緒形直人 出演映画 ベスト10
二世俳優の一人ですが、父親が偉大だったために、
やっぱり比べられることも多くなってしまうでしょう。
ただキャラクターは、豪放磊落なイメージの父親とは全く違い、
どこか繊細でナイーブな雰囲気のある俳優さんです。
拳さんに比べ、映画との関わりは少ないですが、
それでもキャリアも長くなりましたので、
今回取り上げてみました。
①深紅
成長した殺人事件の加害者の娘と被害者の娘が出会う…。そんな緊張感がピーンと伝わってくる、見応えのある心理ドラマです。互いに表面的に見せる顔とは別の、心の裏側で交錯する複雑な思いの探り合いがなんともいえないスリルを醸し出しています。。2人の心理的なやりとりの間に、12年前の真実を併行して事実を小出しに見せていく構成はなかなか心憎く、2人の娘の心理的な揺れを表現するために効果的でした。そしてラストシーンもしゃれています。緒形直人は殺人を犯す父親役で出演。ただ、年齢設定に無理がありましたけれど…
②陽はまた昇る
ビデオの企画をめぐる家電メーカーの開発争いを描いた企業ドラマです。結果については誰もが知っている話なので、そのプロセスをどう見せるかということでしたが、テンポも良く、無駄も少ない作りで、飽きさせないものになっていました。 クライマックスは、自分がもしこんな風にされたらやっぱり泣いてしまうだろうなという心憎い演出。全体としても安心して見られる作品に仕上がっていて好感が持てました。システム開発課の社員を緒形直人氏が演じています。
③優駿 ORACIŌN
いわゆる難病もので、病気の治療と馬へ賭けた夢とを重ね合わせたオーソドックスなストーリーです。複雑な事情をそれぞれが抱えた中で、馬へ託した思いが重ねあっていくところに、馬を育てることの素晴らしさを感じることが出来ました。宮本輝の小説らしい実直なストーリーです。斉藤由貴と緒形直人の初々しく透明感ある演技が印象的。親子共演も果たす。
④ＳＰＡＣＥ ＢＡＴＴＬＥＳＨＩＰ ヤマト
宇宙戦艦ヤマトの実写版として話題になった邦画では目地らしい本格的ＳＦ映画。ただあまりに原作が偉大すぎたせいか、または下手なものは作れないというプレッシャーからか、無難なエンターテイメント作品に落ち着いてしまった印象です。まずは映像的に恥ずかしくないものを作ろうとして、それ以外の部分がありきたりになってしまったのは残念です。特にクライマックスの緊迫感があるべきシーンで時間を無駄に費やして、地球が危機であるという焦燥感が全く伝わらなくなってしまったのがもったいないところです。前半は悪くはなかったのですが、後半になって変にドラマを強調しすぎて間延びしてしまいましたね。緒形直人さんは島大介役。
⑤遺体 明日への十日間
東日本大震災直後の遺体安置所を舞台に、そこで繰り広げられた知られざるドラマを描いた作品です。あの現場で実際にどんなことが行われ、どんな会話がなされていたかを、実際の記録映像がない代わりに、俳優の演技を使って世の中に知らしめることで、観た人にそれぞれ何かを感じ取ってほしいということ、それだけでこの映画を送り出したような気がします。自分の住む場所や食べるもの、親しい人のの安否もままならない状況で、被害にあわれた人々のことを優先に働き続けなければならなかった市の職員、医療従事者の方々の姿に、もしも自分がその立場だったら同じことが自分にできるか、そんな思いでこの映画を観ていました。緒形氏は葬祭会社の社員役。
⑥北辰斜にさすところ
日本版「フィールド・オブ・ドリームス」的な雰囲気のあるヒューマンドラマ。戦前の学生野球でエースとして鳴らした三國連太郎演じる主人公の回想と、戦後60年経って行われる同窓会を控えた今を交錯させながら、戦争が落とした影を描き出しています。緒形直人は応援団長の生徒役。
⑦きけ、わだつみの声
時代のせいで否応がなく軍隊の中で青春を過ごさないといけなかった太平洋戦時下の若者たちを描いた緒形直人主演の戦争映画です。当時若手売出し中の仲村トオル、織田裕二、風間トオル、的場浩二と錚々たるメンバーなのですが、深くまでえぐって描ききれなかったのは残念。ただ、こういった若者がたくさんいることを、我々は伝えていかなければならないというのはひしひしと伝わってきました。
⑧火天の城
安土城の築城をめぐるドラマを描いたスケール感のある「はずの」時代劇ではありますが、又右衛門の優れた棟梁ぶりを知らせたかったのか、この時代に巨大な城を築くための人々の苦労を描きたかったのか、巨大な建築物を再現することでその壮大さを映像で見せたかったのか、あるいは又右衛門と家族や仲間との交流をメインにすえたかったのか、作り手の意図がはたしてどの辺りにあるのか、それがうまく伝わってこなかったです。緒形直人は木こりの長の役。
⑨郡上一揆
緒形直人主演、江戸時代宝暦年間、厳しい年貢の取り立てに対し、藩と激突して倒れていく農民たちの苦悩と闘いを描いた時代劇です。ただあまりに堅すぎて、映画としての面白味に欠けるのが難点。
⑩北京原人 Who are you?
珍作映画として今でも語りつがれている作品で、主演を務めたのが緒形さん。最初から最後まで原人に扮した本田博太郎の姿に哀愁を感じてしまいますし、名女優片岡礼子の無駄脱ぎにも涙。まあ、ここまでへんてこりんであれば、これはこれで価値ある作品だとも思いますけれど…
