スフレ小さな旅 | つなさん夫婦ニカラグア・セントルシア

つなさん夫婦ニカラグア・セントルシア

全盲の鍼灸マッサージ師の夫とそれを支える妻のブログ。

盲学校を退職後、シニアボランティアとしてニカラグアとセントルシアの医療活動を支援しています。
現地での異文化体験を、夫婦で発信していきます!

63. スフレ小さな旅

 

指圧臨床講座の研修生ガビーさんは毎日スフレからバス通勤しています。

スフレと首都のカストリーズまではピンカーブの多い山道をいくつも超え、

1時間半近くかかる距離を雨の日も風の日も無欠席で1年以上通っています。

ガビーさんのバス通勤を体験してみようとスフレ小さな旅をしてみました。

 

スフレに着いたら同じボランティアのユキさんが住んでいるので、

連絡を取り、案内してもらうことになりました。

 

スフレ行きのバスはカストリーズ市場の少し外れにあります。

セントルシアではバスに時刻表などありません。

どのバスも席が全部埋まり次第出発します。

バスに乗り込んだ時はほぼ満席で、空いていた最後尾の席にすわりました。

それでもまだ3席ほど空いています。

すぐに出発すると予想していたのですが、スフレ方面に行く人はあまり

いないようでなかなか席が埋まりません。

市場周辺を行き交う人びとは皆足を速めてバスを通り過ぎてゆきます。

待つこと30分以上。

9時15分、ようやくバスが満席となり、ドライバーが運転席に座り、

エンジンをかけました。

 

カリブ海沿いにカストリーズから南に下り、Marigot Bay(マリゴットベイ)、 

Anse La Raye(アンスラレイ)、Canaries(カナリーズ)と3つの小さな村を

通ってスフレに到着です。

 

海沿いにあるそれらの町を通過するたびにくねくねと曲がった山道を

上ったり下りたりを繰り返す酷道をバスは進みます。

 

熱帯植物が生い茂る密林の狭い道を曲がるたびにパッパッパッーと

大きな警笛を鳴らしながら走るバス。

道が悪いので後部席だと右左、上下にと大きく揺れ、

乗っていてかなり疲れます。

ガビーさんが毎日こんなに大変な思いをして通って来ている

ことを改めて感じました。

 

          

    スフレの街並みとスフレ湾

 

最後の山道を降りきるとピトン山が目の前に見える

スフレの町に到着しました。

時計は10時40分を指しています。

ユキさんに電話でバス停にいることを伝えると、まもなく来てくれました。

「スフレの温泉とダイヤモンド植物園は一年前に研修で訪れているので、

今回は街中をゆっくり見て、私の職場に行きます」

「その後、車でセントルシア唯一のチョコレートをつくっているFond Douxを訪れ、

そこのレストランでランチをし、それからピトン山のビューポイントへご案内します」

「オプショナルとして、疲れていなかったらスフレの滝を見るのもどうでしょう」

とユキさん。

 

いろいろ考えてプランを立ててくれたユキさんに感謝です。

 

スフレは人口約8000人しかない小さな町ですが、温泉があることで有名なので、

たくさんの観光客が訪れます。

町の中心にはカトリックの教会があり、クリスマスを過ぎても大きな

クリスマスツリーが教会の前にありました。

 

教会、警察署、郵便局、病院、ホテルなどが色とりどりの民家の中にあり、

コンパクトな街です。

 

フランスの植民地だった18世紀に町がつくられ、当時はセントルシアの

中心だったスフレです。

地名や通りの名前、店の名など至る所にフランス語の名が多いのも頷けます。

 

19世紀になるとイギリスの支配下となり、首都はカストリーズになりました。

今ではカストリーズの人口はスフレの10倍にもなっています。

 

青く波穏やかなカリブ海のスフレ湾には観光船やボートが浮かんでいます。

 

海沿いにはおしゃれなバーやレストランが並んでいます。

 

10分も歩かないうちに中心街は過ぎ、ヤギがのんびり草を食べている

緑いっぱいの原っぱに変わります。

 

ユキさんの配属先に向かい、同僚の男性が運転する車に乗って、

地元産のカカオを使ってチョコレートをつくっているFond Douxへと向かいました。

カカオの木を育てている森があり、その中にレストランやホテルも兼ね備えた

チョコレート工場です。

 

               

     チョコレートのFond Douxのカカオの庭 

 

予約をすればチョコレートづくりを体験できるワークショップもあり、

私たちが中に入ったときは20名ほどの観光客がワークショップの講師に

説明を受けながらカカオの実を木の棒でトントン叩いてつぶしていました。

 

カカオの香りが広がり、何ともいい香ばしい匂いです。

 

自分の作ったオリジナルチョコレートをセントルシアのお土産にするなんて、

素晴らしいアイディアだと思いました。

1時間のチョコレートワークショップは55 USドルだそうです。

 

そこを通り過ぎ、階段を降り、レストランへと向かいました。

レストランというよりカフェテリアのようなお店でした。

カカオが入ったハンバーグやロテ、スイートポテトフライ、

それにアイスクリームのランチを皆で頂きました。

 

ピトン山がよく見えるビューポイントに向かう頃になると急に雨雲が立ち込め、

今にも雨が降り出しそうなお天気に変わりました。

 

                     

       プチピトンを背景に

 

セントルシアのただ一つのユネスコ世界遺産ピトン山は灰色の空を背景に

山頂は雲で隠れ、なんとなく厳めしい姿に見えました。

 

ビューポイントでは標高798mのグロピトン(大ピトン)が見えなくて、

743mのプチピトン(小ピトン)だけで、ちょっと残念。

二つのピトン山は並んでいるかのように見えるので、

『双子のピトン』という愛称も付いています。

 

海から天に向かって突き出たような二等辺三角形の形をしていて、

火山なのに山全体がたくさんの木々に覆われています。

亜熱帯温潤林と温帯乾燥林が混在する珍しいし自然環境で、

多種類の植物がみられ動物の多様性も豊富な森林に包まれたピトンです。

 

その他、ピトン山の周辺海域はサンゴ礁や絶滅危惧種のタイマイや

ジンベイザメも生息しているとのこと。

動植物や魚のパラダイスになっているピトンです。

 

プチピトンの登山は鎖やロープを使っての傾斜がきつい山ですが、

グロピトンの登山はポピュラーです。

ユキさんはグロピトンを上ったと話してくれました。

 

グロピトンを上ってみたい気もしますが、ピトンに生息する

動植物を紹介する写真やビデオなどの展示がある山の資料館が

あるといいのになぁと思いました。

 

そろそろ帰りの時間になり、バス停でユキさんたちに別れを告げました。

すでにカストリーズ行きのバスは出発したばかりで、次のバスが止まっています。

反対側にはビューフォート行きのバスも止まっています。

バス待ちの人たちはそちらのバスに次々に乗り込んでいき、

こちらのバスはなかなか乗客が集まらず、やれやれです。

 

屋根付きの待合所でピトン山を眺めながら1時間待って

ようやく出発となり、スフレの町を後にしました。