●松岡錠司 監督映画 ベスト10 | 映画いろいろベスト10 + 似顔絵

映画いろいろベスト10 + 似顔絵

まったくの独断で選んだ映画10作品。
ペイントでの似顔絵もやっています。

松岡錠司 監督映画 ベスト10

 

多作な監督ではありませんが、

一作一作がしみじみと心に染み入る良い作品なのです。

 

1 さよなら、クロ

ノスタルジーあふれるムードの中、ピュアで悲しい三角関係の恋を描く青春映画。その傍らにいる犬のクロが微妙な位置で存在感を保っています。ありがちな設定ではあるものの、自分のせいで友人を死においやったと悲観する少女、傷をおったまま成長した10年後、2度とも救ってくれたのはその犬だったということなので、青春時代を共に過ごしたクロへの生徒たちの思いがあふれ出てきます。高校時代の、云いたくても言い出せない恋心を描写するシーンはありきたりな描写ではありますが、それ以上に10年越しで気持ちが伝わった二人の恋には応援をしたい気分になるのです。

 さよならクロ

 

2 東京タワー オカンとボクと、時々、オトン

まさにマザコン万歳!!です。多少怠けぐせはあっても優しい息子と、息子第一で自分の生活を捧げてきたオカン、その二人の関係が心に染み入ってくるような優しい映画です。息子に対し思いっきり愛情を注いで頑張ってきたオカンが年を取り次第に弱っていく中、それでも息子が活躍姿に喜び、息子のしてくれたことに嬉しがる姿。確かにこの映画の母と息子の関係は、平均的なそれよりは近いようには思います。反抗期らしい反抗期という描写もなく、独りで東京で暮らす息子に呼ばれ喜んで上京してくるオカン。しかしながら決して依存しきっているということではなく、要するに思いやりなのです。生き方には口出しせず好きなようにやらせる息子に対するオカンの思いやり、自分のために貯金もしないで遠いところにある学校に入れてくれたオカンに対する息子の思いやり、そんな思いやりが交錯しあい、この映画を優しさで包み込んでいるように思いました。

 東京タワー

 

3 アカシアの道

かなり重いテーマで、みていて辛くなるきつい映画。介護だけでも辛いのに、背負っている親子関係がかなり特異で、余計にこたえます。夏川と渡辺の演技も見事で、リアリティも充分。周りの社会の動きが少ない分、主人公の内面的な疲れが痛いほど伝わってきのした。その中で青年の存在だけで唯一の清涼感を与えてくれます。最初はぶっきらぼうながら、過去を背負う青年が、クライマックスに至るまでの道のりを主人公につけてくれた形になっています。認知症との親の向き合い方、そんなことを考えさせる作品でした。

 アカシアの道

 

4 映画 深夜食堂

マスター一人で自由に切り盛りしているこぢんまりとした店の雰囲気がスクリーンからもしっかり伝わってきて、自分もカウンターに座って深夜のひと時を過ごしているような雰囲気に浸ることができました。主として3つのエピソードと、それらを1本の映画として繋ぐ骨壺の存在。常連客の組み合わせがシーンごとに少しずつ変わって、それがまたリアルに感じられるのです。そこで繰り広げられるエピソードもまたそれぞれであり、そこへのマスターの関わり方の距離感がまた絶妙。味わいのある作品でした。

 映画深夜食堂

 

5 バタアシ金魚

思い込んだら一直線の主人公となかなか素直になれないヒロインの思春期特有の心の揺れを瑞々しく映し出している爽やかな青春映画。ラストの制服のままプールに飛び込んで思いを言い合うシーンは印象的。たどたどしさは拙さと捉えるか、新鮮さと捉えるか、主役の二人の演技はまだまだでありますが、それが飾りのなさに通じ、かえって好感が持てました。高岡早紀、筒井道隆、浅野忠信らの初々しく瑞々しい姿も印象的。

 

 

6 私たちが好きだったこと

15年の時間を経て観ると、とても懐かしい匂いのする作品と感じました。若い男女がちょっとしたことから一緒に暮らすようになるという設定自体には、そんなことあるかよと思ってしまうところはあるのですが、それも若いころの勢いと思うと、なんとなくそれも「あったかな」などという雰囲気になってしまうのですよね、頭の中が。25歳になってからの医大入試など、特殊な4人と言う感じはそこでも拭えませんが、ラストシーンで「すべて若い頃の思い出」で許せてしまうものなのですね。

私たちが好きだったこと 

 

7 スノープリンス 禁じられた恋のメロディ

今の時代にこんな物語が?とも思うのですが、「フランダースの犬」が時代を超えて愛されていることを考えると、いつの時代でもこういった悲しいお話が求められているのかもしれませんね。親のいない子、貧乏、大人に裂かれた恋、唯一の近親者の死…これでもかというほどの悲劇の材料を一人の少年に背負わせた、お涙頂戴のベタなストーリーを、素直に受け入れられるかどうかということなのでしょうね。貧乏な生活、北国の田舎というものを綺麗な映像として見せようとしたところに多少の無理はあったかもしれませんが、主演の男の子の健気な演技で救われていたように思います。

 

 

8 続・深夜食堂

マスターの作るシンプルな料理の数々が来店者たちを癒していく様子が今作でも綴られています。メニューはトン汁だけ、あとはどれだけ材料を仕入れているのか不思議なくらい、注文されたものが次々に出されていく。マスター自身は出すぎず引き過ぎずで、おせっかいになり過ぎることなく、一定の距離感を保っているのがなんとも心地よいです。むしろいろいろうるさいのは常連さんたちで、こんな場所があるとなんとなく癒されるだろうなと、羨ましくもなったりしました。

 

 

9 歓喜の歌

全体としてはハートウォーミングで、それでいてところどころクスクスとできる、温かい人情味のあるコメディになっています。志の輔の落語が原作ということで、ところどころ「うまい」というようなネタも

ありながら、登場人物も多くてキャストもなかなか豪華、そういう意味では安心して観られる作品といっていいでしょう。年末のコーラスグループのダブルブッキングから始まる騒動、離婚寸前の家庭、遊びにお金をつぎ込んだつけと、多重苦ににっちもさっちもいかなくなってしまった小林薫演じる主人公の情けなさと適当さが、どこか微笑ましく、しかも部下たちものんびりした者ばかり。肩の力を抜いて、気楽に観る分にはよろしい映画ですね。

歓喜の歌 

 

10 きらきらひかる

のちの「ハッシュ」に繋がるような同性愛カップルと女性一人の三角関係を描いた中にも瑞々しさがある作品。常に不機嫌な薬師丸ひろ子がそれまでのアイドル的イメージとは違う演技が印象的。

きらきらひかる