ツイッターでの名誉毀損や誹謗中傷 -「リツイート」と「いいね」ー | 橋本治子の弁護士日記~仙台より~

橋本治子の弁護士日記~仙台より~

さまざまなトラブルを経験豊富な女性弁護士が、女性ならではの視点で解決まで全力でサポートします。
弁護士に相談すべきかわからないという方も、まずはお問い合わせください。
仙台弁護士会所属。

ブログだけではなく、ツイッターを
やっている方も多いと思います。
 
私はツイッターのアカウントはありますが

発信はしていません。

 
いいね!も
つぶやきシロー
仙台弁こけし
に押すくらいです。
牧歌的。
 
 
そんな消極的ツイッター利用者ですが
2022年10月20日、ジャーナリストの伊藤詩織さんが
ツイッターで誹謗中傷されたことに関して
出た判決には注目しました。
 
既に様々報道されていますので
ご存じの方も多いと思います。
 
 

 

 

 

ツイッターでの名誉毀損・誹謗中傷に関しては

 

1 名誉毀損・誹謗中傷する投稿をした人

 

2 1を「リツイート」した人

 

3 1に「いいね」した人

 

それぞれ不法行為に当たるか

が争点となります。

 

 

ブログにも同じ機能がありますから

同様に考えることができますね。

 

 

1がアウトなのは理解できると思います。

 

今回出た判決の争点は3でしたが

その前に2について触れたいと思います。

 

 

 

 

 

 

名誉毀損・誹謗中傷するツイートを

「リツイート」することが不法行為に当たるか

(損害賠償請求の対象となるか)。

 

 

著名なのは元大阪府知事橋下徹さんが提訴した事案です。

 

ツイッターに橋下徹さんの名誉を棄損する投稿があり

それを何のコメントもなくリツイート(単純リツイート)

した人に対する慰謝料請求事件です。

 

 

原審

:大阪地裁令和元年9月12日判決

 

控訴審

:大阪高裁令和2年6月23日判決

 

いずれも、リツイートした人の

不法行為責任が認められています。

 

 

リツイートしただけなのに

責任生じるのは何故?

と思うかもしれません。

 

やや長いですが原審判決抜粋です。

 

リツイートの形式で投稿する場合・・・

元ツイートの内容に賛同する目的でこれを引用する場合や,

元ツイートの内容を批判する目的で引用する場合など,

様々な目的でこれを行うことが考えられる。

 

しかし,他者の元ツイートの内容を批判する目的や

元ツイートを他に紹介(拡散)して議論を喚起する目的で

当該元ツイートを引用する場合,

何らのコメントも付加しないで

元ツイートをそのまま引用することは考え難く,

投稿者の立場が元ツイートの投稿者とは

異なることなどを明らかにするべく,

当該元ツイートに対する批判的ないし

中立的なコメントを付すことが通常であると考えられる。

 

したがって,・・・何らのコメントも付加せず

元ツイートをそのまま引用するリツイートは,

ツイッターを利用する一般の閲読者の

普通の注意と読み方を基準とすれば,

例えば,前後のツイートの内容から

投稿者が当該リツイートをした意図が読み取れる場合など,

一般の閲読者をして投稿者が当該リツイートをした意図が

理解できるような特段の事情の認められない限り,

リツイートの投稿者が,自身のフォロワーに対し,

当該元ツイートの内容に賛同する意思を示して行う

表現行為と解するのが相当である。

 

 

次に控訴審の判決抜粋です。

 

単純リツイートに係る投稿行為は,・・・

特段の事情がある場合を除いて,

元ツイートに係る投稿の表現内容を

そのままの形でリツイート主のフォロワーの

ツイッター画面のタイムラインに表示させて

閲読可能な状態に置く行為に他ならない・・・。

 

そうであるとすれば,

元ツイートの表現の意味内容が

一般閲読者の普通の注意と読み方を基準として解釈すれば

他人の社会的評価を低下させるものであると判断される場合,

リツイート主がその投稿によって元ツイートの表現内容を

自身のアカウントのフォロワーの閲読可能な状態に置く

ということを認識している限り,

違法性阻却事由又は責任阻却事由が認められる場合を除き,

当該投稿を行った経緯,意図,目的,動機等のいかんを問わず,

当該投稿について不法行為責任を負うものというべきである。

 

 

 
 
原審と控訴審とでは
理由がやや異なりますが
いずれにしても、リツイート者に
慰謝料等の支払いを命じています。
 
 
 

名誉毀損訴訟においては

表現の自由が問題となりますが

控訴審の判決には

次のような記載もあります。

 

リツイートによる投稿をも含めて,

ツイッターにおける投稿が,

当該投稿に係る表現内容を容易な操作により

瞬時にして不特定多数の閲読者の

閲読可能な状態に置くことができる特性を

有するものであるにとどまらず,

当該投稿を閲読した者が

更にその投稿内容をリツイート等することによって

その表現内容を容易な操作により

更に多くの閲読者の閲読可能な状態に置き,

そのような行為が繰り返されることによって,

当該投稿の表現内容が短期間のうちに

際限なく拡散していく可能性を秘めており,

そのような危険性は抽象的危険の域に

とどまらないものというべきである・・・

 

単純リツイートの場合を含めて,

ツイッターにおける投稿行為を行う者には,

投稿行為に際し,その投稿内容に含まれる表現が,

人の品性,徳行,名声,信用等の人格的価値について

社会から受ける客観的評価を

低下させるものであるか否かについて,

相応の慎重さが求められるものというべきである。

そのような制約は,もとより表現の自由の

内在的制約にすぎないのであり,・・・

 
 
本件ではリツイートした人の
フォロワーは18万人いたので
拡散力はすごいものだったと思います。
 
リツイートから1か月半後までには
削除されたようですが
さて、認められた金額はいくらか。
 
 
33万円。
どうなんでしょう、この金額。
 
 
 
以上のとおり、リツイートは
リツイート自体が表現行為となります。
 
そして、元ツイートが名誉棄損等で
違法と判断される内容である場合は
単純リツイートは不法行為に当たり責任を問われかねません。
 
もしリツイートするのであれば
「私は元ツイート内容を批判する」
「元ツイート内容は事実に反する」など
私は元ツイート者とは違う
という立場や目的が分かるように
コメント付きでリツイートするなどしなければ
責任を問われかねない、と言えるでしょう。
 

 

次回は、名誉棄損・誹謗中傷投稿に
いいねを押した場合の責任について
整理したいと思います。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

法律相談申込はこちらから
詳細はこちらをクリックしてください👇

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆