「海と炎の娘」/姫君たちの旅路 | 旧・日常&読んだ本log

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流れ去る記憶を食い止める。

2005年3月10日~2008年3月23日まで。

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パトリシア A.マキリップ, 脇 明子
海と炎の娘

前作「星を帯びし者」 で、モルゴンと「偉大なる者」の竪琴弾きが、エーレンスター山に消えて一年、彼らの行方はようとして知れなかった。

そんな中、モルゴンの世継ぎである、彼の弟エリアードは、モルゴンの死の気配を感じ取る。「偉大なる者」が支配するこの王国においては、領国支配者はその領国に強く結び付けられ、その土地の木や風の動きまでもはっきりと感じ取ることが出来る。 エリアードはそれまでも、モルゴンの苦闘の様を夢の中で感じていたのだが、ある日、自らが領国にしっかりと結び付けられ、領国支配者となった事を感じる。それは即ち、それまでの領主であったモルゴンの死を意味する。

ヘドの領主、モルゴンの死の知らせは、王国内を駆け巡る。さて、アンの国の領国支配者マソムの娘であり、モルゴンの婚約者であるレーデルルは、アンの国で彼の帰還を待っていた。彼女の元にも、彼の死の知らせがやって来る・・・。さて、彼女はどうでるのか。

モルゴンの死の知らせが届いてから、王国は不穏な空気に包まれる。皆は「偉大なる者」に信頼を寄せていたというのに、彼は自分の王国の中で、ヘドの領主、モルゴンを守ってはくれなかった! アンの国の領国支配者のマソムは、鴉に姿を変えてエーレンスター山へと向かい、街道では変身術者たちがうごめくようになる。

レーデルルは、モルゴンに死をもたらした者を、「偉大なる者」に問いただそうと、エーレンスター山へと旅に出る。勿論、レーデルル一人で旅に出られるわけではない。彼女はヘルンのモルゴルの娘であり、近衛隊長でもあるライラとともに、船長ブリ・コルベットを脅し、船を乗っ取ってエーレンスター山へと向う。そして、そこにはさらに、モルゴンの妹であるトリスタンまでもが、密航してきて・・・。

この三人の娘たちがそれぞれに魅力的で、この旅の様子が私は好きだったな~。彼女らに乗っ取られた形の、船長ブリ・コルベットもまた良くって。「乗っ取られた」とはいえ、本当に抵抗出来なかったわけではなく、レーデルルたちの身を案じ、自分の船を愛しているからこその行動なんだよね。主人公であるモルゴンが出てこない前半の方が、前作に比べするすると読み進められる始末。この道中の様子は楽しかった。

ところで、この第二巻のタイトルは、「海と炎の娘」。星を帯びし者<スター・ベアラー>の隣にいる事になるだけあって、レーデルルもまた、ただ美しいだけの娘ではありえない。彼女は強い力を持った、アンの国の海と炎の娘。最終巻に向けて、物語は進む。