中学生のころ、私はクラス替えの度に新しい人を好きになった。 好きな人がいたほうが学校生活が楽しくなることを、潜在的に知っていたのだと思う。 だから付き合うとかそういうんじゃなくて、部活している姿をこっそりみたり、ひょんなことで話したりするだけで満足したものだ。 こっそり見ると言って思い出すのは一年生の時。 私はなんと理科の新卒の先生を好きになった。 当時、三浦友和に似ているという噂が立つほどイケメンな先生であった。 しかし、少しなまりがあったので、新沼謙治という人もいた。 その時の私の楽しみは、朝登校した後友達に付き合ってもらって、地下一階の理科の研究室に先生をのぞきに行くことだった。 地下はひっそりとしていて、足音がすごく響く。その長い廊下を抜き足差し足で歩く。 友達と手を取り合い、一番奥にある研究室に近づいていき、まずは友達にガラスから中の様子を見てもらう。 私は緊張してしまって、すぐに見ることはできないのだ。 友達が「いるいる」とか「今日はいないみたいだよ」と報告してくれる。 そして先生がいると、コーヒーを飲んでいる姿を一目見て、私たちは満足してまた抜き足差し足で戻っていくのであった。 私たちは地下の別世界での行動をゲーム感覚で楽しんでいた。 そしてある日、その日は先生がいる日であった。 友達が手招きをするので中をのぞくと、ちょうどその時先生が大きな音で鼻をかみ始めた。 「ちーん」それを聞いた私たちは口に手を当て、笑い声が漏れないように急いで廊下を走り戻った。 地上の喧騒の中に戻ったとたん、大笑い。 「やばかったね~。吹き出しそうになったよ」「たぶん先生気付いたよね」 と話した通り、先生は私たちに気付いていた。多分前から気付いていたんだと思う。 「なんか聞きたいことがあるならちゃんと入ってこい」と後でいわれてしまったので、朝の冒険は終わることになった。 当時友達もそれぞれ好きな男子がいて、ベランダから男子の部活の様子を見たり、下校する姿を目で追っていたものだ。 だから村下孝蔵さんの”初恋”を聴いたときには、わかるーーーと本当に懐かしくなった。 中学生ってみんなストーカー気質ありましたよね(笑)。