私がこの地にお嫁に来たのが30年以上前。

その頃から気になる山の上の灯りがあった。すぐ近所の山ではないのだが、車で出かけた時などに、山の頂上で白く光る灯りが目につき、あれはなんだろう…と思っていたのだ。

夫に聞いても知らないと言う。

友人に聞いてみたら、多分萱野高原ではないか?とのことだった。

確かに萱野高原はこちら、という案内標識を見たことはある。当時夫を「行ってみない?」と誘ったが、「全然興味がない」と言われそれきりになっていた。

しかしふいにそこを訪れる機会ができた。

用事で諏訪に下道で行く途中、萱野高原はこちらの標識を見つけたのだ。

諏訪での用事は早く済んだ。今はまだお昼を少し過ぎた時間である。

「私帰りに寄ってみたいところがあるんだけどー。萱野高原。」数十年ぶりに言ったこのセリフ。

「おれ朝から12キロ走って疲れてんだけど。」と最初はブーブー言っていたが、そんなに行きたいなら行ってみれば?と譲歩してくれたので、夫の疲れはお構いなく行かせてもらうことにした。

一応舗装された細い登り坂が長く続く。

幸いというかやはりというか、すれ違う車は一台もなかった。もし対向車があったら、かなり苦労するであろう道であった。しばらく走ると、ここから萱野高原山荘、という鉄の門があって、その門は開いていた。

続けて少し走ると、そこには想像以上に大きなホテルと山荘があった。

 

 

しかし廃墟と化していた。

 

 

なるほど。最近灯りが気にならなかったのはこういうことだったのか…。
このホテルがやっていたら、眼下に広がる街並みの夜景がそれは綺麗に望めるホテルだったと思う。
なんでこんなことになってしまったのか…資材を運んで建設するのも大変であっただろうに。

車を停めて周りを歩いてみる。

するとそこは思った以上に観光地化されていて、こんな神社も建っていた。

 

 

夫婦神社。せっかく夫婦で来たのだからお参りしない手はない。

車付近で佇んでいる夫を呼び寄せ、奥にある祠でお参りをする。

どうもその先にも遊歩道ができているようで、奥に行くと夫婦岩というものもあるらしい。せっかく夫婦で来ているので、拝まない手はない。(しつこい)

嫌がる夫を無理やり連れて行った。

ちょっと険しい山道になっている。

約1キロ。息切れしながら着いた夫婦岩がこれ。

 

 

このあたりには二つに分かれた松が沢山生えていることから、夫婦になぞらえていろいろを祀っているようだ。
行かなかったが夫婦池もあるらしい。
人の気配がないのでやはり怖いのは熊であったが、その心配さえなければ、ちょうどいいトレッキングコースがあり穴場の高原だなと思った。キャンプ場もあったが今はやっているのかどうかはわからない。
思いがけずの寄り道で、また地元のいい場所を知ることが出来た。
廃墟ホテルや熊の恐怖、鳥のさえずりや見事な眺望、スリルと感動を同時に味わえる面白い高原であった。