「ケンイチュウジ!」


子供のころ、テレビの忍者ハットリくんが三葉ケン一を呼ぶ時の「ケン一氏(うじ)!」が何度聞いてもわからなかった。

ケン一を呼んでるのはわかる。

でもどうしてケンイチュウジなんだろう?

チュウジってどっから来たん?

考えても考えても、答えは出なかった。


シーバス釣りを始めたころ、お店でルアーを眺めるのが楽しくて仕方なかった。

imaは普通にいまと読んだ。

sasukeなんてのもあったから、てっきり和モノのブランドだと思ったのだ。

いま(現在)かぁ…ポジティブな響きだな。

kakoでもなくmiraiでもなく「ima」としたところにメーカーの矜持を感じた。


間違いは誰にだってある。





話は変わるが、私はタイトローリング信者だ。

ミノーでの初釣果を飾ってくれたのは邪道/スーサンだった。
人生初のスズキクラスを連れてきたのはima/コスケ110Fだった。
どちらも苦労して釣り上げた、私にとって大変思い出深い魚である。
どれだけ感激したであろう。
スーサンとコスケ110Fは将来の殿堂入りが確実視されたスペシャルなルアー。
そのパッケージには両者ともに「タイトローリング」と記載された共通点があった。

そうか、シーバスってタイトローリングがいいんやぁ…。

その時からごりごりの信者となった。




ただ実際のところ、私は「タイトローリング」という言葉/表現が好きなだけである。

はっきり言わせて頂くと、ウォブリングとローリングの差も今イチわかっていない。

巻き感で判別出来る自信は…正直ない。


仮に目隠しされたままタックルごと渡され、ダイワ/クロスウェイクあたりを引かされたとする。

隣のエキスパートさんから「ね?すんごいタイトなローリングでしょ?」って大嘘こかれたら「はい本当ですね」と真顔で同調すると思う。


TKLMやサスケ裂波などの往年ミノー。

著名ブロガーさんあたりが「これはタイトなローリングアクション!」なんて小芝居を打ってしまえば、それは私にとって真実となる。

「確かに良いローリングしてるわぁ」なんて釣り場で一人ほくそ笑むのがオチだ。


ジョイント式のビッグベイト。

メーカーさんがパッケージに「業界初!超タイトなローリングアクションを実現!」と記載してしまえば、私は100%信じる。


つまり、その程度なのだ。


私に真実を見極める能力はない。

私というアングラーは盲目的にタイトローリングを愛すお茶目さんに過ぎない。

弱者ゆえにメーカー、エキスパート、著名人などの権威にも弱い。

言うこと為すこと全て鵜呑みにする。

彼らがほんのジョークでフェイクニュースを飛ばそうものなら、私はたちまち大火傷を負うだろう。 





私にとって良いルアーとは「運の良いルアー」であることが最近わかった。


はじめはとにかく沢山のルアーを使った。

長いノーバイトに苦しむ中で、とうとう待望のヒットが生まれた。

なるほど、このルアーが正解なのか…。

途端に過去のローテーションは崩れ、今度はそのルアーばかり重点的に使うようになる。

当然使えば使うほど釣れる確率は上がり、そのうち好みがどんどん偏って精神的な依存度が増す。

気づいたらサイズやアクションなど似たルアーばかり投げるようになってしまう。


私の場合、それがたまたまタイトなローリングのミノーだった。

良い悪いではなく縁があっただけ。

強いて言うなら私のスタイルにフィットしやすかったという程度、ワイドなウォブリングの動きより相性が良かったというだけの話だ。


私はこれまで一度もルアーを売ったことがない。

不要なものがひとつもないからだ。

私にとって悪いルアーとは、ただ単に「運の悪いルアー」でしかない。

出来が悪いわけじゃない。

そのルアーの特性を掴めることが出来たとき、はじめて出番はやってくる。

残念ながら、まだその時は訪れていない。


愛読ブロガーさんからの受け売りではあるが、最後に私の好きな言葉を添えさせて頂く。


「釣れないルアーなどはない」


単純なようで、かなり深い。