2023  元旦コロ助 


最悪の年明けを迎えた。

とうとう私にもこの時がやってきたのだ。

遠方に散らばる身内らが一堂に会する実家の席で、私が忘年会で頂戴してきたであろうコロ助の素により、一族郎党ひとり残さずコロ助を発症した。

祝いの席は一瞬にして阿鼻叫喚の世界へ変わり、私は感染力の凄まじさを痛感せずにはいられなかった。

私の家族を始めこれまで奇跡的にコロ助の網の目をくぐってきた無敵の一族も、多少の時間差こそあったものの、老若男女問わず結局全滅してしまった。

年一回の「元気でやってる?」の無事確認がとんだ皮肉になってしまい、今はただ悲しい。

世が世なら身内より背中から斬られても文句のひとつも言えないだろう。


ようやく皆の容態も回復してきて安堵しているが、やはりコロ助を舐めてはいけない。

私も実際に人生初の40度超の高熱を体験し、丸2日間は全く身動き取れなかった。

しんどかった。

私の家族などは順番に廻っていった感じで同時発症しなかった分まだマシだと思う。

家族同時にかかれば目も当てられない筈だ。


まだ罹患されていない方へ参考まで。

ゼリーやヨーグルトなどの食料品の備蓄をおすすめしたい。

一番症状が酷い時にはどうせそんなものしか口に出来ない。

また一人3日分程度の解熱剤があると良い。

子供さんのいらっしゃるご家庭なら子供用の解熱剤をたんと用意しておいて欲しい。

タミフルのような特効薬はなく、解熱剤を利用しながら騙し騙し時間が過ぎるのを待つしか方法はないのだ。

私を始めうちの身内の症状では喉痛、頭痛や関節痛に悩まされる人間が多かった。

なので鎮痛剤を兼ねた解熱剤は大変重宝した。



そんな自宅療養の日々を過ごす中で細やかな慰みとなってくれたのがゲーム、それも今や懐かしのファミコンだった。
まだ皆が元気だった年末31日、弟が唐突に1台のゲーム機をくれた。
「これ、ファミコンゲームがいっぱい入っとるけん暇なときやりぃや」
ファミコンにとどまらずディスクやGAMEBOY、PCエンジンやメガドライブといったレトロゲームが詰まっているそうだ。
これは嬉しい。
結局、失意のお正月と共にあったのは他ならぬこのファミコンゲームであり、束の間ではあるが私を大いに楽しませてくれた。
そんなゲーム群をご紹介させて頂きたい。
懐かしく思ってくだされば幸いだ。







我が家にやってきたゲーム機。
これが何なのか実は未だよく分かっていないのだが、ファミコンソフトが山ほど詰まった宝箱のような存在であるのは間違いない。
療養中は本当にこれに助けられた。







未だ覚めやらぬワールドカップ熱。
私がまず選択したのは当然サッカーだ。
発売時ファミコンでリアルに楽しんでいた身なので、プレイするのは37~38年振りか。あまりの懐かしさに思わず涙ぐんでしまった。



残念ながら涙はすぐに乾いた。

世界7各国から自チームを選択するのだがチームもへったくれもなく、選手はみな同じグラフィックで同じ動きしかしない。個人パラメータなどは存在しないらしい。唯一許された個性はユニフォームのカラーだけだ。
画面には最大で味方5人しか映らず、果たして11人出場しているのか極めて疑わしい。
ロングシュートを打たれると画面の切り替えが追いつかず、キーパー操作をする前に高確率でゴールを決められてしまうのもツラい。
くす玉くらいありそうな巨大ボールを転がす新感覚スポーツと考えればアリかも知れないが、ボールキープはともかくテンションキープはかなり厳しかった。






タッグチームプロレスリング。
あまりの懐かしさに目頭が熱くなった。
私は2代目タイガーマスクこと三沢光晴社長と新宿で肩がぶつかったことを人生の自慢としているくらいのプロレスファン。
発売当時も熱中してやりこんだものだ。
期待に胸を膨らませプレイしてみたが、数十年振りのタッグチームプロレスリングの出来映えには大変ショックを受けてしまった。



登場レスラーはたった4人。
しかもタッグ戦のため「2対2」の同メンツの試合がエンドレスで続くことになる。
また自チームは強制的に長州力とスーパーストロングマシンとなるのだが「必殺技以外の技の構成が同じ」という大味な設定に驚きを隠せない。
初っ端からバンバン出せる必殺技のせいで「序盤は相手の体力を削ぎ終盤大技で仕留める」といったプロレスの醍醐味を全く味わえず、必殺技ループ一択となってしまう。

これはダメだ…。
残念ながら1時間と持たず飽きてしまった。







お次は趣向を変えバンゲリングベイ。
ほんわかした牧歌的な画面。
パッケージとのギャップがスゴい。
小学生のころ誕生日に買ってもらった思い出のゲームだが当時は全くの理解不能、何をすれば良いのかさえ分からなかった。
立派な大人になり視野も拡がった今、30数年の時を経てプレイしたらどうだろう?
やもすればバンゲリングベイの楽しさ、違った側面や新たな魅力に気づくかも知れない。
…だが何も変わっていなかった。
バンゲリングベイはバンゲリングベイのままだった。
私に追いつける代物ではないのだ。
「ハドソン、ハドソン、ハドソン…」






最後に選んだのはアトランチスの謎。
多くの中高年には堪らないゲームだろう。
これまでのゲーム同様、実際にプレイするのは四半世紀以上振りだが、懐かしい音や動きはすぐに心地よいものへ変わった。



壮大かつ神秘的な「アトランチス」に挑む割にはかなりラフな格好でまずは拍子抜けしてしまう。
武器は明らかに破壊力が足りてない爆竹寄りの手榴弾のみ。
操作性が非常に悪くスーパーマリオのような軽快さは微塵もない。常にもっさり感がつきまとい、ジャンプするにせよしゃがむにせよボタンを押して実際に動くまでコンマ何秒かのタイムラグが発生する。
そのタイミングが体に馴染むまで何十何百と穴ぼこへ落下し落命する必要があるだろう。
しかし、そんな不満を簡単に払拭してくれるほどこのゲームは面白い。
YouTuberの力を借り最終ステージである100面にはどうにか辿り着けるようになったが、クリアにはもう少し時間を要しそうだ。





上記はほんの一例に過ぎず、今回熱中したゲームは他にも沢山あった。
この不思議な中毒性はなんだろう。
単なるカタルシスとは思えない。
昭和後期に生まれたファミコンゲームには何か得体の知れない魅力が詰まっている。
令和も5年目を迎えたが、まだまだ楽しめる要素は残ってそうだ。
懐かしい思いに駆られた方は是非チャレンジして欲しい。

P.S. 自宅に毛利名人のサイン残っています