バスターミナルで待機していると、彼女のバスがやってきた。窓際に座っているのが見えた。
私は嬉しくなって、大きく手を振って満面の笑みで迎えた。
しかし、彼女の方はなぜか暗い感じ。今から思うと、戦闘態勢に入ったかのようなちょっとした覚悟が彼女の表情に浮かんでいたのだった。
降りてきた彼女は「こんにちは。わー、おなかが空いた。何も食べてないからお腹が空いたわ。まず何か食べに行こう」と言う。
そうですか、と思ってどこか食べられそうな場所を探す。
下に降りると、イートインのカフェテリアがあって、彼女はお盆に好きなものを乗せていった。とてもご機嫌である。
当然支払う気配はない。
おもてなしの覚悟はしていたが、あまりにも最初からグイグイくるのであ然とする。
食事が終わってUSJに向かう。
私は彼女のためにディズニーランドでいうところのファストパスにあたるチケットも別購入していた。夏休み中だったので混むことは分かっていた。
初めてのUSJでなるべくたくさんの乗り物に乗せてあげようと思ったのだ。
中に入るとやはりアトラクションに長蛇の列が出来ていた。
「私このチケットも買っておいたから、こっちの入り口から入れば列に並ばないで済むよ」というようなことを伝えると、「本当こんなのに並ぶなんてありえないよねー」みたいな返事。
特に感謝はない。
USJの中でも彼女の食欲は旺盛で、あれ食べたい、これ食べたいが始まる。
(だから太っちゃうんだよ)と心の中で悪態をつく私。
でもまぁ、彼女は終始ご機嫌で楽しんでいる様子だったので、非常に疲れながらもなんとか付き合っていた。
なにしろこちらは英語が不自由である。
それだけでも疲労感が押し寄せる。
いい加減疲れて、そろそろ帰ろうか、ということになった時「私甥っ子や家族にお土産を買ってあげたいんだけど…」と言う。
それくらい自分で払いなよ、と思って、「私はお金出さないけど、買ってあげれば?」と言ったら、なにかパスケースのようなものを自分で買っていたようだった。
帰り道、「こんな楽しい思いをしたのは初めて!本当にありがとう」とは言ってくれたが、私はもう二度と彼女に会うのはやめようと心で誓っていた。
彼女はフィリピンの中では裕福な家庭のようであった。お父さんが医者で、お姉さんはCAとか言っていた気がする。
だからということでもないが、私はここまでたかられるとは正直思っていなかったのだ。これは私が悪い。
私の中の常識でものを考えてしまったのだから。
国が違えば常識も性格も違うのか…?人によるか…?
彼女はオンライン英会話の講師をやりながら、日本に来た時の作戦をもう作っていたにちがいない。
その中に多分しっかり組み込まれた私。今となってはそれはそれでいい。
レッスンが楽しかったのは確かだし、1日英語の勉強にもなったわけだ。
今までありがとう…と気持ちに区切りをつけてその後連絡も取らなかった私だが、年末彼女からクリスマスプレゼントが届いた。

                 ・・・つづく