ニシくんは大人しい。穏やか。
でも、はっきりと自分の気持ちを伝えることができる。言葉に表すことができる。イチくんや大人に対して、ちゃんと説明できる。
今日、保育園のお兄ちゃんがニシくんのことを可愛がっていた。
ニコニコして「ニシくーん」と言いながら、ほっぺたをぶにゅーっとしていた。
ニシくんは真顔だった。
ん? 嫌そうだな。
その後、ぎゅっとハグしながら持ち上げた。
側から見ると大きい子が小さい子を抱っこしてて微笑ましい姿。
ニシくんは真顔。
本気で嫌なんだな。
「ニシくん、ばいばーい!」
と手を振って去っていこうとしたお兄ちゃんにバイバイではなくフンと小さく顔を背けた。
「ねえ、ニシくん。あのお兄ちゃんにぎゅーされて嬉しい?」
「嫌」
「抱っこされて嬉しい?」
「嫌」
「嫌だーて言える?」
「言えない」
「ニシくんはぎゅーってするの嫌みたいなん。やめてあげてくれるかな?」と伝えた。お兄ちゃんは一瞬、神妙な顔をしたが走り去っていった。
顔が固かったニシくんは、その後、いつものニシくんに戻った。
そして、家に帰ったとき急に泣き出した。数回、泣いた。
あのお兄ちゃんが嫌いなこと。
他のお友達にトミカを取られたこと。
先生には言えなかったこと。
来週、先生に言おう。