ティム・バートン 監督映画 ベスト10
ジョニー・デップ、ヘレナ・ボナム=カーターといった
お馴染みの常連俳優とのタッグが多い監督です。
独自な感覚によるSFファンタジー作品が得意で、
一風変わった登場人物がどの作品でも強く印象を残しますが、
それ以上に美術面での独特の色使いが、
特にこの監督らしさを表しているように思います。
大きく分けると原色使いがカラフルでキッチュな系統の作品と、
薄暗い映像でダークな世界を描いた作品とに分かれるでしょうか。
数あるヒット作、話題作から10本を選びました。
①マーズ・アタック!
コミカルでキッチュな快作。CG全盛の本格派SFが目立つ中、ちょっと人をコバかにしたようなユーモラスな作品を作り上げたバートンの世界を満喫出来ます。どこまで本気でこれを作っているのか、とにかく娯楽と笑いに徹した異色のSF映画は、ほかの作家では到底真似の出来ないような代物。しかも豪華キャストも馬鹿馬鹿しさを楽しんでいるようで、これもまた愉快。
②スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師
このダークでブラックな世界は、まさに ティム・バートンの面目躍如というところでしょうか。復讐を目論んだジョニー・デップ演じる主人公スウィーニー・トッドが、いつの間にか無関係の人たちにも手をかけ始め、どんどんエスカレートしていく様子は、ホラー映画的でもあり、観ていてゾクゾクします。映像にも工夫を加え、最初から最後までおどろおどろしい暗闇の中にいるような感覚を与え、そのことが最後の最後にばっちり生きてくるというのも心憎い演出。
③PLANET OF THE APES/猿の惑星
ティム・バートン流に有名な『猿の惑星』をアレンジしたSF映画。バートンとしては、わりと正攻法で作られた映画だと思います。猿と人間の支配のどっちが先かという展開の中で、オーソドックスながら『猿の惑星』であることを外さないラストには、やはりそう来たか、でした。
④チャーリーとチョコレート工場
おとぎ話のような世界が展開されるかと思いきや、単なるおとぎ話だけでは終わらないティム・バートンらしい世界が繰り広げられ、思った以上に毒の強い作品になっています。ファンタジーではあるし、子供が見ることも意識して道徳的な教訓も込められていたりするのですが、その見せ方が思った以上にシニカル。そしてジョニー・デップがピタリと役にはまっている。こんな楽しそうなデップもあまり見られないほど、生き生きしているように見えました。色使いもらしさ全開。
⑤スリーピー・ホロウ
1799年を舞台に、首なし連続殺人事件の謎を描いたゴシックホラー・サスペンス。雰囲気はダークですが、娯楽作としてはわりと素直に楽しめる作品です。ジョニー・デップをうまく使っていますし、クリスティーナ・リッチも映画の雰囲気にぴたりとはまっています。
⑥ティム・バートンのコープスブライド
バートンの挑んだアニメ映画。ちょっと気持ち悪いという部分はありますが、そこはティム・バートン一筋縄ではしかない。しかしながら物語のほうはわりと素直で、最後は正と悪がきちんと分けられ、悪いものは悲惨な目に、正しいものは幸せになるといった昔話のような分かりやすく終わってくれます。その点ではバートンとしてはやや毒も薄めといったところでしょうか。ミュージカル的な演出もふんだんに使い、彼ならではの遊び心も満載。1時間17分という長さが気にいりました。
⑦エド・ウッド
カルトな世界ですが、独特の映画観を持つウッドの撮影シーンは、映画好きなら楽しめるのでは。逆に言えば、一般大衆受けするような作品ではないとも言えるのですが、ティム・バートンらしさもそこに現れているように思うのです。モノクロの世界も、実際の時代以上に古さを感じさせるのですが、それがノスタルジーを呼び起こすようでもあり、この作品の特有のムードとなって結びついています。
⑧シザーハンズ
ティム・バートンの異能ぶりが発揮されている典型的作品。あまりに奇想天外な設定、一方でそこに恋する切なさを真面目に描き、ジョニー・デップとウィノナ・ライダーのカップルも話題に。愛する人を抱きしめることもできない自分の体に気持ちを持て余してしまう、その切なさを独特のポーカーフェイスで表現しているのがいいですね。一方その切なさとはまるでそぐわないような原色のカラフルな色使いがまたバートン独特の感覚。
⑨ダーク・シャドウ
壮大な時間を経ての復讐劇にスケール感を期待したものの、話が進むにしたがって構造が単純化・陳腐化してしまい、奇想天外な設定や凝ったセットやメイクを生かし切れませんでした。バートンとデップとカーターの組み合わせにも少々飽きがきてしまったのも一因でしょうか、作品が違っても似た匂いがして、新鮮味が薄れてしまったように思います。バートンの作り出す色がどの作品も似ているので、それを同じ俳優が演じれば、さらに似てしまうのも当然のこと。既視感をぬぐえず、後半は退屈してしまいました。
⑩ビッグ・フィッシュ
ファンタジーっぽい幻想的なシーンをふんだんに空想シーンで使い、ロマンティックでファンタジックなムードをかもし出していますが、本質は親子の心の通い合いがテーマ。バートンらしくない(?)真面目な作品で、俳優陣もなかなか多彩。そのわりにいまひとつ乗り切れない部分があるのは、やはり映画全体の山場といえるようなシーンがないからか。次々と出てくるエピソードはどれも横並び。