戦争映画 ベスト10
久しぶりのジャンル企画。
一口に戦争映画といってもその幅は広く、
主張を込めた反戦映画から娯楽系の戦争アクション映画、
戦時下におけるプロパガンダ的な戦意高揚映画まで
幅広い内容になっています。
そんな多くの中から私の観た作品の10本を選んでみました。
とはいってもあまりにも数が多いので候補を探すのも大変。
とりあえず、印象に残っているものを中心に選びました。
①つばさ
1927年のサイレント映画ですが、これがなかなかダイナミックでドラマティックな作品でびっくりしました。戦争ドラマと簡単に書いてしまいましたが、ロマンス映画であり、青春友情映画であり、航空アクション映画でありと色んな要素が入り混じった壮大な娯楽作品になっているのです。迫力のある空中戦はこの時代にどうやって撮影したかと思われるシーンもあり、また泡をアニメーションを使って幻想的に表現、クララ・ボウの色っぽいシーンまでサービスし、まさにあらゆる要素を詰め込んでいます。ヒロインが片想いの彼を追いかけるシーンではコミカルタッチで描き、しかし要所要所ではドラマを盛り立てる演出と、なかなか凝っています。記念すべき第1回アカデミー作品賞受賞作品。
②ブラザーフッド
朝鮮戦争を舞台に敵味方で分かれて戦うことになった兄弟を描いた韓国映画。ドラマティックな展開、戦闘シーンも生々しくリアリティを可能な限り追求、しかも社会的な背景による悲劇も用意されていて、誰が観てもお腹いっぱいになりそうなボリューム感のある作品になっています。特にチャン・ドンゴンの鬼気迫る演技は目を見張るものがありました。
③麦の穂をゆらす風
アイルランド独立戦争を描くこの作品、決して派手な戦闘シーンを見せ場とする作品ではないのですが、戦争というものがいかに無為で残酷なものであるかをひしひしと伝えてくれます。自由を得るため、貧民を救うため、そういった大義名分の下、独立に向かって戦いに加わっていく主人公兄弟なのですが、やがては味方同士で意見が割れ、最後にじつにやるせない悲劇的な結末が待っているのです。誰も望んでそうしているわけではないのに、否応がなく悲惨な方へ悲惨な方へと突き進んでいく彼ら。それもこれも、戦争という異常なまでに高揚した特殊な状況がそうさせているにほかないでしょう。
④グローリー
南北戦争を描いた作品。人種差別の問題もはらみながら、玉砕を覚悟に戦いに望む黒人舞台とそれを指揮する白人青年が一体感を生むまでの過程を、音楽を有効に使いながらドラマティックに描かれています。悲しいはずだが、悲しさを感じさせない、どこかすがすがしさを覚えるタイプの戦争映画です。
⑤ブラックホークダウン
ソマリアが舞台。一人一人の人物をクローズアップさせて情感に訴えるでもなし、必要以上に正義を振りかざした会話がなされるでもなし、とにかくリアリティを一番に追求していった成果が見られる作品になっている。それだけにかえって戦争のリアルな悲惨さや無毛さが伝わってくるのです。
⑥あゝひめゆりの塔
邦画でも数多くの戦争映画は作られていますが、その中から沖縄での女子学生たちの悲劇を描いたこの作品を選択。壮絶な時代に身をおいた彼女たちは、いったい何を信じ生きていたのだろうか。あまりにもつら過ぎる結末。
⑦アルジェの戦い
ドキュメンタリータッチで、映像も生々しくアルジェリアの独立内戦を描いた意欲作。とにかくリアルで、これが実際に行われていたことだと思うと、背筋が凍る思い。しかしそれだけ独立に対する庶民の思いの強さというものも強く感じるわけでもある。
⑧硫黄島からの手紙
いうまでもなく、硫黄島での日本軍の最後の抵抗を描いたクリント・イーストウッド監督による力作。兵士に対して一定の距離を置いた淡々とした撮り方、それでいて戦って死んでいった日本兵への敬意を忘れない、外国人ならではの距離感が印象的です。
⑨地下水道
地下水道に閉じ込められて、出口を探して悪臭の中でもがくレジスタンスたちの最後の生への執着がひしひしと伝わってきて、緊張感のある映像になっています。空しい結末に向けて、それぞれが最後の力を絞ってあがくのだが、待っているものは絶望。さすがにモノクロでは地下のシーンは暗すぎて分かりにくい部分もあるのですが、その暗さこそが出口の見えないレジスタンスたちの心境を表している効果も出しているのです。光が見え一瞬の希望が芽生えた瞬間にどん底に突き落とされるそれぞれのラストが切ない。
⑩プライベート・ライアン
この作品の後、同様の撮り方で作られたような作品が増えてきたように思います。その意味では影響力の大きい戦争映画ではなかったでしょうか。リアルな映像、無駄な演出の排除、乾いた空気感。しかしそこから伝わってくるのも多かったです。ただ一人の兵士を戦地から救う任務のために戦う彼らに、複雑な思いで観ていたことを思い出します。