どたばたの長女の出産から一週間。 ちょっと離れた病院に何度か荷物を届けに行った。が、ナースステーションに荷物を預けるだけ。 このすぐ先に孫がいるのに見ることが出来ないのか…となんとも理不尽な気持ちで帰ったものである。コロナのせいで面会禁止。まったく残念だ。 でもついに退院の日が来た。 その日は戻り梅雨で朝から雨が降っていた。 私がラウンジに着いた頃には数人のお迎えの人がすでに待機していた。 少し待っていたら、看護師さんと赤ちゃんを抱えた一人のお母さんが現れた。 男性の一人が立ち上がる。おとーさんらしい。多分赤ちゃんと初めてに近い対面なのに、男性はいたって冷静。お母さんが一生懸命何かを説明している。多分その子の日頃の様子を話しているように見えた。おとーさんは赤ちゃんをたいして見るでもなく、ただうなずいている。 そして看護師さんに何かを手渡され一礼し、大荷物を抱えて去っていった。 次に立っていったおとーさんも似たような反応であった。 口数少なく、大荷物を抱えて去っていった。 赤ちゃんとの対面ってそんなもん?もっと嬉しくて仕方ない反応はないの?違和感だわ~と思っているうちに、長女が現れた。 私はと言えば、孫の顔を見て「おーー」とは言ったものの、前のおとーさん方と大して違わぬ反応で対面を終えた。そんなもんだった。 人前で感情をあらわにしない…それが日本人気質なのかもしれない。 外に出ると、その瞬間は雨が止んでいた。大荷物を抱えた私は、車までの距離をぬれずに行くことが出来た。 長女たちが待つ玄関に車を乗りつけ、赤ちゃんをチャイルドシートに乗せる。 そこまでは順調だった。しかし、私は金具のセットの仕方が分からなかった。 夫にチャイルドシートをセットしてもらい、そのまま装着の確認をしないで来てしまったのだ。 娘がプンプンし、私が平謝りをし、結局赤ちゃんを乗せ、娘が監視する形で帰ることになった。それしかなかった。 また雨が降り始める。 「おじいちゃんのところに寄って、顔見せてく?」「雨がもう少し小降りになればねぇ。」 と話しているうちにも、だんだん雨が小降りになっていった。 おじいちゃんの家に着くころにはまた雨が止んだ。 「この子、なんかパワーもってんじゃない?こんなタイミングよく雨止む?」 とたまたまラッキーだったことを孫のパワーにすり替える私。すでにババばかだ。道中もずっとスヤスヤ寝ていたし、それだけでとにかくいい孫なのだ。 おじいちゃんの家に上がっていくと、気づいたおじいちゃんが飛び出してきた。 「おお、来たか来たか。いや~、こんなに赤ちゃんって小さかったっけ?もう忘れちゃったなぁ。」 と、初めて抱っこするひ孫をしみじみ見てそういった。 それは私も全く同感。こんなに小さかったっけ?お人形じゃない?という感じ。 3人も育てたのに、すっかり忘れてしまっている私であった。 そうそう家に帰ってきてから娘がこんな話をした。 「私が病院についてストレッチャーに乗せられた時に、何人かワーッときてその中に白衣を着た先生がいたじゃん?出産前の検査してもらっているときに看護師さんに、“あの白衣の先生はクリニックの先生?”って聞かれて、“いえ違います”って言ったら、“えー?じゃああの人誰?私たちみんなあの先生のこと知らなかったんだけど…”って言うんだよ。」 ぞわ~と鳥肌が立つ。でもけっこう大きな病院なので、知らない科の先生だっているんじゃない?ということで話は終わった。 まさか仕事に燃えてた先生が亡くなって、いつまでも勤務を続けている…とかじゃないでしょう?ねぇ。 孫の退院、これが今年一番の私の#夏の想い出 である。