撮影所を舞台にした映画 ベスト10
映画の撮影所を舞台にした作品の特集です。
1 蒲田行進曲
京都撮影所を中心にした人情喜劇の傑作です。平田満の階段落ちのシーンはあまりに有名。。お人よしかと思えば酒の勢いに任せて激情に任せて暴れたり、喜怒哀楽がなんともいえず人間臭い平田満演じるヤスのキャラクターがとにかく魅力的。そこにある男としての意地が垣間見られ、ついつい引き込まれてしまいます。
2 キネマの天地
有森也実演じる新人女優と、渥美清演じる父親、そして映画に携わる人々との交流を描いた作品。、いろんな映画を見た後に松竹の撮影所を舞台にしたこの映画を観ると、映画に対する大きな愛が感じられてくるのです。特に渥美清演じる主人公有森也実(これがまた初々しい!)の父親の気持ちがとっても優しい!戦前当時に娘を女優にするということは、たいへんな思いのはずなのですが、それを健気に一生懸命心配し応援している姿は、可愛らしいとさえ思えてきます。そのほか監督から裏方から映画館主から皆が皆映画が好きで仕方ないという愛に満ち溢れ、さすが当時の松竹が全力を注ぎ込んだだけのことはあります。
3 スタア誕生
美しき夫婦愛を華やかな栄光とその対極にある挫折の対比によって描き出す、ミュージカル性の強いドラマです。夢見る娘が映画スターに見出されて看板女優にまで上り詰めて行く前半、そのスターと結婚するが上り詰めた妻とは逆に落ちぶれていく後半、まったく逆のカーブを描く夫と妻を見事な対比で描いています。しかしその中でも、自分を引き上げてくれた夫に対し、どんなに落ちぶれ醜態をさらしても愛で支え続けるけなげな姿が共感を呼びます。最後は悲劇的な結末が待っているのですが、気丈に人前に出て行く姿にまた感動を覚えます。ハリウッドの光と影をメインに打ち出してはいますが、その中で何があっても揺るがない夫への感謝と愛情を描くことで、ハリウッドらしい豪華絢爛なミュージカルとドラマが融合した作品に仕上がっていました。
4 映画女優
昭和の大女優田中絹代を吉永小百合が演じた伝記映画。吉永さんとはいえ、この役を演じることは吉永にとっては思い切った挑戦であったのではなかったでしょうか。不世出の先輩女優を熱演しているのが光ります。同時に日本の映画史もなぞり観られたようで、興味深い作品でもありました。
5 雨に唄えば
舞台はハリウッドのインペリアル撮影所。あまりに有名なミュージカルの名作です。ミュージカル全盛期の華やかなハリウッドの雰囲気が全面から伝わってきました。悪声女優の正体が明らかになる騒動をコミカルに描いた痛快な物語で、歌も踊りも美術もストーリーも、あらゆる面で楽しめます。
6 太秦ライムライト
有名な斬られ役福本清三そのものといえるベテラン斬られ役にスポットを当て、これからスターとなって駆けあがっていく女優と、俳優生活を追えようとする斬られ役との対比により、斬られ役としての沽券を描いた作品です。若い俳優とベテラン、新しい時代劇と昔ながらの時代劇、生まれるものと消えていくものを交錯させながら、古き良きものが消滅していく寂しさと、一方で伝統への敬意を感じさせてくれます。慣れないメインキャストと言う立場に福本さんもどこか居心地の悪さのようなものを感じているのではとも思うのですが、今まで陽のあたることがなかった人にスポットを当てるという意味では、素敵な企画だったと思います。
7 イナゴの日
1930年代のハリウッドを舞台に、美術部の青年、女優の卵、その父、彼女と奇妙な同棲をする男などの人間模様を描いた個性的な作品。クライマックスの大群のシーンは幻想的。
8 無問題
香港の撮影所でスタントマンとして仕事を得た岡村隆史演じる主人公の、アクションと恋愛を交えたコメディ映画です。ギャグもこてこてなのですが、岡村の抑え気味の演技が、なかなか好感が持てました。言葉の違いを無理しないで、上手に生かしていました。
9 アニタ・ユンのゴールデン・ガール
ありがちな三角関係の顛末ではありますが、舞台設定が1960年代の映画界というのが、なんともいえない洒落た雰囲気を醸し出しています。さらにカラフルな衣裳やセットが印象的。アニタ・ユンも貧乏時代から華やかなスター時代、さらには劇中映画の様々な役、ボーイッシュだったり、コケティッシュだったり、色んな表情を見せてくれて、ファンではなくても楽しい。
10 ベリッシマ
ローマ郊外のチネチッタ撮影所。親ばかの母親が娘を映画に出させようと躍起になる姿は、今と変わらないなぁと思ってみていましたところ、終盤は趣ががらりと変わり、笑われてまで娘を映画に出したくはないという微妙な親心が感じられ、ちょっとせつない気持ちに。映画に出そうとする心も、出したくないという心も子供可愛さゆえ。そんな親心にほろりとさせられました。
その他『ラストシーン』『今夜、ロマンス劇場で』『アンディ・ラウのスター伝説』が惜しくもランク外。