過払金請求の実際-全額返ってくるのか?裁判するのか?- | 橋本治子の弁護士日記~仙台より~

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仙台弁護士会所属。

前回、
過払金請求
について取り上げました。
 
 
詳しくは前回の記事を
ご覧いただきたいのですが
 
過払金が発生するには
次の3つの条件が必要です。
 
 
 

 

過払金発生の条件

 

 

条件1

利息制限法を超える金利で
借りていること

 
過払金とは
高金利の貸金業者
取引をしているときに
発生するものです。
 
ですから、もともと金利が
利息制限法以下である場合は
過払金は発生しません。
 
 

 

条件2

2010年6月18日以前からの

借入であること

 

 
過払金は
 
利息制限法の上限15~20%
上矢印
下矢印
出資法の上限29.2%
 
この差の払い過ぎた利息を取り戻す
というものです。
 
2010年6月18日 出資法改正により
出資法の上限利率が引き下がり
貸金業者は法改正にあわせて
金利を利息制限法まで下げました。
 
ですから
2010年6月18日以前から取引
をしていないと
過払金は発生していません。
 
 

 

条件3
完済から10年経過していないこと

 

 
過払金返還請求権は
民法703条704条の
不当利得返還請求権
が請求の根拠となります。
 
不当利得返還請求権の
消滅時効は10年(※)。
10年のカウント開始日は
最高裁判決で
取引終了から10年
という結論が出ています。
 
※2020年4月1日債権法改正で
 消滅時効に関する改正ありました
 改正法施行後に取引終了した場合
 10年より短く5年となることも
 あり得るようなので
 該当する人は早めにどこかに
 相談に行った方がよいでしょう
 
 
 

過払金請求の実際

 

過払金請求を行う件数は
最近はかなり減りました。
年間数件あるかないか。

 

出資法の改正から

間もなく14年経ちますし
当事務所は過払金に関して
大々的に広告打っていませんし
いま現在としては
この程度の件数だろうなあ
とは思います。
 
 
 
 
 
参考までに
裁判所が公表している数字(※) 
を拾うと次のとおりで
過払金に関する訴訟の受付件数は
2009年がピーク。
 
(※)
民事の第一審訴訟事件のうち
過払金等に関する事件を
新たに受け付けた件数

 

2006年 60,045件

2007年 93,286件
2008年 112,027件
2009年 144,468件
2010年 130,177件
2011年 106,185件
2012年 68,851件
この後も徐々に減り
2018年 38,636件
 
-最高裁
裁判の迅速化に係る検証に関する報告書
から引用-
2018年以降は
過払金等訴訟に関しては
統計数値が公表されていません。
統計取るまでもない、ブームが去った
ということでしょう。
 
 

 

さて
最近取り扱いました
事案のご紹介です。

 

 

 

事案1 信販会社O

 

 
このケースは
破産依頼があって
その準備をしている中で
過払金があることがわかりました。
 
 
2001年   取引開始
2013年12月 取引終了
2022年秋  破産の相談に来る
 
という経過。
消滅時効は取引終了から10年
ですから
2023年12月超えてたら
請求できませんでした。

ギリギリでしたね。
 
計算したところ、金額は
過払金元金が約40万円
過払金利息が約20万円
合計約60万円
 
交渉を行い
約40万円を返還してもらう
ことで和解しました。
 
元金ほぼ100%ですし
よろしい終わり方ではないでしょうか。
 
破産手続を進めたかったので
過払金回収に時間を使いたくない
という事情もありました。
 
ただ、金額の点はよいのですが
うわあ...と思ったのは支払期限。
 
O信販会社から言われた支払期限は
和解から10カ月後
 
 
 
誰もが知っている著名信販会社。
 
嫌がらせで先延ばししているとは
思えないのですが...
私がちょろい弁護士と思われたのか...
 
10ヶ月はないにしても
半年後とか、支払期限について
だいぶ先のことを言われるのは
最近は珍しくないなあと思います。
 
 
 

 

事案2 消費者金融会社A

 

 
相談に来た方は
2004年から2023年まで
ずーーーーーーーーーーーーっと
取引継続。
 
取引終了後、あまり日をおかずに
相談にいらっしゃいました。
 
 
まずは交渉。
 
計算したところ、金額は
過払金元金約370万円
過払金利息約90万円
合計約460万円

これを請求したところ
A社からの返事は
4か月後元金の半額を支払う
でした。
 
私のイメージだと
消費者金融系は交渉レベルだと
このような提案はごく普通
全額は戻ってきません。
 

負債のある人が債務整理をする場合
元本の減額など夢の話
一方、金融会社自らが支払う立場になったとき
シレっと50%、60%の提案してきます。
へええええっ...て思います。

 

 

さて
交渉以外での解決となると訴訟ですが
訴訟には時間も費用もかかります。
 
あとは、依頼者の方のご判断。
減額和解でいいとなれば
和解書の作成に入りますが
納得できない、裁判にしたいとなれば提訴。
 
 
本件はさくっと提訴。
 
 
 
訴訟になれば
元金を減らすことはまず無理と
金融会社もわかっているのでしょう。
 
提訴から3か月後
元金100%+αで和解しました。
 
ただ、支払が和解から約3カ月後。
事案1の10か月後よりはマシだけれども。
 
 
 
 
 
いま、過払金請求できる可能性のある人は
コツコツ15年以上にわたって
支払いを継続している人。
 
同じような立場で、
途中、支払えなくなり
破産とか債務整理とか
負債処理をやっている方、
多いと思います。
 
そういう事態にもならず
毎月毎月、コツコツ返済。
真面目な方なのだろうと思います。
 
負債と思っていたものが
あるときから財産に切り替わっていた!
というミラクル?

真面目な方がバカを見ないように
請求権のある方が
適切に権利行使できるよう
知っていただければ幸いです。
 
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