【読書の時間】 獄窓記・累犯障害者 山本譲司著 | 橋本治子の弁護士日記~仙台より~

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仙台弁護士会所属。

弁護士会は、日々、全国あちこちで研修やシンポジウムを開催しています。

 

以前は、東京など遠方で開催されるシンポジウムには、なかなか行けませんでしたが

コロナウイルスが流行り出してから、弁護士会もオンライン配信が普通になりました。

興味あるものを事務所や自宅で視聴できるのは、ありがたいことです。

 

 

先月、日弁連の主催で

 

罪に問われた障がい者等への

弁護士による切れ目のない支援とは

~地域生活定着支援センターとの

連携でできること~

 

というシンポジウムがありました。

 

 

障がいのある人が、罪を犯して逮捕、起訴され、刑務所に行くことがあります。

このことが注目されたのは、この本がきっかけです。

本棚の奥から出して、久しぶりに読みました。

 

 

 

 

 

著者は元衆議院議員。

秘書給与詐取事件で実刑判決を受けました。

そして、服役中、障がいのある服役者たちの世話役を担い

刑務所の中の実情を書き記しました。

 

獄窓記が出版されたのが2003年。

累犯障害者が出版されたのが2006年。

 
この本が世に出て、刑務所の中に福祉的支援が必要な人たちがいる、

しかも、何度も何度も服役している、ということが注目されました。

 

 

私は、ときどき刑事弁護をしますが、これまで、知的障がいや精神障がいのある人の刑事弁護もしてきました。

 

弁護士が国選弁護人に選任されたとき、情報として手元に来るのは

その方の名前、住所、年齢、どういう嫌疑をかけられているか、だけです。

その方の経歴等、何も分かりません。

 

勾留されている警察署に面会に行って、初めて分かることがたくさんあります。

 

 
だいたい弁護士が先に面会室に入り、後からご本人が入ってきます。

 

入ってきたときの表情や体の動かし方を見た瞬間、

何らかの障がいがありそうだと感じるときもあります。

話していく中で、意思疎通が難しかったり、明らかに妄想の話が展開されると、

何らかの障がいがありそうだな、と分かるときもあります。

 

ご本人から、「私、知的・精神障がい者です。」という話が出れば

手帳の有無や、関わりのある福祉関係者を聞き出して、

関係者にすぐに連絡を入れるときもあります。

 

高齢の方であれば、地域包括支援センターとの関りがないかを聞き出すこともあります。

 

 

障がいのある人を弁護していくには弁護士だけでは難しく、

福祉関係者との連携が必要です。

 

 

障がいのある人が罪を犯した際は、

 

 

捜査機関の取り調べを受け刑事裁判を受けている最中の支援

(この問題に関わっている人たちの間では「入口支援」と言います

この言い方、しっくりこないなーと思います。)

 

 

刑務所等を出て社会復帰する際の支援

(同じく「出口支援」と言います。)

 

が必要です。

 

現在、地域生活定着支援センターという機関が各都道府県に設置されています

(平成23年度に全国設置完了)。

 

出口支援は設置当初からセンターの業務として行われていました。

入口支援は、やっているセンターとやっていないセンター、

やっていてもその内容、各地バラバラでしたが

令和3年度から入口支援も開始したと厚労省のHPに載っています。

 

 

 

 

 

獄窓記が出版された当時とは、社会の仕組みも変わってきたと言えますが、そうであっても、

 

  • 障がいがあるために言い分を伝えきれない
  • 障がいがあるために、誤解されてしまう
  • 自分を守る力が弱いために犯罪に巻き込まれてしまう
  • 福祉的支援がないと居場所を見つけることができず犯罪を繰り返してしまう
  • 刑務所に入れて解決するものではない

 

といった課題はなくなってはいません。

 

弁護をしていて、これでいいのだろうかと悩む場面は多々あり

そのことは、うまく書ききれないので、そのうちに。

 

 

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