「どうせ死んでしまう…  私は哲学病。」 | 月灯りの舞

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自虐なユカリーヌのきまぐれ読書日記

「どうせ死んでしまう…  私は哲学病。」
  著者:中島義道/角川書店/2004.7/1,260円

02

先生。どうせ死んでしまうのに、なぜいま死んでは
いけないのでしょう?死ぬことだけを見つめて生きる。
                      <帯より>



著者は哲学博士。
表紙の骸骨の絵といい、タイトル、帯コピーといい、
かなり挑発的。


「なぜ、人を殺してはいけないのか」という問いは
少し前にかなりマスコミで議論されたし、答えは
いく通りもあるのだが、「なぜ自殺してはいけないのか」
という問いの答えはそう多くない。
著者も「唖然とするほどない」という。

著者の周りには自殺願望者が多く集まるらしいが、
「死ぬな」とは言えても「なぜか」という疑問には
答えられないのだ。
生きていく意味をもてない人に死なないことを
解くのは難しいと思う。


それは一人一人が生きていく意味も目的も違うのだから。

著者は哲学者の言葉を引用して、哲学的見地から「死」や
「生」について語り、人生論を述べる。
しかし、それが虚しいことも、何の意味ももたないことも
わかっている。

死にたいというものを説得するのに言葉は、
意味などもたないのである。
誰かに「死にたい」と相談されたとしても
「ただ、私が君に死んで欲しくないから」という
自分の希望を述べるしかないのだ。


だって、生きていくのが苦しく辛い人の痛みを
他人は変わってやることができないのだから。

子どもの頃、最初に疑問に思うであろうことの
哲学的な最初のことが「死ぬとどうなるの」とか
「なぜ人は生まれてきたの」ということだと思う。


でも、この疑問は、たくさんの哲学書を読んで
知識を得たとしても自分のものではないのだ。
自分で意味をみつけるしかないのだ。

その答えを見つけるために生きるのは、
決して無意味なことじゃないと思うが……
        (2005年03月19日読了分)