マスクイケメンの呼び声に悩むメンズが多いようだ。
取引先の若い営業マンもその一人。
マスクを外すのが苦痛だと言っていた。
人間とは身勝手なもので、異性のマスクの中身を自分好みに勝手に想像するらしい。
気持ちは分からないでもない。
女性にがっかりされることが怖くて、このままマスク生活が続いて欲しいと思う人さえいるそうだ。
禿げてて良かった。
初めてアドバンテージをもぎとった。
ぼちぼち河川のシーバス釣りも終焉。
こうなると生きる目的を見失う。
さて何をして過ごそうか。
青物はとっくにシーズンイン。
例年なら地磯巡りに精を出している筈だ。
ベイトとなるカマスが姿を見せ、いつもは寂しい磯際も賑わいを見せる。
しかしここ数年、なんとなく青物への執念が薄れてきてしまった。
今シーズンも5回ほど行ったのだが、キャストも上の空で肝心の集中力が続かない。
とにかくすぐ飽きる。
キャストより休憩が長い。
愛用のPEライン(バリバス/smp)を新たに買うのも惜しく、昨年のやつを裏返し。
無頓着にもほどがある。
ナブラが見えて冷静なのもおかしい。
釣れないことが断トツの理由であるが、どうやら私は純度高めのシーバスマンになってしまったようだ。
鱸を追いかけるほうが遥かに楽しい。
安全な日中に限ってという条件付きだが、これを機に磯マルにチャレンジしてみようと思っている。
ハードルが高いことはもちろん承知の上。
もう覚悟は決めた。
右も左もわからない唐変木の私では、かなり険しい道となるだろう。
PKキッカーは石崎君、GKはデューター・ミューラー。
GOALが見えない。
例えるならそんなところだ。
ヒラスズキに関してはもとより除外。
私ごとき素人が安易に手を出して良い代物ではない。
ガイドもない、経験もない。
呆気なく死んでしまうと思う。
一昨年の2019年になるが、アイマ/コスケ170Fを手に入れた。
コスケ四兄弟、あの名盤コスケ110Fの長兄にあたる。
購入には勇気が必要なルアーだった。
こんな大きくてシーバス用?
いくら何でもデカ過ぎやろ。
いったい何処で使えばいいん?
実物を手に取って悩みに悩んだ。
しかし、動画の辺見プロは言った。
「初めての印象は飛ばないな、と。でもこのルアーの真髄はそこじゃなかった。ヌメヌメと水に絡みつく艶かしい動き。いわば魚に選ばれたルアーなんですね」
購入以外の選択肢はなかった。
私の普段の河川シーバス釣りでは9cmミノーがスタンダード。
12cmは秋限定、14cm以上はもれなくビッグベイト認定している。
とにかく小振りなルアーが大好きなのだ。
流行りのスタイルなのだろう、最近の川ではどデカいルアーを抱えたアングラーをよく見かけるようになった。
あれでシーバスが釣れるなんて…。
にわかには信じ難い。
ジャイアントベイト?
私にはアンドレよりも大きく感じる。
やはりコスケ兄の出番はやって来なかった。
いつまで経ってもそのままだった。
河川で投げる勇気が出なかったのだ。
コスケ170Fは私のルアーケースの中でスヤスヤ眠り続けた。
その日は突然やってきた。
昨年2020の年の瀬12月、私は青物狙いでいつもの地磯に降りていた。
朝イチのトップでは全く気配を感じない。
青物はどうやらお留守のようだ。
むむ。
さて、どうしたものか…。
そんなタイミングでふと思い出したのだ。
そうだ、彼はどうだろう?
竿を置き崖を上り、わざわざ車まで小走りで戻った。
しかし胸騒ぎがする。
最後に彼の姿を見て随分になる。
あれから時間が経った。
元気でいてくれたらいいが。
ごそごそごそ。
ごそごそごそ。
…あ、あった。
こうしてリリーフカーに乗って颯爽とやってきたのが、他ならぬコスケ170Fだった。
長いファーム生活。
失くした週末、忘れ去られた出番。
気の遠くなるような地下生活を経て、とうとうコスケ兄は日の目を見た。
初冬の磯、初登板。
私的に川では有り得ないサイズなのだが、磯での使用に全く違和感はなかった。
飛ばないと御大は仰っていたが、思っていたほどキャストフィーリングは悪くない。
飛距離はともかく弟同様に安定感がある。
身体は大きくなってもあのローリングアクションは健在だった。
ころころ、ころころ。
ころころ、ころころ。
やはり小気味良い。
運良く60ちょいのマルスズキが釣れてくれた。
とても嬉しかった。
魚に選ばれたルアー、は嘘じゃなかった。
早く試合に出してやるべきだったのだ。
普段はリリースしているのだが、この日ばかりは有り難く頂戴した。
この時期釣れる脂の乗ってない痩せブリなんかより遥かに美味しかった。
鱸ってこんなに美味しいんだ!と感動した記憶が強く残っている。
残念ながら青物タックルだったため、釣りモノとしては全く楽しめなかった。
だが、この日は最高のゲストが来てくれた。