本文中にあります「※1〜※9」に関しては「つんく♂のこだわり視点」と題しまして、つんく♂noteの定期マガジン購読者限定でこだわり部分の解説をしております。ご興味のある方はぜひ、そちらもお楽しみください!

【ライナーノーツ つんく♂note定期マガジン購読者限定のこだわり視点版の前編はこちら】

 

====================

 

 

ようやくモーニング娘。の16枚目のアルバムが完成しました。

 

アルバムを作れるというこの多幸感。過去を振り返っていろんなメンバーがいましたが、どのメンバーが欠けても今のモーニング娘。は存在しなかったわけです。

 

そういった意味で、現メンバーは先輩へのリスペクト感をしっかり感じて、今後も成長していくべきだと思います。

 

しかし、時折話しますが、OGメンバーも(これは僕もスタッフらも)現メンバーがいるから、現メンバーがこうやって歌ってくれているから、「モーニング娘。」というブランドが他のアイドルに負けない老舗ブランドとなっていることを、忘れてはならない現実として、最初に話しておきたいと思います。

 

そう、道重さゆみがモーニング娘。に在籍してた期間が12年弱ということで、当時、僕としても相当「すご〜い」「なが〜い!」って思ってました。いや、当然長いんです。長いんですが、現モーニング娘。の9期10期あたりも、もはや10年選手。 ※1

 

一般的にいう「アイドル」として本当に10年続けるって、まじすごいし、まじ尊敬する。

 

自分がどんなに続けたくたって、事故や怪我、病気に巻き込まれることもあるし、恋愛云々で居られなくなったり、芸能界そのものが変化してしまって、それどころじゃ無かったりとか。 いわゆる落とし穴が満載なのに、今日までピュアな感性を持ったまま10年とかやれてるのは、まじリスペクトであるわけです。

 

さて、ではそんな老舗ブランド「モーニング娘。」の16枚目のアルバムの中身を解説していきたいと思います。

 

まずはタイトル。タイトルに関しては裏に何か意味があるとかもないですし、説明することもないでしょうが、日本のガールズボーカルグループとしても胸を張って「私たちの歌がまさにJ-POPでございますが、なにか?」と、こんな気持ちでつけさせていただきました。

 

アルバム発売発表時のつんく♂コメントはこちら

 

 

1. 愛してナンが悪い!? [新録]

さて、アルバムの1曲目としてどんな曲を持ってこようか迷うわけです。

 

シングル的な存在でもなく、カップリング的な存在ではなく、トッピング的な要素でもなく、やはり「今」の「核」となるべく存在。

 

そういう意味でこの曲は今のモーニング娘。を表現するにふさわしいと思っています。

 

前書きにもあえて「アイドル」という言葉を使いましたが、創設以来ずっと僕が言っているのは、「アイドル」というのは「結果」であって、作るものではないということ。

 

「天才」とか「スター」と同じで、結果他人からそう評されるもので自称するものではないとそう考えてきました。

 

なので、僕が作ってきた「モーニング娘。」というサウンドはアイドルを表現するものではなく、その時点での僕が作る最高の創作物であるということ。

 

その時に在籍しているメンバーと、その時の僕の感性と、その時に関わる制作スタッフの手腕が、重なりあって奏でるハーモニーのようなものである。僕はそう思ってます。 ※2

 

楽曲として超アッパーでもなく、スローとかミディアムという表現でもないこの曲。大人数でフォーメーションを作ってダンスパフォーマンスするにはもってこいの曲だと思われます。

 

「愛して何が悪い」というセンテンスに全メッセージを込めてあります。

 

この場合の「愛」は恋愛対象に関してもそうですが、自己愛といいますか、他人に対しても同じく「無関心、無感情であってはならない」「もっと自分を愛しなさい」という気持ちを込めています。

 

さらに深い意味で大事なことは、2番の締めくくりに書いてある「常識は非常識」ということ。

 

コロナ以降、いろんな意味での常識が変わってしまいました。なんだったら180度変わってしまったようなものもたくさんあるでしょう。

 

エンタメの世界で言えば、今までなら詰め詰めギューギューだから面白いとされてたライブハウスなんかも、それが一番いけないものになってしまったり。タレントもテレビより先にYouTubeでなにをするか、みたいな。どっちがメインがわからなくなるほど、入れ替わってしまいました。

 

そういうものに敏感であることも大事だけど、モーニング娘。として、ドンと構えて「私たちはブレません」というような、そういう面を多いに持っていてほしいという僕からの彼女たちやファンの皆さんへのメッセージでもあります。

 

周りに引っ張られるなよ! みたいなね。 ※3

 

「さあ、目指せ」からのブロックをいかに力強く表現するか。これがコロナ以降のライブパフォーマンスとしては肝です。ユニゾン的にがっちり一丸となって素敵なパフォーマンスをしてほしいです。

 

2. ギューされたいだけなのに

<2020.12.16 69枚目SG>

ライナーノーツを書いた時にも少々賑わいましたが、ウサギちゃんシンドロームな曲です。

 

「ギューされたいだけなのに」とか、「私が言う前に抱きしめなきゃね」のようなメッセージって、恋愛にたとえて歌詞に書いていますが、仕事してても、生きてても同じです。なぞなぞの答えを聞いたら「あ〜、そういうことね」みたいな「そんなん誰でもわかるやん!」みたいな問題ってこの世にたくさんあると思うけど、やっぱ、その答えを聞く前に動ける人が仕事でも成功する人なわけで。誰かがインターネットでの通販始めて成功したってのを知って、追っかけるのは出来るけど、最初にこれが成功する!って気がつくのってそう簡単ではないわけですね。「楽天」しかり「Amazon」しかり、やっぱすごいわ。って思うもん。

 

つまりは、この視点で誰かが何かを始める前(言う前)に動けたら勝つのではないでしょうか(あ、俺もやけどね)。

 

シングル発売当時のセルフライナーノーツはこちら

 

 

 

3. 信じるしか!

(歌唱:生田、石田、小田、加賀、森戸、岡村) [新録]

現在のモーニング娘。を3つに分けたうちのひとつです。もはや、生田が大先輩、石田、小田と続くわけですが、こうやって見ると先輩たちみんな立派になったし、頼りになりますね。

 

人数が少ない分、パフォーマンス時にどう動くかも、よくよく考えながら作っていかなければなりません。

 

1番の「ヒントが隠れてる」を細かくひとり1文字くらいで歌割りをしていますが、こういうのってレコーディングや声の編集をしている時はそれなりに楽しいんです。でも、実際にライブで表現するとなるとなかなか面倒。それでも、この6人みんなで仕上げていく感を出すには、こういう目まぐるしい展開が肝になってくるわけです。

 

歌詞ではつんく♂らしいことを、あーだこーだ話しています。特に思うのは、タダより高いものはないってとこ。ことわざじゃないけど、本当にそう思うから。

 

それでも人間、他人のことは「あいつはこんな事が出来てない」とか「あの人は陰口ばかり言う」と陰口を言ったりしますが、この曲で、このメンバー一斉に歌ってほしい部分は最後の2行です。

 

1番の強敵は 

皆が知ってる最強のカワイイ私

 

生田を先頭に、このメンバー、みんなそれぞれが、「私が最強だべ!」って思っててほしいんです。まあ、思ってる人もすでにいるんですが……。

 

このメンバーで最後のこれを歌ってくれるから、心より愛おしい〜! って思えちゃんですね。 ※4

 

4. TIME IS MONEY!

(歌唱:佐藤、野中、横山、山﨑) [新録]

2020年の夏が終わる頃に書き上げた曲です。

その頃、流石の僕も時代の波に押し流されそうになるような感覚で、ちょっと焦ったというか、作品を作るにしても、エンタメチームを動かすにしても「早く!早く!」って思ってたのは事実です。

 

ハワイへの直行便が飛ばなかったのもあって、春から長らく日本で滞在しました。8月になってようやくロス経由でハワイに移動したんですが、そこから2週間の完全隔離。スーパーや病院に行くことも不可という徹底ぶり。通販と友人に食料を届けてもらうしかない現実の中で、身動きの取れない実体験から生まれたように思います。

 

歌唱は4名ですが、しっかりした太い歌声に仕上がりました。

 

親やマネージャー、濃いファンの皆さんから「こないだトークダメダメだったよね」とか「あなた、もっと普段着をこうしなきゃダメでしょ」みたいに、事細かくヤイヤイ言われると「うっさいな。わかってるしほっといて」ってなるんですが、新しい服買ったり、メイクや髪型変えた時、誰もそれについてコメントしてくれない時や、「あ、こいつ、わかってるのに気が付かないフリしやがった」みたいな時って、ムカッてくるでしょ!? そういう曲です(笑)。

 

まあ、そういう承認欲求の裏表の歌なんですが、サビは掛け合いの歌詞になっているので、縦に読んでいくと「時間を守れよ」って話かな!?って思う人もいるかもしれませんが、そういうことでなく、私を守ってよってお話。

つまり、こういう時間軸です。

 

 

歌詞の意味的には

 

私とあなたのこの道のり。

今ならまだ修正が効くよ。間に合うよ。

今だよ、最後のチャンスだよ。

さあ、手を差し伸べて、私を守ってよ。

 

って意味ですので。

もしかしたらメンバーもまだ読み違えてる人がいたら嫌だなって思ったので、あえてここに記しておきますね。  ※5

 

1番は、あなたに対して、ハッパをかけるようなり内容で、最終的には私を守ってと言ってるのに対して、2番になるともっと寛大になって、とにかく戦ってみなさい。失敗しても私が居るでしょ、安心して。という立ち位置に変わります。

 

この心の動きがあった上で、もう一度1番の歌詞を歌う。その時の主人公の立ち位置が1番の時と少し違うの、なんとなくわかりますか!? ※6

 

5. 泣き虫My Dream [新録]

さて、実はこの曲、アルバム全曲の中で一番最後に書いた曲なんです。

 

アルバムとして、すべきこと出揃えたつもりで仕上げに取り掛かってたんですが、曲順決めたり、タイトル決めるために、曲を並べて聴いていると「あれ?何かが足らんなぁ……」そう思えてきました。その時点から数曲書き足してみたんです。

 

アルバムの曲数的には十分足りていたので、曲を増やすとなると予算が嵩むだけで好ましくなかったのかもしれませんが、西口社長的にも「バラード的な、ぐっと心から入り込める曲ならぜひほしい」というバックアップもあって。では、1曲に絞りこんでライブでも有効的なポジションで輝きそうな曲として、この曲を仕上げていくことにしました。

 

思えば有名になりたい、芸能人として成功したい!って、「孤独と戦うこと」がテーマなわけです。

 

僕も小学生の頃のクラスの「おちゃらけもん」だったあの頃の方が断然友達が多く、その後デビューし、ヒット曲に恵まれ、モーニング娘。を作り出し、なんだかんだと順風満帆だったわけですが、それに準じて伴うのが孤独感との戦いでした。 ※7

 

大人な僕でも、大変な孤独との戦いです。

 

10代でぶつかる孤独の壁は単なる頑張りだけでは乗り越えられません。プライドとか愛とか使命感とか、いろんな物が折り重なってようやく踏ん張ってられているように思います。

 

最近、noteやサロンで対談した譜久村や石田からもやはり感じます。戦ってるなぁ〜って。25年という歴史あるブランドを背負って戦ってる。そう思いました。

 

この曲はそういう戦士たちに対して、時には「泣き虫」でいい。今はまだ途中だろうけど、その夢信じて。自分が「泣き虫」であることを認めて、そして隠す必要は無い、そういうことを伝えたかったのだと思います。

 

この曲がこのアルバムに入ったこと、何より感謝感激しております。

 

6. 二人はアベコベ

(歌唱:譜久村、牧野、羽賀、北川) [新録]

15期とのnote討論会の中で、「ピョコピョコ ウルトラ」のようなかわいい曲って話が出てましたが、そのニュアンスに一番近いのがこの曲かな。

 

気に入ってます。ファーストやセカンドアルバムの頃にたくさん散りばめてたこのあたりのエッセンスってとても大事で、こういうエッセンスがあるから「男前曲」が目立ったり、「パーティーソング」が盛り上がったりするわけで、もちろん単体で聴いてもテンションが小上がりする曲なわけです。

 

これがもしシングル曲で中期あたりのモーニング娘。の歌割りなら、

A:二人はアベコベ

B:好みが違うし

C:時間感覚もね

 

と、1行ずつ歌割りしたはずです。歌唱力の問題も含めて、ひとりで長く歌えば歌うほど、ボロも出るし、どんどんメンバーの顔も見たいし。

 

ですが、 参加メンバー4人ということ。

それぞれの歌唱力も充分楽しめる力量であるということ。

アルバムとしての意義。

この作品のポジション。

など、総合的に判断して、特にAメロはたっぷり歌ってもらうことにしました。

 

4人の個性が出ています。特に羽賀や牧野のモーニング娘。中堅組がとても落ち着いた歌声で、自分の魅力を引っ張り上げています。

 

その1番の歌声たちに、マウントを取るかのように2番の譜久村のAメロのプロたる貫禄。「うまい!」といいたくなる場面です。

 

そして、最後に登場する北川。ここまでの先輩たちの出方を見てのカウンターパンチというべきでしょうか。ビブラートも使い、音符のキレ味もいい。今後が期待出来る。うん、いい!

 

こんな風にそれぞれが個性的なニュアンスを出せるようになってるのがわかる作品。こういうのもアルバム曲があるから、彼女たちの魅力のアピールにつながるなって改めて思いました。 ※8

 

歌詞に関しては、読んでいただければ大抵ご理解いただける難しくない内容だとは思いますが、結局、何かと合わない人の方が興味の対象ってあるでしょ!?本気で会いたくないほど性格が合わない人もいるだろうけど、それ以上に、話してて面白いほどに反対の感性を持ってる人って飽きないっていうかさ。気がついたらずっとその人を考えてる的な。

 

食事しながらでも、長距離で電車に乗ってても、夜中電話してても、会話が途切れないくらい言い合いが出来るってある種幸せだよね。で、ときに「え!?一緒だ!」なんて感じになるとそれはそれで盛り上がったりね。

 

この4人はどんな個性のぶつかり合いか、要チェックです!

 

7. 純情エビデンス  

<2020.12.16 69枚目Sg>

当時、「妹」とか「ニキビ」と歌詞の部分的な点が取り上げられたりしたけど、今、改めて聴き直すと、やはりシングルとしての強さがあって、強いメッセージを込めてあるなと自分で再確認しました。

 

この歌詞を書いたのはコロナが世界中に広まり始める直前でしたので、緊急事態宣言や自宅待機要請が出たから書いたのではなく、きっとその時点で僕がその世の中での動きづらさを感じていたからだと振り返ります。

 

モーニング娘。という老舗のブランド力を背負い続けるという難しさの中で「シングル曲を作るということ」に僕自身ももがき苦しんでるのがよくわかります。でも、だからこそ深いメッセージを入れ込めるわけです。

 

音楽を愛する、ステージを愛するものとしての純粋な気持ちに嘘はない!というメンバーと僕ら制作側の念書のような、そんな気持ちであることをファンの皆さんに届ける大事な役割がこのシングル曲にはあるのだということを改めてお伝えしたいと思います。 ※9

 

シングル発売当時のセルフライナーノーツはこちら

 

 

 

====================


【ライナーノーツつんく♂note定期マガジン購読者限定のこだわり視点版の前編はこちら】

 

アルバム「16th~That's J-POP~」情報はこちら