シーバス釣りは何をやっても楽しい。


準備に始まり釣行を経て坊主で沈む。

私のこの2年半。

どのシーンを切り取っても最高だと言える。

ホゲる=明日への活力。

つまらない時間など一切ない。

箸が転んでもおかしい年頃はティーンエイジャー女子だけのものではなかった。

肌着に加齢臭が漂い始めた私ですら、いま毎日がおかしくて仕方ないのだ。


その中でも一番の楽しみは、私にとっての一軍ルアーを探すこと。

これに尽きる。


釣れる釣れないは、はっきり言えばオマケだ。

釣れれば勿論嬉しい。

だが釣れなくてもあまり気にならなくなった。

なんせ先は長い。

私はのんびり構えている。

ま、そのうち釣れるようになるでしょうよ。

人が1年で出来ることに5年かかろうがOK。

出来ないままでも一向に構わない。

要はこの楽しさが継続出来ればいいのだ。


私の唯一の娯楽と呼べるルアー収集。

正直、仕事以上に生き甲斐を感じている。

浪漫か惰性か?

私にはもうわからない。

デイトレーダーの如く市場相場とにらめっこする毎日。

1日おきのamazon価格。

ネットショップのセール状況。

中古業界のチェックにも勿論抜かりはない。

ITリテラシーは0。

絵に描いたような情弱の私が、ネット上のルアー相場には滅法強い。

悩むくらいなら買ってしまおう。

買えるうちに買ってしまおう。

私は常に強気の「買い」スタンス。





スイッチヒッターにフォルム、スペックがそっくりなデュエル/ヘビーショットを購入

スイッチヒッターは欠かせないルアーだが、ロストも多く好きなカラーは品切れが多発

流石デュエル、ヘビーショットは安価でカラーも豊富だ

並べてみて確信、ほほうコレはなかなか…





1週間後、増えた
試し投げもしていないがどうでもいい
欲しいと思ったタイミングこそ買い時
直感を大切にしよう
しかしデュエルって結構好きだな
作りもしっかりしてるし価格だって安いし




2年前、私の中でスリム旋風が巻き起こった
既に廃盤となっていたデュエル/ハードコアミノー
集めるのに相当骨を折った
110~130まではそれなりに釣れたことがあるのだが、写真の150サイズでは一度もバイトを貰えていない
210に至っては投げたことすらない
どこで使えばいい?
大枚をはたいた理由が全く思い出せない
残念ながら2020年を以て捜索活動を打ちきった




恐らくあと10~20個はあるであろう他のスリムミノー
全て一度も釣れておらず、悲しみの傷は癒えない
悲しみの果てに何があるかなんて俺は知らない
ミヤジだってそう言っていた
そうこうしてる間にマイブームは過ぎてしまった
サヨリパターンがいつどこで起こるのか未だ謎のまま
そのときまた会おう




私のスリムブームの発端であり、収集活動の原点となったルアー
DUO/タイドミノースリム140 
(メーカーHPには記載があるが廃盤だと思われる)

このスリムミノーのみ収集活動を継続している
磯におけるインプレではあったが、愛読ブロガーさんの数年前の五ツ星記事を見て速攻で購入
あるシチュエーションで見事どハマり
感謝感激雨あられ
奇跡のランカーを始め、私が使用してきたミノーの中で数もサイズもNo.1の実績を誇る
12月~2月の冬期はこれしか要らない

2年前ネット上で僅かに残っていた、恐らく市場最後であろうストックを全て買い占めたのは私の犯行である
中古釣具店に足を運ぶ一番の理由
新品で買えるものなら日本中のどこにだって行く




私の収集活動は、とどのつまりココが出発点
ルアーは実戦で使ってナンボだけど、コレクションするだけで私はとっても幸せ
タイドミノースリム140=スーパーゼウス
スーパーゼウスは万物の神
神のご加護はいくらあってもいい

この再販ビックリマン、ヘッドロココあたりまで全コレするつもりだったのだが、勤め先が不況の煽りで傾斜
お菓子買ってる場合じゃなくなった
とどめのボーナス全カットで、泣く泣く収集を断念
他人にはゴミ同然でも私にとってはプライスレス
実印と同じ場所に保管中





切手、フィギュア、王冠…
私はコレクターの気持ちが痛いほど分かる。
収集はとにかく楽しい。
間違いなく生きる喜びのひとつになる。

ここで、個人的な思い出話をさせて頂く。



小さいころ、ある親戚のおじさん家に泊まりに行ったことがある。
そのおじさんはかなりの変わり種で、普段何をしてるのかよくわからない人だった。
身内ではあるものの今いち生態が掴めない。
変わった親戚たちの中でも抜きん出た存在であることは子供の目にも明らか。
伊藤博文、大久保利通…社会の教科書で見た、あの明治の偉人たちを彷彿させる汚ならしいあご髭も、その怪しさを一層際立たせていた。

何故だか私はこのおじさんに可愛がられた。
趣味は廃品回収らしい。
正月の酒の席で大人たちから噂を聞いた。
粗大ゴミの日に、ボロい軽トラで市の業者より先回りして粗大ゴミを拾って帰る。
泥棒、には該当しないと信じたい。

初めてのお泊まりの日。
散らかった廊下を横切り居間に通された時、いつも私たち家族を家の中へ入れてくれない理由がわかった。
おじさんはコテコテの時計コレクターだった。
振り子タイプ専門らしい。
昔の旅館の玄関あたりに似合いそうな古臭い年季物が、壁掛け、据え置き仕様に関わらず、居間一面に所狭しと並んでいた。
NHK朝の番組でよく見ていた「おじいさんの古時計」のまんまだ。
優に50体はあったのではあるまいか。
趣味の廃品回収とやらの謎が解けた瞬間。
カチカチカチカチ兎に角うるさかった。
私の第一印象では【時計の海】だったと記憶している。

子供だったからすぐに順応した。
時計の存在など気にも留めなくなった。
夕飯を食って風呂に入ってさあ寝ようか、そんな頃合いだったと思う。
私は時間が知りたくなった。
その居間にはおびただしい数の振り子時計があったが、不思議と全てが異なる時間を指していた。
本当の時間がわからない。
最初から感じていた違和感の正体だった。

「ねえ、一体いま何時なん?」
私はおじさんに尋ねた。
おじさんは何故か老眼鏡をかけ、ゆっくりと腰を上げテレビのほうへ近づいていった。
そしてビデオデッキに小さく映るデジタル表示の時計を見て、
「もうすぐ10時になるよ」
とぽつり言った。



このエピソードを思い出すと笑ってしまう。
実際ある年齢くらいまでは、この話を頭に浮かべるだけで、どんなに落ち込んだ気分でもパッと明るくなれた。
正直に言うと少し小馬鹿にしてたように思う。
でも今は違う。
おじさんのことが理解できる。
正確に言えば、コレクター魂に共感出来るようになったのだ。
収集はオトコの特権。
好きなことに時間を割くのは楽しい。
自由気ままなこのおじさんは最高に面白く、幸せな人生を歩んでいたのだと思う。




余談が過ぎてしまった。

DUO/タイドミノースリム140。
私が血眼になって探している廃盤モデルはどうやら2011年の発売らしい。
ちょうど10年落ち。
家政婦のミタさんが承知しました、と言ってた頃のルアーなのだ。

いま、私がこのルアーに感じている価値と世間の評価は恐らく乖離しているはずだ。

著名ブロガーさんのお墨付きであることも然り名作ミノーであることは間違いないだろうが、2021年現在においてはやはり少し古めかしい、大袈裟に言えばオールドの域に一歩踏み込んだルアーかも知れない。
当時の優れたキャスタビリティも最新ルアー群と比べれば見劣りするのは否めない。
この10年の間にいくつも派生モデルを生み出しながら、今年の秋にはとうとう「タイドミノースプラット」が華々しく誕生した。(きっと素晴らしいルアーだろう)

未熟な私では、この由緒あるタイドミノースリム140の優位点をうまく説明できない。
令和も4年目を迎えようとする中で何故にコレなのか、自信を持って伝えられない。
そこまで理解できていない。

だが私はこれに勝るルアーを知らない。
文句なしの一番なのだ。
ドラフト1位入団で未だ現役バリバリ、将来は殿堂入りが約束されたルアー。

憧れのランカーが釣れた。
初めての冬の海で釣れた。
翌年だってやはり釣れた。
一晩に7匹ものスズキクラスを連れてきたのは、私のキャリア上このルアーだけだ。

ひょっとしたら他のルアーでも釣れたかも。
もっとアジャスト出来るルアーがあったかも。
でも、そんなことはどうだっていい。
このルアーこそオンリーワン。
特別なのだ。
私はタイドミノースリム140が一番いい。




これからシーバス釣りを続ける過程において、私にとってかけがえのない、そして思いの詰まったルアーがどんどん増えていくだろう。
第二、第三のタイドミノースリム140がきっと生まれるはずだ。
魚を釣ったり、集めてみたり。
想像しただけで心が踊る。

一軍ルアーを探す旅。

楽しくてしょうがない。