ABシスターズは仕事の帰り際、駐車場でたばこを吸いながらいろいろと雑談しているようであった。 車の周りに吸い殻がたくさん散らばっていた。 いい話で盛り上がっているとは到底思えなかった。 実際私は彼女たちの裏の顔を何度も見てきたのである。 喫茶室に週に何回か来る女性客に対して、Bさんは表向きはとても仲良く親しげに話していたくせに、帰った後には「あの人、ホントおしゃべりで、周りからも嫌われているんだよねー。」とか新人の私に平気で言うのであった。 また、文化祭があった時には本当に驚いた。 その頃にはすっかりABシスターズに嫌われ、半分無視されていた私であったが、ショップの準備をしていた時のこと。 一人の老齢の女性が「良かったらこれも売ってください。」と言って、藤で作った帽子の壁飾りを10個ほど持ってきた。 Bさんは「ああ、はいはい、これ去年も持ってきてくれたやつですね。ありがとうございます。じゃ、お預かりしますね。」と言って預かったものの、Aさんには「あのばあさん、また今年もこんなの持ってきちゃって、迷惑なんだよね。」というとAさんは、「またぁ?こんなの売れるわけないじゃんね。もう、捨てちゃえ、捨てちゃえ。」とか言っているのである。 その時の意地悪な表情、ひどいことを言ってケタケタ笑っている二人を見て、私は倒れそうになるくらい気分が悪くなった。 常にちょっとした意地悪は受けてきたのだが、喫茶室という隔離された場所と、利用者さんの優しさでなんとか踏ん張ってきた。(私がいじめられているのを感じて、Cちゃん、Dさんはよく”大丈夫ですか?“と声をかけてくれたのである) でも最終的にはABシスターズは、利用者の親御さん、一部の利用者さん(うつの女性など)に私の悪口を広げていった。 皆さんがあからさまに態度に出すので、すぐにわかった。 弁解するわけにもいかず、わたしはわたしで誠意を尽くして働くしかなかった。 いつかその姿を評価してくれればいいな、という願いをこめて…。 だがしかし、ある日とうとう私は、Bさんがうつの女性と、私をけなしている場面に出くわしてしまったのである。わかってはいたが、直接目撃したショックは大きかった。 その翌日から、わたしは施設に行くことが出来なくなってしまった。
私は事務の女性に電話し、行けなくなったことを伝えた。彼女は同情してくれて、一切職員と会わないですむように、段取りをすすめてくれた。 まずは以前、現状を訴えた△△さんに会いに行ってくれ、ということだった。 「だいたい話は聞きました。辛い思いをさせて申し訳なかったですね。どうしても無理ですか?」 「はい。施設が近づくと体が震えてしまって、もう無理だと思います。申し訳ありません。」 「わかりました。お詫びというわけではないですが、ボーナスも振り込みますからね。」 と△△さんは言ってくれた。口止め料というわけではないだろうが、ささやかだけれどもいただけるというボーナス。 理解してもらっただけで、ありがたいな、と思った。 私は菓子折りを△△さんにあずけ、リーダーにも職員にもなんの挨拶もせずに辞めた。 利用者さんとも、それっきり会っていない。 しばらく経って、同じ系列の違う施設で働く女性とスーパーでばったり会った。 彼女はたまに喫茶にランチを食べに来てくれる人だった。 何かのミーティングの時に△△さんから話があったという。 「イジメをすると、職員が足りなくなって、結局自分たちの首をしめることになるんだから、そういうことはしないように。」と言っていたそうだ。 え??なんか違くない? イジメをしてはいけない、というのは、もっと人道的なことではないのか? がっかりした。