【2020/10/6段階】鳥取県青健条例改正案、委員会を無風通過。10/8本会議迄にできる事は? | 「月松橋」活動報告

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同人団体「月松橋」です。

■はじめに

 

にわかには信じがたいことが起きました。

先日から当ブログでも取り上げている、鳥取県の「青少年健全育成条例」改正案について、10/6の鳥取県議会福祉生活病院常任委員会にて採決が行われました。この条例案については、これまでの県議会でのやり取りを通して大きな問題点が示され続けており、本来であればこの委員会にて問題点を指摘する何らかの質疑が行われるべきでした。

ところが、福祉生活病院常任委員会の県議は、誰もこの条例案に対して質疑を行いませんでした。

 

 

※10/9追記:上記ツイートについて、坂井崇俊さんから「質疑はなかったが賛成討論をする県議はいたので一部訂正したい」旨の発信がありましたのでご紹介します(録画によれば、当該の議員は会派としては無所属の市谷知子県議だった模様)

 

この条例案が委員会を無風で通過してしまった今、10/8の本会議しか、この改正案に対する県議からの意見表明を頂く機会は残されていません。

10/8の本会議で「やっぱりこの改正案はおかしくないか」ということをせめて県議のどなたかに主張頂くための一助となることを期待し、私(温泉半熟卵)は、鳥取県議会議員全員の連絡先のまとめを作成しました。

 

 

 

 

このブログ記事をお読みの方の中には、今、この改正案の話題を知ったばかりの方もいらっしゃるかも知れません。

ここからは、この改正案の内容と、この問題に対して今できる事を、改めてご説明します。

 

 

■あまりに非現実的な改正案

 

まず、今回提出されている鳥取県青少年健全育成条例改正案は、「有害図書等のインターネット販売の規制明記」「自画撮りによる児童ポルノの要求禁止」等の内容を含むと説明されています。このうち、とりわけ問題視されているのが「有害図書等のインターネット販売の規制明記」です。

 

 

 

ざっくり言うと、「自治体が条例に基づいて指定し、『この出版物は青少年に売ってはいけない』と決めた出版物」「有害図書」ですが、何を基準として「有害図書」を選ぶかの規定は各自治体ごとにかなりバラバラ(しかも、その規定自体が分かりにくい自治体が相当数存在する状態)です。このため、自分が今いる場所以外の「有害図書」を正確に把握することは現実的にかなり難しく、これまで「『有害図書』の販売規制を、県境を越えて実行するのは事実上困難」という理解が一般的でした。

 

ところが鳥取県は、突然「県境を越えてネットで有害図書等を販売することも規制の対象にする」と言い出しました。

もし、ネット書店が今実際にどのような形で出版物を扱っているか、多少なりとも調べたことがあれば、これがいかに非現実的な要求であり、やれと言われたからと言ってできる様なものではないことは容易に認識できるはずですが、鳥取県は平然と「いやいや、対応できるはずと認識してますよ」と言わんばかりの主張を行っています。

 

 

 

ネット通販等を行う事業者は、全国どこにいようが鳥取県の「有害図書」等を把握し、それに該当する出版物等を青少年に売ってはならない――この主張はあまりに非現実的であり、罰金まで設けて強制的に守らせようとするにはあまりに不適当な内容であると考えます

 

■あまりに信頼できない鳥取県行政

 

事業者にとっても、到底守れないような内容であるこの改正案。しかし、この改正案で困るのは、本来、事業者だけではないはずです。この改正案は、これを提出した当の本人である鳥取県行政側にとっても、手に負えない内容のはずなのです。

 

この鳥取県の条例改正案をブログ記事で取り上げた栗下善行都議は、「県外の数限りない事業者に対してフェアに罰則を運用することなどどう考えても不可能と指摘しました。また、この指摘の正しさを裏付けるかのように、鳥取県は「県外捜査はよほどのことがない限り行わない(=全国津々浦々の全事業者に公平に改正案の規定が適用されることはまずない)」と9/14の質疑で答弁しています。

 

 

 

更に始末に負えないことがあります。改正案の規定云々以前に、現行条例すら鳥取県行政が適切に運用できているとは言い難い実態があるのです。

なぜこんなことが言えるのか。それを説明するには、まず3種類ある鳥取県の有害図書の指定方法を把握する必要があります。

 

Ⅰ.個別指定=鳥取県行政の会議(青少年問題協議会)で出版物を審査し「有害図書」に指定する

Ⅱ.包括指定=性的な描写、変態的な描写等を一定含む出版物を自動的に「有害図書」として扱う

Ⅲ.団体指定=業界団体が判断し特定の表示を付けた出版物を「有害図書」として扱う

 

これらの方法で指定された出版物がどのように対応されているかは、下記の通りです。

 

Ⅰ.個別指定への対応状況

個別指定で「有害図書」となった出版物はその題名等が告知される…が、その告知は分かりやすく公開されているとは言い難く、鳥取県HPから探し出すのは至難の業。

 

 

Ⅱ.包括指定への対応状況

「どの出版物が包括指定の対象になったか」についての告知自体が存在せず、事業者はもちろん、恐らくは当の鳥取県行政も、どの出版物が対象かその出版物を読んで確かめないことには判断できない状態。

 

 

 

Ⅲ.団体指定への対応状況

「この表示が付いている出版物は団体指定の対象」という表示一覧が告知されている…が、「R15」の表示が誤って一覧に掲載されていた時期があることが判明。本来15歳以上の青少年であれば手に取れたはずの出版物まで、青少年から取り上げる運用が行われていたことになる(しかも、その誤情報はサイレント修正された模様=「誤情報になっていたので修正しました」という告知がない)。

 

 

 

……以上の状況は「鳥取県行政は、現行の青少年健全育成条例の運用をまともにできていない」と評価するには十分すぎるものではないかと思います。

ここまで不適切な仕事(条例の運用)を行っている人間・組織が、その仕事の範囲を広げようとすることは、自らの行いを顧みない行為としても甚だしいものではないでしょうか?ましてや、この仕事とは、仮にも地方自治体行政の厳格な規則たる条例の運用です。他人(事業者等)に対して「この規則を守れ」と言うからには、その規則を守らせる側にも厳格な行動が要求されるのは道理ではないでしょうか?

 

 

この現状下で、鳥取県行政が「成立させてください」と言ってきた改正案の可決に賛成することは、私にはできません。

 

■「この案はおかしい」との声は届くか?最後の希望が本会議!

 

以上、この改正案をめぐる問題を再整理して参りました。この問題点ある改正案をそのまま成立させようとする鳥取県行政の現在の行動は暴走そのものであり、本来であれば、県議会がこれを止めることが期待される状況でした。

しかし、この改正案は10/6の委員会を無風で通過し、後は10/8の本会議での判断を待つのみです。

 

これは、本来であれば、全くもって起きてはならない事態です。この無風通過に対し、少なくない地方議員が容赦のない評価を寄せていますが、これこそが本来の反応です。これほどまでにおかしな条例案がごり押しされそうな時は決して安易に賛同せず、地方行政の暴走を阻止する……それこそが、地方議員の、本来の為すべきことだと、私は考えます。

 

 

福祉生活病院常任委員会の9人の県議の中に、地方議員の為すべきことを為す方がいらっしゃらなかったことは大変残念です。

一方、鳥取県議会議員は全てで35名います。この全員が安易にこの改正案を通すようなことは、せめてあってはならないと思います。「全ての県議が鳥取県行政の説明に納得してこの改正案を通した」「県外はもちろん、鳥取県内からも上がった『おかしい』という声が全く反映されず議論が終わった」――そんな未来にだけは、なって欲しくありません。そうなるかも知れない未来を、黙って受け入れることは、私にはできません。

 

10/8まで時間は殆どありません。しかし、メールやFAXが使える方であれば、まだ、声を県議に伝えることはできます。本会議で「この改正案はおかしい」という声を代弁してくれる県議が現れる可能性を、まだ、上げることはできます。

まだできることはあります。まだあるうちは、諦めません。

 

ひとりでも多くの方が県議へ意見を送ってくださることを、そしてこのリストを拡散してくださることを、祈ります。

何卒お願い申し上げます。

 

(卵)