数日前、夫が「週末に諏訪湖一周してくるかな」と言っていたのを覚えていた私は、土曜日の朝「今日諏訪湖に行くなら、私もついていこうかな。」と聞いてみた。 寒いが天気はいい。 本人あまり行く気がしなくなっていたようだが、じゃあ行こうか、ということになった。 なぜ私がそんな気になったかと言えば、ルームランナーの信ぴょう性を確かめたくなっていたからである。 ここ1年半、私は外を走るのをやめて、ジムのルームランナーで走るようになっていた。 一応機械なので、消費カロリーやら走った距離などが表示される。 毎回30分で4キロ走る。 でも腕につけたウォッチでは5キロ走ったことになっている。 どっちが本当なの? ルームランナーは床が勝手に動いているので、実際に走るよりも負荷が少ないらしい。 推進力(前に進む力)が必要ないので、その場でジャンプしているくらいなものだ、と誰かが言っていた。 これは実際に確かめる必要がある。 ということで、岡谷のすわ湖ハイツに車を停めて、中のコインロッカーに荷物を入れてそれぞれスタートした。 ここには温泉もあって、岡谷市民はずいぶん安く入浴できるらしい。 外部の人でも420円。走った後にすぐ入れるし、とてもおすすめである。 私は諏訪湖を一周(16キロ)するつもりはさらさら無く、とにかく走れるだけ走ろうと思っていた。 過去に一度一周したことがあるが、ヘロヘロに疲れた。 何年前だったか…忘れるくらい前だ。 確実に年を取っている。無理。 私と夫は反対周りに走り始めた。 諏訪湖の周りにはジョギングコースが作られていて、オールウェザーのゴムチップが敷かれている。 学生や中年の男性などけっこう何人も走っていた。 健康意識の高いお年寄りも歩いていた。 実際に走ってみて、4キロにたどり着いたのは32分。 疲労感もだいたい同じだった。 ルームランナーに対する信頼感がどーんとアップした。
4キロ走ったが、もうちょっといける、と思ったので、私は間欠泉や白鳥丸の観光スポットを目指すことにした。 そこまでで6キロちょっと。 切りのいい所まで頑張ろうと、7キロ走った。 じゃあ私は引き返します、と夫にラインし、写真でも撮るかと携帯をいじっていたら、ぶつっと携帯のバッテリーが落ちる。 晴れているとはいえ、気温はマイナス1度。 消費電力が激しかった。 音楽も聴けなくなってしまった。 まだ戻るのに7キロあるのに…やる気が一気に失せる。が仕方なし。 元気なおじいさんが前を歩いている。 私は抜こうと横に並んだ。 なぜか抜けない。 頑張るんだ、私。かりにも私は走っているのだ。 少しの時間並走。疲れている。 それでもなんとか前を行くことができた。 途中夫に「おさき~」と置き去りにされたが、最後まで走り切った。ほぼ歩く速度で。 ホッとした瞬間身体が冷えてくる。 手がかじかんでロッカーのカギがなかなか開けられない。 温泉に入場するチケットを買うのも、小銭が取り出せない。 夫に言うと「エネルギーが全部切れちゃったんじゃない?あんまり食べてないから。」 と言われる。 いつもは朝を抜いているが、今日はバナナとヨーグルトを食べてきたんだが。 温泉につかると体中がしびれる。 どうもいつもと違う感覚だ。 鏡を見るとお風呂に入っているのに顔が白い。あれ?ゾンビ?という印象。 自分の身体ではない感覚を味わいながら、お風呂から上がって、私たちは丸亀製麺に向かった。 走った後には消化が良くていいんじゃないかな?と思ったが… 私は初めてうどんをのどに詰まらせた。 あわてて水を飲んだが、苦しい。 うどんがなかなか食道を降りていかない。しかもうどんが通過していくときの痛さと言ったら… お年寄りがお餅をのどに詰まらせる理由がわかった気がした。 臓器が働かなくなっていくんだな。 一瞬、こうやって人は死んでいくのか、と思った。 いつまでも頭では若い気持ちでいるが、無理がきかない身体になってしまったことを思い知らされた出来事であった。