最高裁判決 少数意見の表示-「私は、多数意見と異なり、憲法に違反すると考える」- | 橋本治子の弁護士日記~仙台より~

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仙台弁護士会所属。

前回、
  • 1人の裁判官で判断する単独制
  • 複数の裁判官で判断する合議制
について書きました。
 
同じ合議制でも地裁・高裁と最高裁との違いは
最高裁は結論に
各裁判官の意見が表示される
ところにあります。
 
 
実際に最高裁判決を読むと
主文と理由の後に
  • 補足意見
  • 意見
  • 反対意見
という表題のもとに
各裁判官が自身の意見を公表しています。
 
 
なぜ、最高裁は
このような扱いになっているのか?
 
それは、最高裁裁判官が
国民審査の対象になっているからです。
 
最高裁は憲法違反に関わる訴訟など
重要な訴訟を扱いますが
各裁判官がどのような意見を持っているかを知り
国民審査の判断資料とすることができるように
という趣旨です。

 

 

 

 
 
 
それでは、最近出た最高裁決定を
例に見ていきたいと思います。
 
 
令和3年11月30日最高裁決定
 
 
<争点>
 
性別変更の要件
「現に未成年の子がいないこと」
が憲法13条、14条1項に反するか?
 
 
 
<事案>

性同一性障害のある人の性別変更
(戸籍の性別変更のこと)
に関する法律には
 ※「性同一性障害者の性別の取扱いの
  特例に関する法律」(特例法)
 

変更が認められる要件として

  1. 18歳以上であること
  2. 現に婚姻をしていないこと
  3. 現に未成年の子がいないこと
  4. 生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること
  5. その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること
という5要件が規定されています。
 
このうち、3つ目の要件が問題になりました。
未成年の子がいる方が
性別変更の申立をしたのです。
 
 
 
<法改正の経過>
 
特例法ができた当初(平成15年)
3号は
「現にがいないこと」
となっていました。
 
これが、平成20年の改正で
「現に未成年の子がいないこと」
と変わりました。
 
 
この「子がいない」要件は
子の福祉の観点から必要だ
と言われています。
 
現に(未成年の)子がいる人に
性別変更を認めた場合
家族秩序に混乱を生じさせ
子の福祉の観点から
問題を生じかねないので
このような要件を設けることは
合理性を欠くとは言えない
という考えです。
 
 
<決定>

 

原々審(家裁) 却下

原審(高裁)  却下

最高裁(小法廷)棄却

 
 

最高裁の決定理由は

 

特例法の3号要件が

憲法13条,14条1項に違反するものでないことは

これまでの判例の趣旨から明らかである

 

という簡素なものでした。

 

 

ただ、5人の裁判官のうち1人宇賀克也裁判官は

違憲という反対意見を述べました。

全部読んでいただいた方が

裁判官の言いたいことを

よく理解できると思いますが

いかんせん長いのでかなり意訳しますと
 

 

平成20年改正により

子が成年に達していれば

「女である父」「男である母」

の存在は認められている

 

「女である父」「男である母」

の存在を認めることが

未成年の子に心理的な

混乱や不安をもたらしたり

子の福祉の観点から問題である

という説明は合理的だろうか

 

性別変更審判を申し立てる時点では

申立人は既に性別適合手術により

既に男性から女性に、女性から男性に

外観が変化しているのが通常である

 

未成年の子に心理的な

混乱や不安をもらたすのは

この外観の変更の段階であって

戸籍上の性別変更は

既に外観上変更されている性別と

戸籍上の性別を合致させるに

とどまるのではないか

 

むしろ若い感性を持つ未成年のほうが

偏見なく素直にその存在を

受け止めるケースがある

という専門家の指摘もある

 

3号要件と設ける際に根拠とされた

子に心理的な混乱や不安をもたらしたり

親子関係に影響を及ぼしたり

しかねないという説明は

漠然とした観念的な懸念にとどまる

のではないかという疑念がぬぐえない

 

3号要件は、憲法13条で保障された

自己同一性を保持する権利を

制約する根拠として

十分な合理性を有するとは言い難い

 

という理由で
憲法13条違反、原決定を破棄すべき
という意見を述べました。
 
 
みなさんはどのように思いますか?
私は宇賀裁判官と同じ感覚です。
性別が変わっても親の責任を
免れる訳ではありませんし
親の性別変更認めないことで
守られる未成年の子の福祉って
具体的にどういうことなのだろう⁇
個々の家庭で事情は異なるだろうし
一律認めないことが適切だろうか⁇
と思います。
 
 
 
全文読んでみたい方は
最高裁の判例検索で探してみてください。
キーワード「性別変更」で出てきます。

 

思うに、裁判は人権に関わるものや

これまでの法解釈を変更するものなど

極めて重要な訴訟があります。


それを

地裁の裁判官3

高裁の裁判官3

最高裁の裁判官15

最大21人で判断することになる訳で

裁判官の職責は非常に重たいものだな

と思います。

 

弁護士も大変なことありますけどね。
 
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