先日の夜。
仕事が一段落ついた私は川へ向かった。
本格的な夏を迎えてからは惨敗続き、恥ずかしながらシーバスの顔を暫く拝めていない。 
姿形は一体どんなだっけ?
この寂しい状況を早く思い出にしたい…何としても今夜、釣らなければ。

現地到着、思っていた以上の暑さに怯む。
深夜0時を回っているにも関わらず、気温は30度近くをキープしたままだ。
釣り座に着いた時点で顔にぐっしょり汗を掻く。
汗はぞうきんみたいな匂いがする。
我ながらキモい。
いま鏡で映したら多分鏡が割れる。

こりゃ熱帯夜はまだまだ続きそうだぞ。
この調子じゃシーバスは厳しいだろうなぁ。
唯一の救いはアングラーがゼロ。
そして潮が大きいこと、くらいか。

とりあえずいってみよう。
ぼちぼちサヨリが姿を現すはずなので、先発は迷いなくスタッガリングスイマー100Sを選択。




過去の経験上、この時期は結構当たっている。

私はこのルアーをこよなく愛しているが、特筆すべきは表層をへなへな泳ぐスラロームアクション。
水平姿勢をキープしながら浅場でもスローに攻めることが可能で、控えめな動きは場を荒らさない。
それ故に巻き感はスッカスカなのだが「信じる者は救われる」を地で行くルアー、突然バコッと出る。
バチやサヨリの時期には特によく釣れる。
スレにも強く、何度も窮地を救ってもらった。

シンペンと言えばアップから流す使い方が一般的だが、このスタスイには必ずしも当てはまらない。
ダウンキャストの釣りでもお構いなく食ってくる。
この許容範囲の広さもまた魅力。
泳ぎが破綻しにくく、使い勝手は抜群に良い。

こんなルアー、他にないだろう?
私はスタスイこそ究極のスタンダードシンペンだと信じている。

…ただ反応はゼロ。

扇状にくまなく探ってみたが、ダメだ。
究極もへったくれもない。

釣れないルアーはニート。
仕事をしない穀潰し
 
ビッグマウススタスイ。
どてかぼちゃスタスイ。
泳ぎは破綻しなくても釣りを破綻させるシンペン。

何だろう?暑さのせいかすごくイライラする。
まあいい、次だ次。

スイッチヒッター85S。
私の釣り人生で最もキャストした神ルアー。
この一年は阿呆のごとくコレを投げまくった。
 



私のようなド素人でもめちゃくちゃ釣れる。
これは奇跡のシンペンだ。
理由を聞かれても困るが、時期問わず釣れる。
お尻ふりふりアクションは先ほどのスタスイとは完全に別系統の動き、よって棲み分けがしやすい。

小さなボディの割に重量20g。
その高比重の特性を生かし上〜中〜下とレンジを刻みながら使えることもまた有り難い。
流そうが巻こうがフォールさせようが、とにかく何をしても魚が食らいついてくる。
特殊な集魚剤でも塗りたくってるんじゃないか?

しかも阿呆のごとく飛ぶ。冥王星まで届く。
飛ぶわ釣れるわ。
私にはまったく欠点が見当たらない。

…ただ反応はゼロ。

各レンジをくまなく探ってみたが、ダメだ。
いきなり欠点を発見。

釣れないルアーはニート。
仕事をしない穀潰し

寸借サギ師スイッチヒッター。
令和の二枚舌スイッチヒッター。
めちゃくちゃ釣れても今日釣れなければただのウンコ。

とにかくイライラが止まらない。
ふぅふぅ…一旦深呼吸しよう。

少し歩いて場所を変えてみる。
こんな時は気分転換が必要だ。
今度はコスケ85F。
コスケシリーズはミノーの中で一番のマスト。
兄貴分の110Fは既に殿堂入りが確定している。




飛距離、レンジ、動き…
全てが程良くちょうどいい。
ひとつとしてムダのない美しき万能ミノー。

コスケで出なきゃ魚はいない。
このローリングで狂わない魚はいない。
ここぞという場面での使用率No.1。
ランガンでの使用率No.1。
私の信頼は海よりも深い。

カラーは最近買った「ムーンナイトシャドウ」。
暗い場所ではメッキ、明るい場所ではクリアになるという二段構えの欲張りカラーだ。
個人的にはこういう十徳ナイフみたいなのが大好きなので、もっと出して欲しいと思う。






流れが効き出して、実は秘かに期待していた。 

コスケに変えて2投目。
トレース方向を変えようと少し下流側にキャスト、巻き始めて直ぐだった。

ドンッ

明確なバイト!!!

集中力は切らしてなかった。
フッキングがばっちり決まる。

っしゃー!!
き、きたっ!!
うわ本当に本当に?
しかもなかなかの重量感。
かぁ〜堪らん、コレは堪らんぞ!

今日はコスケの日なんじゃ!
今日はコスケの日なんじゃ!

……

……

……

歓喜はすぐに失望へと変わった。

…ゴミだ。

獲物は全く動かない。
待望のシーバスでは、なかった。

あーあ…。
言葉も出ない。
心底ガッカリした。
バイトだとぬか喜びした分これはツラい。
正直よくある失敗とは言え、今夜は起こって欲しくなかった。
失意のドン底のままカリカリと糸を巻く。
しかし、やけに重たいな。
デカい枝にでも掛かったか。

 


あれ?ゴミじゃない…
なんか白くて魚っぽいんですけど?
でも全然引かんし、まさかねぇ












ひっ、ヒィィっ!!
し…死…シーバスやん…亡骸の…






この時期NICEなグッドコンディション♫♫
じゃないんですよ
なんでコレ釣るかなぁ (泣)





死んで流されるシーバスを見たことはあっても、まさか釣ってしまうなんて…。
結構引きずってしまい、その後の釣りに集中出来ないまま早めに切り上げる羽目となった。

自分が釣った魚があんな風になってたらイヤだな。
帰宅後のビールはやけにほろ苦い。
リリースについて改めて考えさせられると共に、謎の罪悪感に胸が押し潰されそうになった夜。

酒は楽しい。 
釣りは苦しい。
人生は悲しい。