
夜、子どもたちの寝かしつけがようやく終わって、真っ暗になったリビングでスマホの画面だけが光っている時間。
フォロワー一覧を、上から下へ、ゆっくりスクロールしていました。
知らない名前、知らない顔のアイコンが、ずらっと並んでいます。
「増えてるな」
数字だけ見れば、たしかに増えていました。
でもその夜の私は、なぜか画面を見つめたまま、指が止まってしまいました。
このフォロワーさんたちは、いったい誰なんだろう。
そう思ったのが、たぶん最初のつまずきでした。
投稿にはそれなりに反応もつく。
なのに、心のどこかがずっとスカスカしているような感覚がありました。
北海道の田舎で、家事と育児の合間を縫って積み上げてきたアカウントのはずなのに。
「これ、誰に向けて発信してるんだっけ」
自分で始めたことのはずなのに、自分でもよく分からなくなっていた夜でした。
フォロワーを増やすことしか考えていなかった日々
正直に言うと、発信を始めたばかりの頃の私は、フォロワーの数を増やすことしか考えていませんでした。
北海道の田舎に住む3児のママで、元看護師です。
顔を出さずに、インスタで発信を始めたばかりのころ、教わったとおりに「相互フォロー」の投稿をこまめに出していました。
「いいね返します」「フォロー返します」というタグをつけて、知らないアカウントとどんどんつながっていく。
投稿の内容も、当時よく見かけていた「誰にでも刺さりそうな」テーマばかり選んでいました。
家事の裏技、時短のコツ、子育ての小ネタ。
誰かの役に立ちそうなことを、手当たり次第に発信していた感覚です。

フォロワーの数字が3桁を超えて、4桁に近づいていくのを見るたびに、素直に嬉しくて、洗い物をしながらもこっそりスマホを確認してしまうくらいでした。
夜、子どもたちが寝たあとの真っ暗な部屋で、通知の数字が増えているのを見ると、その日1日の疲れが少し報われたような気がしていました。
「これだけ増えたなら、そのうち私の講座にも興味を持ってもらえるはず」
そんなふうに、根拠のない自信を持っていた時期もありました。
でも実際には、フォロワーが増えても増えても、講座や個別の相談に興味を持ってくれる人は、ほとんど現れませんでした。
たとえば、フォロワーが千人を超えた日にお祝いのつもりで募集の告知を出したことがあります。
反応してくれたのは、いつも「いいね」をくれる同業らしき数人だけで、申し込みはゼロでした。
「あんなに数字があるのに、なんで」
その夜、台所の片付けをしながら、ずっとそのことばかり考えていました。
反応してくれる人の顔を見て、血の気が引いた夜
ある晩、投稿にいいねやコメントをくれた人のアイコンを、ひとつずつ開いて見ていったことがありました。
数字ばかり追いかけていたので、中身をちゃんと見るのは、実はかなり久しぶりでした。
プロフィールを開くたびに、既視感のようなものを覚えました。
「インスタ運用のコツ発信してます」「フォロワー〇人達成しました」
似たようなプロフィール文が、次々に出てくるんです。
つまり、いつも反応してくれていたのは、私と同じように発信をがんばっている人たちばかりで、私が本当に届けたかった「田舎で子育てしながら、家にいる時間で少しでも稼ぎたい主婦」は、その中に一人もいませんでした。
血の気が引く、というのはこういう感覚なんだと、その時初めて知りました。
フォロワーの数字は増えていたのに、私の話を聞きたい人は、その中にほとんどいなかったんです。
冷静に考えれば、当たり前のことでした。
相互フォローで集まる人は、同じように相互フォローで集めている発信者ばかりだったからです。
でも当時は「増えている=届いている」だと、なぜか思い込んでいました。
その夜、リビングでスマホを持ったまま、しばらく動けませんでした。
「今まで積み上げてきたものは、いったい何だったんだろう」
洗濯物を畳む手も止まって、しばらくぼんやり座り込んでいたのを覚えています。
そこから私が最初に考えたのは、「もう全部消して、アカウントを作り直そう」ということでした。
今までの投稿を全部消して、フォロワーもリセットして、ゼロから出直す。
そのほうが、いっそすっきりするんじゃないかと思ったんです。
でも実際に投稿を削除する画面まで指を持っていっても、どうしても押せませんでした。
夜中にこっそりアプリを開いては、削除するかどうかを何度も考える。
そんな日が、気づけば3週間くらい続いていました。
子どもを送り出したあとの静かな台所で、コーヒーを飲みながら「今日こそ決めよう」と思っても、結局その日も答えは出ませんでした。
夫に「アカウントを作り直そうか迷ってる」と話したこともあります。
「そんなに悩むなら、いったん置いといたら」と言われて、余計に迷いが深くなったのも覚えています。
作り直せば、また同じ相互フォローの沼にはまるかもしれない。
でも今のまま続けても、届けたい人には届かない。
どちらに転んでも怖くて、身動きが取れなくなっていました。
そんな堂々巡りの中で、ようやく気づいたことがありました。
作り直すかどうかで悩んでいたのは、「フォロワーの数」というものさししか持っていなかったからだ、ということです。
数を基準にする限り、いつまでも答えは出ません。
だから私は、数ではなく「今ここに、誰がいるか」を基準にすることに決めました。
作り直さない。
でも、このまま何もしないわけでもない。
そう決めてから、私は3つのことに取り組みました。
工夫1:今のフォロワーを、数ではなく1人ずつ見ていく
まず取りかかったのは、フォロワー一覧を、上から順に1人ずつ見ていくことでした。
数百人分のアイコンを、1つずつタップして、プロフィールと直近の投稿を見る。
正直、かなり地味で、時間もかかる作業でした。
子どもが習い事に行っている間の30分や、お弁当の下ごしらえが終わったあとのすきま時間を使って、少しずつ進めました。

見ていくうちに、フォロワーは大きく3つのグループに分かれることが分かってきました。
ひとつは、同じように発信をがんばっている同業らしき人たち。
ひとつは、たぶんアイコンだけで相互フォローしたきり、投稿を見ていない人たち。
そしてもうひとつ、少ないけれど確かに、「田舎に住んでいる」「子どもがいる」「家で何かできないか探している」というプロフィールの人たちがいました。
その少ない一群を見つけたとき、胸のあたりがふっと軽くなったのを覚えています。
「ゼロじゃなかった」
数としてはとても少なかったけれど、たしかにそこにいたんです。
その人たちのプロフィールと、これまで反応してくれた投稿を、メモに書き出していきました。
名前ではなく、「その人がどんな暮らしをしていて、何に困っていそうか」を、1行ずつ書いていく作業です。
これをやってはじめて、自分が本当に届けたい相手の輪郭が、ぼんやりとですが見えてきました。
工夫2:プロフィールと固定の投稿だけ、先に「来てほしい人」に書き直す
次にやったのは、過去の投稿を消さずに、プロフィール文と固定投稿だけを書き直すことでした。
全部消して作り直したい衝動は、正直まだ少し残っていました。
でも思い切って、「入り口だけ変える」というやり方に切り替えたんです。
プロフィール文に「相互フォロー歓迎」と書いていた一文を消して、代わりに「田舎で子育てしながら、家でできることを探している人へ」という言葉に書き換えました。
固定の投稿も、それまでの「誰にでも役立つ時短ネタ」から、「田舎に住んでいて、下の子がまだ小さくて、外で働くのが難しいと感じている人」に向けた内容に差し替えました。
過去の投稿はそのまま残しました。
全部消して作り直す必要はなかったんです。
今日から誰に向かって話すかを、入り口だけはっきりさせればよかった。
そのことに気づけたのが、この工夫でいちばん大きかったところです。
書き直したその日の夜、投稿を保存してくれた通知が1件届きました。
たった1件でしたが、これまでの「相互フォロー返します」の頃には、こんな種類の反応はほとんどなかったことです。
工夫3:次の10本を、その1人だけに向けて書く
最後に決めたのは、次に出す10本の投稿を、さっきメモに書き出した「その1人」だけに向けて書くということでした。
みんなに向けて書こうとすると、結局また誰にも刺さらない言葉になってしまう。
そのことは、これまでの失敗でよく分かっていました。
だから、頭の中に具体的な1人を思い浮かべながら、その人に話しかけるつもりで書くようにしました。
「下の子が寝たあとの30分しか自分の時間がない、田舎に住むママ」
そんなふうに、相手の生活まで想像して言葉を選ぶようにしたんです。

書き方を変えてから、以前よく反応をくれていた同業らしき人たちの反応は、目に見えて減っていきました。
正直、最初は少し寂しかったです。
いいねの数が減っていく画面を見て、また不安になりかけたこともあります。
でも、それは想定していたことでした。
ズレていた人が離れていくのは、届けたい相手に近づいている証拠でもあると、自分に何度も言い聞かせました。
フォロワーの数そのものは、一度はっきりと減りました。
数字だけ見れば、後退しているように見えたと思います。
それでも、それまでほとんど来なかった保存や、個別のメッセージが、少しずつ届くようになっていきました。
「うちも同じ状況です」「これ、まさに知りたかったです」
そういう言葉が届くたびに、数字が減っていることへの不安より、ちゃんと届いているという手応えのほうが、少しずつ勝るようになっていきました。

でも、今いる人を切り捨てるみたいで冷たくないですか?
ここまで読んで、少し胸がざわついた方もいるかもしれません。
「今まで付き合ってくれていたフォロワーさんを、切り捨てるみたいで気が引ける」
正直、私も同じことを思っていました。
だからこそ、過去の投稿は1つも消しませんでした。
見に来てくれる人を追い出すようなことは、していないつもりです。
変えたのは、これから先、新しく届けたい相手に向けて、何を書くかというところだけでした。
誰かを切り捨てるというより、これから会いたい人に向けて、玄関の表札を書き直しただけなんです。
離れていく人がいたとしても、それは私が悪いことをしたからではなく、もともと向いている方向が違っただけだと、今は思えるようになりました。
田舎で暮らしていると、近所付き合いでも「みんなに合わせなきゃ」という感覚が強くなりがちです。
発信でも同じように、みんなに嫌われないようにと気を使いすぎていたのかもしれません。
でも発信は、近所付き合いとは違います。
全員に好かれる必要はなくて、届けたい人にだけ、まっすぐ届けばいい。
そう考えられるようになってから、投稿を書くときの肩の力が、ずいぶん抜けました。
最後に

フォロワー一覧を眺めて、指が止まってしまったあの夜の私に、今なら伝えたいことがあります。
作り直すかどうかで悩む前に、まず今いる人を1人ずつ見てみてほしい、と。
数百人の中に、探していた1人が、ちゃんと混ざっているかもしれません。
今のフォロワーを、数ではなく1人ずつ見ていくこと。
プロフィールと固定の投稿だけ、先に書き直すこと。
次の10本を、その1人だけに向けて書くこと。
全部消して作り直す必要はありませんでした。
ズレた人が離れていくのも、想定内として受け止めればよかっただけでした。
田舎の暗い冬の夜、子どもの寝息を聞きながら、今のアカウントのままでいいのか分からなくなっているなら。
まずは今日、フォロワー一覧を10人だけでいいので、1人ずつ開いてみてください。
その中に、あなたが本当に届けたかった誰かが、きっと隠れています。
もっと具体的に、私が実際にやった書き直しの手順を知りたいと思ってくれたら。
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9月24日・25日・27日 夜21時〜
今のアカウントを、無理に作り直さなくても大丈夫です。
「これならできそう」と思ったものから、ひとつだけ試してみてくださいね。
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そっと覗いてみてください。

