何十年も生きて来て

心には日々、色々な感情が打ち寄せていて

でも、今も寄せて来るこの感情は

過去に寄せて来た感情と同じようでいて

海の波と同じで

同じものは、決して無かった

 

なのに、私の貧しく使い古した言葉を使って

その思いを誰かに伝えようてしても

正しく伝えられた事は、一度も無かった

 

それは

戸惑いだったり

愛情と呼ばれるものであったり

悲しみだったり

怒りと呼ばれるもので、あったりもしたが

 

誰とも違うたった一人の私の

ただ一瞬の今の思いを

人に正しく伝えられた事は

一度も無かった


それどころか

伝えようとすればするほど

言葉も人間関係も、もつれ

 

私はいつの間にか無口になっていた

 

戸惑いも

愛情も

悲しみも

怒りも飲み込んで

無口になっていた

 

もしも鳥のように、さえずりが出来たなら


言葉を発する代わりに

鳥のように、さえずりが出来たなら

良かったのに

 

貧しい言葉を捨てて

今の思いを乗せて

たださえずる事が出来たなら

良かったのに


うつ向いて、黙り込むこと無く 

ただ一心に空に向かって

さえずる事が出来たなら

良かったのに