まだ梅雨入り前の5月中旬のお話。
出張を兼ねた遠征先でシーバスに挑んだ。
熊本は八代のとある大河川。
シーバスでお馴染みのメジャースポット。
今回はナイトゲームで二晩ほどチャレンジ。
シーバスマンの大好物、大潮。
絶好のコンディションである。
私の出張は基本的に大潮が絡む。
潮が大きくなると仕事に精を出し、大きな河川があるエリアへ好んで出張に発つ。
河川レスなエリアはもちろん小さな潮回り。
そんなシーバス中心の日常を過ごしている。
しかし、結果は芳しくない。
4時間越えの長丁場となった先日のホーム戦。
ルアーの手を替え品を替え、歯を食いしばりながらキャストを続けた。
全ては価値ある一匹に出会うために。
あとからひょいと来た若者が瞬時に釣った。
そして瞬時に帰った。
キャスト過多により痛み出した右肩をさすりながら、ノーバイトの私は黙ってその姿を見送った。
神などいない。
雨後の河川よろしく私の心は汚く濁る。
話を戻し熊本八代。
さて今回の遠征では絶対に釣らなければ…。
本来なら憧れの地で竿を出せるだけでも十分幸せなのだが、私には結果を求める理由がある。
実は昨年も同じタイミングでここ八代へ来たのだが、安定の大ゴケに終わった。
まあそれはいい。
いつものことだ。
初見で魚に恵まれるほど甘くはないだろう。
しかし内容がすこぶる酷かった。
すぐ隣で複数のアングラーが山のようにシーバスを揚げる中、私はなんと二日間ノーバイトだった。
まったくのゼロ。
まったくもって驚いた。
完全なノーバイトだったのだ。
本当に何も起こらなかった。
な、なんで…?
これには凹んだ。
持てるルアーと妙技を全て駆使したにも関わらず、完膚なきほどの完敗だった。
「釣れない=魚がいない」と思っていた私の甘い推測は簡単に覆された。
私が魚に食わせられないだけ。
だって隣ではバカスカ揚がっているのだから。
圧倒的な技量不足を痛感した夜だった。
同時にシーバスフィッシングの難しさを改めて思い知らされた、苦い釣行でもあった。
…思い出すと泣けてくる。
だから今年の釣行に懸ける想いは強い。
並大抵ではない。
なんせ1年間の修行の成果を試される場でもあるのだ。
…絶対今年こそは。
この1年はシーバスに捧げたようなものだ。
例年のエギングや青物をほぼ捨てて、シーバス一本で向き合ってきた。
寝ている時間を除けば、頭の中はシーバスのことしかなかった。
運良くランカーだって釣ることが出来たし、スズキクラスの釣果も二桁に届いた。
大丈夫、私のレベルは上がってる。
きっと成長してる。
昨年の私が小兵二なら今年の私は米示くらいになってるさ。
昨年が風のヒューイなら今年は山のフドウ。
大丈夫、大丈夫。
当日の仕事を恙無く終わらせ、夕方お目当ての橋脚に下見に入る。
思っていた以上に濁りが強い。
前回は結構澄んでいたイメージがあったけど。
二日前にまとまった雨が降ったからかな。
よし、まずは収穫ひとつだ。
カラーはパールやチャート系中心でいこう。
まだ日が高いのでアングラーはお一人。
ミノーを投げている。
干潮からの上げはじめなので流れは緩い。
釣れている感じはなさそうだ。
あとは浮き釣りのおっちゃんがちらほら。
今日は満潮の潮止まり21時ごろエントリー予定。
(いつも通りの)下げはじめを狙うプラン。
去年の混雑状況を考えると橋下の明暗一級ポイントの場所取りはまず難しいだろう。
ここは上流側70~80mあたりにもう一本橋がある。
常夜灯はないため残念ながら明暗狙いは諦めるしかないが、ブレイクもあるだろうしヨレなんかも発生しやすいのかな?
ここなら先行者さんらの邪魔にならないだろうし、うむ、ここが良さそう!
しかも手前には消波ブロックなどのストラクチャーがぎっしり。
ほほぅ。こいつはいい。
立ち位置からのトレースコースをイメージし、念のためストラクチャー位置の写真撮影。
また、下見の際に必ず行っているのが、万が一の落水時の帰還ルートの確認。
私は危機意識高い系。
それは人一倍どんくさいことの裏返しである。
戦場に赴けば真っ先に地雷を踏む人間であることを自覚している。
私は落水を常に疑い、アクシデントからの生還に自信の持てない場所では釣りをしないことにしている。
よし。大丈夫だ。
生きて帰れる。
とりあえず満足して下見は終了。
ホテルに入り食事。
10年前なら夕方から夜中までぶっ通しで頑張れるんだろうな。
やだな歳とるのって。
早朝から移動しての仕事で私はくたくた。
釣りはとても楽しみだけど、明日の仕事のこともやはり頭によぎる。
ふぅ、腹も膨れたしとりあえず仮眠だ。
しっかり休息をとって楽しもう。
なんたって1年1度の大勝負。
…
でっかいシーバスの夢でもみようか
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zzz
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は~しも~とかんなになりたい
くっ…タックルベリーの亡霊め。
(→ほんとに5月はこの現象に悩まされて辛かった)