「怪物」という映画をさっそく観てきた。
カンヌで脚本賞とクィア・パルム賞を受賞し、先日亡くなった坂本龍一さんが音楽を担当しているという、話題盛りだくさんの映画である。
しかも撮影場所が一緒に観に行った友達の地元。
実は私はたいした予備知識も無く行き、後から脚本は坂元裕二さんだったのか、とか、音楽が素晴らしかったけど誰だ?と思ったら坂本龍一さんだった、てな具合。
要するに素晴らしい出来の映画であった。

ここからネタバレあらすじ。

早織(安藤サクラ)はシングルマザーで湊(小学5年生)という男の子を育てている。
ある夜、駅前のビルで火事が起こり、二人はベランダからその火事を見ていた。
その時湊が「豚の脳を人間に移植したらそれは人間なの?」と母に尋ねる。
その後、靴が片方無くなったり、怪我をして帰って来たりで、いじめを疑う早織。
そんなある日、湊が帰ってこないので、早織は車で探しに行く。
廃トンネル近くに自転車が乗り捨てられているのを発見し、中に入っていくと、「怪物だーれだ」と叫んでいる湊を見つける。
どうしてそんなところにいたのかもわからなかったが、車で連れて帰る途中、湊が急に車から飛び降りる。
車も路肩につっこんだが、湊を病院に連れていき、MRIで調べてもらったが正常。
ただ「僕の脳は豚の脳なんだ」と湊がいい、その後ふさぎ込むようになる。
湊を問い詰めると、先生に言われた、という。
すぐに学校に駆け付ける早織。その後も何度も抗議に出かける。
担任の保利(ほり)先生(瑛太)の様子も気持ち悪く(飴をなめていたり)、校長(田中裕子)もボソボソ話す、いかにもダメな学校パターン。
そういえば火事の翌日、早織が働くクリーニング店に、湊の同級生のママ友が来て、「火事のあったビルにガールズバーが入ってて、保利先生がそこにいたらしいよ」と噂話をしていた
学校で早織が保利先生に詰め寄ると、「湊くんはいじめられているのではなく、依里(より)くんをいじめている」と言われ、そのまま確認しに依里の家に。
依里はお父さんと二人暮らし。立派な家に住んでいる。
玄関に、湊がなくした片方の靴があった。
ちょうど帰ってきた依里は早織を家の中に招き入れ、湊君は良くしてくれるよといい、学校を休んだ湊にお手紙も書く。
その時に「みなと」のひらがなだけが、なぜか鏡文字になっていた。
依里の腕に火傷のようなものを見つけ、イジメの可能性もあると思う早織であった。

保利先生は教頭に言われるがまま謝罪したことで、体罰が週刊誌の記事になり、学校もやめさせられるはめに。
こんなところが早織視点から描かれる前半の物語。

次に保利先生の視点で火事のところがら話がリスタートする。
火事のビルの近くを彼女と歩いているところを生徒に見られる。
保利先生には彼女がいて(高畑充希)、学校の先生としても仕事が楽しく、充実した日々を過ごしているはずだった。
しかし、虐待を疑われ、教頭のいいなりに動いているうちに、あれよあれよと加害者扱い。
彼女にもらった、大事な時になめる飴、も事を悪化させる。
依里はクラスの男子からいじめを受けていたのだが、それを湊がかばったり関わっているシーンの悪いところを保利先生は目撃していて、湊が依里をイジメていると思い込む。
解決のため依里の家に行く保利先生。
そこにエリート社員風の父親がビールを飲みながら帰ってきてしばらく話す。
「息子の脳は豚の脳だから治してやらないと」とのセリフに驚く保利先生だった。
依里は女性的な脳をもっており、それが父親の逆鱗に触れ、父親から虐待を受けていたのであった。
週刊誌ネタになったことで彼女も去り、仕事を失い、自暴自棄になった保利先生は、学校に行き、逃げる湊を追いかけ「自分は何もやっていないよね」と詰め寄る。
その後学校の屋根から飛び降りようとするが、トロンボーンの音が何かを訴えてきているように感じて思いとどまる。
そのトロンボーンを吹いているのは、校長にレクチャーされている湊だった。

三つ目の視点は湊と依里。
クラスの男子からいじめられ、父親から虐待を受けていた依里は、自分をかばってくれた湊を、自分の秘密基地に連れていく。
湊は依里と仲良くなりかけていたが、依里が独特なことに気付いていたのか、学校では自分に話しかけないでくれと言っていた。
廃墟のトンネルを抜けると、朽ちた一両の電車があった。
ある日学校で死んでいたネコを秘密基地に連れてきて、燃やしてあげる二人。
「燃やしてあげないと、次に生まれ変わることができないから」という依里。
その時、ビルに火をつけたのは自分だ、と告げる。
ガールズバーに行っていたのは、保利先生ではなく依里の父親だった。
湊は依里からライターを取り上げた。
車両の中を星や土星などを工作して飾り立て、おもちゃも自分たちで作って遊ぶ二人。
解説で、銀河鉄道のジョバンニとカムパネルラを連想させる、と言っている人がいたが、なるほどーと思ってしまった。
今度おばあちゃんの家に引っ越す、と話す依里。
寂しくなった湊は依里に抱きつき、キスをするかのようなシーン。
湊の中に依里への愛情のようなものが芽生えていた。
ハッとして依里を突き飛ばすが、自分の中の感情に戸惑い、どうしていいか分からなくなる湊。
「僕もそういうふうになることがあるからわかる」と慰める依里であった。
学校で飛び降りるのをやめて家に帰った保利先生は、荷物を整理している時に依里の作文に目が留まる。
作文の行の一番上を横に読むと、「むぎのみなとほしかわより」と自分たちの名前をつなげていたことに気付く。
本当は二人は仲が良かったんだ、と知り、嵐の中湊の家に行き「麦野、ごめんな。先生が間違ってた」と叫ぶ。
ちょうどその頃、湊は依里の家に行き、浴槽でぐったりしている依里を発見。
依里を担ぎ出し、二人は秘密基地へと向かう。
湊が家にいないことを知った早織と保利先生は、二人で廃トンネルに湊を探しに行く。
奥に進んでいきそこに一両の廃電車を発見。吹きすさぶ風雨のなか窓をこじ開けると、そこには脱ぎ捨てられたポンチョが二つ残されているだけだった。
湊と依里は地下道のような通路を抜け、外に出ると、そこは光が降り注ぐ線路わきの道であった。
笑いながら駆け続ける二人。
「生まれ変わったのかな?」という依里に「なにも変わらないよ。」と答える湊。
ここで映画は終わった。
長くなったので、感想は次回。