「フルマラソンの練習といったら、やっぱり皇居ランだよねえ」
妻は常々、都内ランナーの聖地ともいえる皇居にあこがれていた。
しかし皇居は一周約5km。
病気になる前でも妻はそんなに走ったことはなかった。
内心不安を抱きながら、さる桜の日、夫婦で聖地に挑戦することに。
駅のコインロッカーに荷物と着替えを入れて、
いざ出発!
が、皇居は二人のイメージしている姿ではなかった。
普段はランナーたちであふれているそこは、花見客であふれていた。
せっかくの皇居ランというのに、少し走り辛い。
失敗したかなと思って隣を見るが、妻はずっと笑顔だった。
「すごい気持ちいいね!」と軽快に、キロ7分を切るくらいのペースで走っていく。
空は穏やか。桜は心を奪い、久しぶりの夫婦二人のランニング。
妻は僕の不安をよそに、とても楽しそうだった。
しかし、半周くらいしたところで、隣で妻が「きゃああ」と突然悲鳴をあげる。「足が上がらない!前に進まない!」
やっぱりこのペースで5kmは無理なようだった。
冗談のようによろよろとしはじめる妻。
今度は僕が笑えて仕方なかった。
