私は大抵毎日、ジムのルームランナーで外を眺めながら走っている。
二階にあるので、見通しもいい。
全面ガラス窓のところに、ルームランナー、エアバイクなどが横並びに置かれていて、道行く人から目立つレイアウトになっている。
目の前には国道が走っているので、田舎の割にはそれなりに人の往来があるのだ。
まるでマネキン。
そうして走っていると、たまに何だか知らないけれど、手を振ってくる人がいる。
最初にたじろいだのは、10人ほどの高校生がだべりながら歩いていて、急にその中の一人がこちらに向かってふざけて大きく手を振ってきたのだ。
(え?私に手を振ってる?)と思ったのだが、確証がないので無視。
いくつか向こうのルームランナーで走っているおじさんが一人。
彼も無視をしている。
その高校生はしつこい性格らしく、手を振り続けている。
私も楽しくなってきたので、手を振り返す。
ドッと笑い声が起こる。
なんだ?この遊びは?とも思ったが、高校生の無邪気な様子に心が温まる思いもしたものだ。
ある日は年配のおばさんが手を振ってきた。 その日は全部の機械がうまるほど人が多くて(ほぼ年配の方)、誰かの知り合いなんだ、と思って見ていた。
げんに隣のおじさんが手を振り返していた。
それでもまだ手を振っているので、よく見たら、私の姑さんだった。
健康のために歩き始めたらしい。
気付かなかった私も、隣のおじさんも、姑さんも、なんとなくばつが悪くなるワンシーンであった。
そしてつい先日は、おばあちゃんに手をひかれた、保育園の園服を着た小さな男の子が手を振ってきた。
そのとたん、おじさん、おばさんが一斉に手を振り返したのは見事な反応であった。
ちいさな子供の持つパワーを目の当たりにした出来事だった。
世の中はけっこうおもしろい。