳子の結婚式のこちらもコント風の作品。なかなかオムニバス映画で全部が全部いいということはないわけで、こんなものではないでしょうか。犬を飼う夫婦の妻を松嶋菜々子が演じています。
6 ホワイトアウト
冬山の中のダムを舞台に、テロリストたちと職員たちの息詰まる攻防を描くアクション・サスペンスです。それなりにスケール感はあるのですが、この他の作品はやはりハリウッドには叶わないわけで、その点が辛いところ。ヒロインの松嶋菜々子の銃を構える姿も印象的。
7 リング
松嶋菜々子主演。怖いというよりも不気味という印象が強いのですが、あとで続編どころかハリウッドのリメイクまで出来るほどの話題になるとは想像も出来なかったです。確かにそれまでのオカルトものとは違い、死という見えない恐怖が刻々と迫るスリル感と、古井戸に落とされたという不気味かつ非常な設定とがうまく交差し、独特の緊張感を醸し出しています。さらに「らせん」という併映作品とのつながりもまた「リング」という言葉に繋がってきて、以後の和製ホラー量産の火付けになっていくわけです。
8 眉山
愛の詰まった素晴らしいものだと思うのですが、2時間の間観ているものを惹きつける映画としての力を考えると、やや弱いような気がしました。すべてがどこか夢物語のような感覚に陥ってしまいます。もうひとつ、バリバリ働いているキャリアウーマンが、仕事を放り出して長期に休職をするということに対しまったく葛藤や困惑が描かれていないのも、いかがなものでしょうか。そのあたりの生活感といいますか、リアリティのようなものがどうも感じられず、作品の世界に入り込むことが出来ませんでした。娘役が松嶋菜々子。
9 犬神家の一族
キレの悪い冗漫な作品といわざるを得ないでしょう。最初から最後までメリハリがなく、また伏線の張り方・見せ方も下手で、初めて観る者でも大方展開が見えてしまいます。さらには、戦後間もない時代、都会から離れた場所にある世間から隔絶されたような資産家一族、そんなミステリーには絶好の材料も、あまり不気味さ・異様さが伝わって来ず、観ていていつの時代の話なのか、忘れてしまうほどでした。その中での豪華なキャスト、せっかくの俳優もきちんと生かされているとは正直思えません。岸部一徳、奥菜恵、深田恭子あたりははっきり言って出ているだけ。あまり重要な役どころでもなく、存在感の希薄さに持ち味が生かされないどころか、つぶされている感さや受けました。それから松嶋菜々子ですが、果たしてこの役に合っているか疑問です。現代劇ならともかく終戦直後という時代での結婚話ということ、とても絶世の美女だという設定を鑑みると、33歳の松嶋が適役とは思えません。そもそも主役に松嶋をというところからこの企画が始まったとききますから、その時点でどうだったのかなと思いました。
10 ゴースト もういちど抱きしめたい
せっかくの平井堅のムードあるテーマソングも空しく響く俗っぽい作品になり下がってしまいました。テレビドラマならともかく、映画としての出来栄えは非常に悪いです。その要因も一つ二つではありません。まずは二人の出会いからヒロインが命を落とすまでの展開があまりに陳腐。大会社の女社長さんとしてはあまりに行動が軽すぎますし、いかにも暇を持て余しているような感じで、リアリティが全くありません。脚本・演出ともに最悪です。その意味からすると松嶋菜々子も完全にミスキャスト。元々演技の上手な人ではないので、女社長になり切るには貫禄が無さすぎますし、逆に二人の出会いから結婚までの簡単すぎる流れをそれなりに見せるには、しっかりしているイメージが邪魔をしています。掴みの部分でひきつけることができませんでしたね。そしてスポットで出演するお笑いタレントのキャストもいただけません。完全にムードを壊してしまいます。
