今の私の脳は、中学時代のセピア色に染まっている。 あんなことがあったな、こんなこともあったな、とポコンポコンと水底から浮き上がってくる空気玉のように、そのころの出来事が頭の中にわいてくる。 今回もその一つの空気玉。 私の家は学校から近かったのだが、その距離の中でもお楽しみがちゃんとあった。 駄菓子屋さんである。 私と友達二人は、部活帰りにたいていそこに寄って、夏はアイス、冬は肉まんを買って、団地の階段に隠れて食べるのがお決まりだった。 なぜ隠れるのか…買い食いは禁止されていたからである。 ある日、見たことのない機械が店先に置かれていた。 何だろうと思ったら、綿菓子を作る機会であった。 「やってみる?」「やってみよう、やってみよう・・・」と意気投合するわたしたち。 でも私たちは誤算していた。 作るのに時間がかかるのである。 通りに面したその機械で1人が自分の綿菓子を作る間、他の二人がその作業を隠すように立つ。 「先生来た?」「まだ大丈夫」「あっ○○(数学の先生の名前)が来た」 その先生は自転車通勤していて、さっそうと登場した。 「おう、そんなところで何やってんだ。早く帰れよ。」と薄く笑って通り過ぎてった。 「はぁい。すぐ帰りまーす。」 「良かったね。○○先生で。」 と話している最中にも、車が徐行してきて窓が開く。 △△先生(英語)だった。 「あなたたち、早く帰りなさいよ~。」 「はーい。すいませーん。」 後ろを振り返り、「はやく終わりにしてよ~。」と友達に催促しても「だってまだ出てくるんだもん~。」ってな感じであった。 次は□□先生(理科)。車の窓が開く。 「買い食いはダメだからな」 「はーい。すいませーん。」 どうも先生の帰宅ラッシュと重なったらしく、4,5人の先生から戒めの声をかけられた。 でも、そんなことを笑って済ませてくれる感じがあたたかかったと、今では思う。 少しやましい気持ちのある思い出は、いつまでも胸に残るものだなぁ。