「月蝕書簡―寺山修司未発表歌集」 | 月灯りの舞

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自虐なユカリーヌのきまぐれ読書日記

没後25年にして、未発表短歌集。


「月蝕書簡―寺山修司未発表歌集」
  寺山 修司:著/田中 未知:編さん

岩波書店/2008.2.28/1800円

月蝕書簡

没後25年、新たな寺山修司の発見!
<帯より>


先日の某新聞の書評欄でも
「ひとつの事件」として、取り上げられ、
文芸評論家 杉山正樹は
冥界の寺山と田中未知とのコラボレーションの
産物」
と語っていた。


なぜ、今まで発表されなかったのか、
今になって発表されたのかという経緯が
“『月蝕書簡』をめぐる経緯”で語られている。


寺山は語る。
自分の過去を自分自身が模倣して、技術的に
 逃げ込むわけでね、なるほど見た目には悪くない
 かもしれないけれど、これは自分自身の何か
 新しいことを語る語り口として、二十年ぶりで
 短歌を作るということに値するかどうかと
 考え始めたら、だんだん自信がなくなってきてね

と。



1973年から、十年かけて作られた短歌は、
いろんな紙片にメモされていたり、短冊に書かれていた。


それを寺山の秘書として死後まで16年間支え続けた
田中未知が寄せ集め、イメージにそって区分し、
小見出しを添えたもの。

未発表かどうかという確認作業も大変だったようで
長い年月を要したという。


一ページ一首で188首という贅沢な歌集となる。


寺山は、俳句、短歌、詩、演劇、映画とたくさんの
分野で独特の世界を創り出しているが、
私が最初に寺山に触れたのは「詩」だった。


寺山は、
短歌を作る方が詩を作るより、子供の時から
 やっている分だけうまいだろうという自信はあった。
 だから、自由詩書いて悪口言われるより、
 短歌書いてほめられていた方がいいかなと思うんだけどさ

と、「現代詩手帖」で辺見じゅんとの対談で語っている。



好きだった短歌は



父恋し月光の町過ぐるときものみな影となるオートバイ



こけし買い子消しの冬の花嫁が書きくわえたる泣きぼくろかな



まなざしが一羽の蝶となりてゆく迷路あそびのゆきどまり春



一夜にて老いし書物の少女追う最後の頁に地平をすかし



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短歌の方が先に出来ていたが、「俳句」として
発表してしまい「短歌」として発表しなかったものも
あったという。


寺山は俳句全集の中で、短歌と俳句について
識別していたようだ。


短歌は音楽だけど俳句は呼吸だと思う。
だから近代の微妙な恋愛感情は音楽にのる
程野性的じゃなくて、もっと知的な野獣性
を蔵していると思われてくる。
俳句は鍵だし、短歌はナイフだ。
最早近代の扉はナイフではこじあける事は
出来ないように思うね
」とある。




★「寺山修司俳句全集 増補改訂版」
http://tsukiakarinomai.ameblo.jp/tsukiakarinomai/entry-10005690006.html



★「不良少女入門 ぼくの愛した少女」寺山修司 著
http://tsukiakarinomai.ameblo.jp/tsukiakarinomai/entry-10009551686.html



★「寺山修司詩集―五月の詩」寺山 修司:著
http://tsukiakarinomai.ameblo.jp/tsukiakarinomai/entry-10008232104.html



★「ポケットに名言を」 寺山 修司:著
http://tsukiakarinomai.ameblo.jp/tsukiakarinomai/entry-10003746258.html



★「寺山修司の仮面画報」寺山 修司:著
http://tsukiakarinomai.ameblo.jp/tsukiakarinomai/entry-10002662322.html





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