そしてマラソン当日。
朝ご飯が出るビジネスホテルだったので、朝6時半から食堂に行くとすでに長蛇の列が出来ていた。
皆さんランナーのようだ。
今日は特別にバナナとゆで卵を用意しました、と書かれた札がある。
おにぎりも人気で、一人3個ほど持って行ってしまう。私たちの頃には握られていない混ぜ込みワカメのご飯がボンと置かれていた。大忙しのようだ。
7時半、準備を整えた夫は会場へ歩いて行った。小雨が降る寒い日。スタートは9時だが夫が走り始めるのは9時半を過ぎるだろう…
それまで待つのが辛いそうだ。
なんで高いお金を払ってそんな思いをするのか、私には本当に分からないのだった。
私は本など読んだりしてゆっくり過ごし、10時半に東梅田の待ち合わせに間に合うようチェックアウトした。
息子が改札まで来てくれるはず。
私はのんきに待っていたが、息子と彼女は苦労して私の待つ改札まで来てくれたようだ。大阪の地下はとんでもなく広いことを、私はその後知った。
梅田駅も大阪駅も地下でつながっている。その中にいろんな路線が入っていて、ショッピングビルの地下入口もあちこちにあって、なにがなんだかわからない場所だった。
私は友達がいたとしても、絶対にあそこでは待ち合わせはできないな、と思った。
息子たちが予約してくれてあった鯛飯屋さんでお昼を食べ、夫の応援に行こうと思ったが、予想より早く走っていることが判明。
途中の応援をあきらめて大阪城へ行く。
大阪城公園もとても広くて、ゴールがどこかよく分からない。
正直ランナーの姿も一度も見ていないので、それまで全然応援に来た実感がなかった。
案内の人に聞きながらゴール地点に着いた。
やっとランナーを見ることが出来た。
あと30分くらいで来るのかなぁ、寒いなぁ、と思っていたら夫からラインが入る。
5キロ手前で足をつったらしい。大丈夫?と返信してもその後のラインは来なかった。
私の目の前には足をつった男性が立ち止まっている。
一歩も動けないようだ。口からはよだれが出ている。小雨がまだ降っていて寒さも厳しく苛酷な状況だった。
ゴールまであと70mくらい。誰か呼んだ方がいいのかな・・・と思うが、余計なこともできない。ここまで頑張ってきたのだ。
見守っていたら、ようやく足を引きずりながら少しずつ歩いて行った。
そんな様子を見たので、夫はどうなっているのか心配になる。
ゴールの手前70mくらいのところの右側にいるからね、とラインを送るがやはり返答なし。待つこと1時間。
息子から「おとーさんたぶんゴールした」とラインが来る。え?こんなに待っていたのに気が付かなかった。息子はゴール直前にいてギリ気が付いたらしい。
私は右側にいると言ったのに、左側を走っていたのだ。
そんなの途中で見るわけないじゃん、と夫。また嫌な空気が流れる。
でもなんとか元気そうなので良かった。
ロボット歩きのような夫と息子たちと駐車場までなんとかたどり着き、息子たちも乗せて、明石に向かったのは3時半を過ぎていた。
舞子駅に息子たちを降ろし、そのまま明石海峡大橋を渡り、憧れのホテルニューアワジに午後6時に到着。
温泉良し、眺め良し、食事良し、で最高に満足だった。
歩けないし、時間もなかったので観光は出来なかったが、行けたことに価値がある。私は心のtodoリストにそっと線を引いた。