怖い経験もしたことがある。 家から駅までは歩いて15分くらいの距離だったが、いくつかルートがあって、私はあまり人が通らないルートを選択して通学していた。その方が歩きやすいし、道の脇に木が多くはえていて気持ちも良かったのである。 なぜ人が通らないのか…多分精神病院があったから。 4階建ての古いビル。あらゆる窓には鉄格子がはめこまれていて、見た目もちょっと不気味だった。 「この間精神病院の前を通ったら、窓から男の人がずっとこっちを見ていて怖かったよ~」 「そうそう、わたしなんか叫び声をきいたこともあるよ」 という会話も前に聞いたことがあった。 が、朝の通勤通学時間。外は明るいし、まぁ大丈夫でしょう、と私はたいして怖がりもせず、その道を選択することが多かった。 ある朝、その道を歩いていたら、突然一人の男に肩をとられて、私は脇の小道に連れていかれた。 10mほど先に車が停まっていた。 (やばいっ)と思った私は渾身の力を込めて「だすけてーーーー!!」と叫んだ。 たすけてーーーの進化系、だすけてーーー。 するとその男はびっくりして私の肩から手を放し、さっさと逃げて行ってしまった。 正直顔も服装もなんにも覚えていない。恐怖だけが残った。 人通りが少ないとはいうものの、何人かは歩いているし、アパートもいくつかある。そんなところで人さらい? 私は駅の交番でそのことを訴え、2,3日は母に付き添ってもらって駅まで行ったが、幸いその男に出会うこともなく、その後は歩くのはやめて自転車で駅まで行くことにした。もちろん人通りの多い道を選んで。 もしあの時に怖くて声が出なかったらどうなっていたのか…。声を出せない女子も結構いると思う。女子のか弱さにつけこむなんて、本当に許せない。今でも怒りがこみあげる。 犯罪は前触れもなく突然身に降りかかってくるのだ。 だから若い女子が足やら肩やらをさらけ出してのうのうと歩いているのを見ると、おばさんは本当に心配になる。 世の中には変人がたくさんいるということを忘れずに、自己防衛の気持ちを持って生活してほしい。