大聖堂とジョナサンの涙 | つなさん夫婦ニカラグア・セントルシア

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全盲の鍼灸マッサージ師の夫とそれを支える妻のブログ。

盲学校を退職後、シニアボランティアとしてニカラグアとセントルシアの医療活動を支援しています。
現地での異文化体験を、夫婦で発信していきます!

61. 大聖堂とジョナサンの涙

 

カストリーズ中心街のウォルコット広場近くにあるイマキュレート・コンセプション

大聖堂で、指圧講座2期生のジョナサンの兄、マルセラスさんのお葬式が12月半ばに

ありました。

視覚障害者協会からアブリルさんやロージーさんなど私たちを含め6人が式に参列しました。

 

セントルシアで一番古く、一番大きな大聖堂はドーム型の高い天井で、

青いステンドグラスの窓から柔らかな光が差し込み、中央の祭壇には

両手を広げたイエスキリストや聖母マリアの木の像があり、円柱の柱には

聖書の有名な場面の絵が1枚ずつ飾られてあります。

 

    

 

     

 

広い空間に遺族関係者が静かに座っていました。

中央通路を進むと木製の棺が車輪の付いた台座に置かれ、

棺の蓋は開かれていました。

そこにネイビーブルーのスーツ姿のマルセラスさんが

眠っているかのように横たわっていました。

そばにいた女性にお悔やみの言葉を述べると式のプログラムが

書かれた冊子を手渡してくれました。

表紙には赤いバラの花で囲まれたマルセラスさんが載っていました。

 

ジョナサンは最前列に座っていました。

私たちがそばに行くと憔悴しきった表情をわずかに微笑んで

「来てくれて本当にありがとう」と言うのがやっとのようなジョナサンでした。

「母は45歳で亡くなり、兄も母と同じ年齢で亡くなりました・・・」

そう言うとジョナサンは涙で潤んだ目を閉じ、唇をかみしめました。

 

なんて慰めてあげたらよいのか相応しい言葉が浮かびません。

黙ったまま両手でそっと彼の手を包みました。

 

厳かな音楽が始まり、司祭様の誘導でマルセラスさんの棺が中央通路を

ゆっくりと進み、祭壇の前に置かれました。

 

     

 

列席者全員で讃美歌を何曲か歌い、遺族の代表者がスピーチをし、司祭様の言葉があり、

式のフィナーレは一人の女性が美しいソプラノの声で讃美歌を歌いました。

清らかで胸に迫るその歌声に思わず涙がこみ上げてきます。

 

嗚咽しながら泣くジョナサンを他の兄弟姉妹がそっと抱いて慰めていました。

 

ジョナサンが「兄が重い病気で手術することになり、献血してきた」と言っていたことを

思い出しました。ジョナサン自身も1年前に視力を失ったばかりで大変な状況の中、

お兄さんのことをずっとずっと心配し、励ましていたのでしょう。

 

ジョナサン、今は辛くて悲しみの涙が乾かないけど、お兄さんはジョナサンの

思い出の中でずっと生きて、ジョナサンを見守っているよ。

 

今まで何度か見ていた大聖堂でしたが、今回のお葬式で初めて中に入りました。

 

式が終わり、外に出ると雨雲に包まれた厳めしい大聖堂が

ひっそりと寂しそうに見えました。

 

セントルシアの観光名所の一つとなっている大聖堂ですが、今では見るたびに

ジョナサンの涙が重なってきます。