「戦争」
その島国は、暖流も寒流も流れているので、色んな魚が取れる。
山と川に恵まれ、四季もあるから、木の実も果物も育つ。
平地は水田に適していて、加工を必要としない米が取れる。
米を食べると、代謝が上がり、体温が上昇し、
免疫機能も活性化する。善玉菌の大好物でもある。
奇跡の食材だ。
勤勉で親切で、寛容な民族。
同民族国家で、何千年も続いた唯一の国。
欲さえ出さなければ、自国だけで成り立つ国。
こんな国を悪魔がほっとくわけがない。
まず欲をあおる。権力の喜びを教える。
移民を受け入れさせ、外資が参入し、利権が飛び交う。
必要のないものを入れ、必要なものを失くし続けさせた。
気がついたら、輸入なしでは生きていけない国と化していた。
国のエネルギーが危ない。食糧が足りない。
これ以上なすがままにされていたら、植民地になってしまう。
戦うしかない。
なんで、こんな才能のあるいい人たちを戦場に送るんですか。
あなたが行きなさい。
なんで国のために、平和を愛する人たちの命を奪うのですか。
捕虜になったっていいから、うちの息子を殺させないで。
一生あんな奴らの言いなりになって生きるのか。
国がなくなったら意味なんてないだろう。
今までの生活を守るには、戦うしかないんだ。
これが「戦争」です。
「平和」
十人の荒くれ者が、五人家族の家に押し入ってきた。
金品を一通り盗んだあと、頭の男の目が娘にいった。
いい女だ。覆いかぶさる男。激しく抵抗する娘。
暴れるな、一回やったら出て行く。
命まで取る気はねえ。いいからやらせろ。
やらせないなら、お前ら五人とも殺していく。
やらせたら殺さない。
お前らに言っとく。
うちの兄貴は嘘だけはつかない。
約束は守る。出来ない約束はしない。
生かすと言ったら生かす。殺すと言ったら殺す。
お前ら、信じたほうがいい。
なあ、たった一日のことだ。
終われば、忘れりゃいいだけだ。
死んだら何もかも終わりだぞ。言うことを聞け。
わかった。
洋子がまんしてくれ。一回だけだ。
みんな殺されるよりは、ましだ。
わかったわ。それでみんなが助かるなら。
娘は犯されました。五人の命は無事でした。
これが「平和」です。