いよいよ神山高校文化祭の始まりです。
古典部も文集を完成させ、あとは売るだけ、となるはずでしたが、摩耶花の発注ミスで、発行予定部数30部のところ200部も納品されてしまいます。
とにかくがんばって売ろう! と部員それぞれのやり方で奮闘するのですが、奇妙な盗難事件が起こり……
『クドリャフカの順番』は、これまでの2作と違い、奉太郎の一人称ではなく部員全員が語り部となる多視点形式で進んでいきます。
本を開くまではそんな形式だとは知らず、ですます調で始まる文章に面食らって、間違ってアニメ版の副読本買っちゃった!? とか思ってしまいました。
作者のあとがき曰く、
「本書の主役は、とりもなおさず文化祭そのものです」
とのことで、無形のイベントを主役とするために、多視点形式をとったそうです。
なるほど!
こうすることによって、文化祭が持つ特有の熱はもちろんのこと、4人の個性によってバラバラである文化祭の印象や関わり方、事件との遭遇エピソード、文集を売るための工夫やアイデアなどがわかりやすく提示されています。
そして語り部の「あれ?」と感じたことがヒントとなりつつも、謎が明かされないまま次の語り部にバトンタッチされながら物語が進んでいくので、引っかかりがいくつも心に残ったままとなり、気になって読むのを止められません。
ニクいですね~
私も完全にそのワナにハマってしまい、今回もとっても楽しめました!
それに、本書の軸となる連続盗難事件の動機がちょっぴりせつなくて、それが摩耶花が属する漫画研究会での人間関係や、奉太郎に対する里志の気持ちともリンクしています。
みんないろいろな気持ちを抱きながらがんばっていて、でもがんばってもどうしようもないことがあって、自分の存在意義はなんだろうと悩みながら、それでもがんばって自分を生きるしかないんだよな~、なんて。
ふとわが身とも照らし合わせてみたり…… してみたらこの年頃からあまり成長していないことに気づき、愕然 Σ(-∀-;)
まあ結局、死ぬまでこんな調子なのでしょう。
今回も古典部のチームワークはすばらしく、奉太郎の推理も冴え渡ります。
そして「わらしべプロトコル」の発端となったり、鍵となる漫画を差し入れたりする奉太郎の姉っていったい!? とシリーズ全体に関わってきそうなワクワク感。
こいつぁ、次も読まないと!