実は先日の報道番組の特集で、興味深いものがあった。
皆さん、塀の無い刑務所をご存じだろうか?
愛媛県の今治市にある刑務所で、周りは金網のみで囲まれている。
受刑者は造船所で、一般の社員と一緒に働く。
その様子も映っていたが、皆一生懸命に働いていて、社員からの評判も良かった。
ここに来られる受刑者は、暴力団との関りがなく、性犯罪、薬物使用の歴がないこと。いわゆる模範囚。
あとはこの場所に土地勘が無い人、という条件もあった。
受刑者に「逃げたいと思ったことはありませんか?」という質問があったが、「ここでは満足のいく生活ができています。どうせ捕まれば刑期も伸び、いいことはありません」と答えていた。
お風呂も毎日入れ、食事も充実している刑務所で、休日には釣りに興じる姿も映っていた。
この刑務所構内に作業所を作った坪内敏夫さんのインタビューもあったが、彼は非常に優れた経営者で、考え方も素晴らしかった。
坪内氏はとにかく人を信じていた。
自分で決める自由があるときに、人は自主的に行動する、という信念に基づいてこの施設を作ったのだ。
でもそれは30年くらい前の映像だった。

2018年にここから一人脱走したことが世間を騒がせた。
彼は22日間の逃亡の末捕まった。 逃亡の理由は、刑務所の中の自治体のキツさということだった。
この刑務所は再犯率も低く、とてもいい成績を上げていたので、囚人の中で自治体を作らせ、自分たちで管理するシステムを作ったのである。
それがいけなかったのだ。
管理はどんどんエスカレートしていき、軍隊並みのトレーニング、弱者に対するいじめ等が横行するようになった。
私はこの特集を見て、組織の怖さを改めて感じた。
人は実に愚かなものである。
組織の上に立つ者はよほど気をつけないと、支配する喜びにはまる可能性がある。
実際私は、職場でもこういう場面を多数見てきた。
だからこそ坪内敏夫氏の言葉を忘れてはならない。
人には自由が必要なのだ、と。